**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第577回配信分2015年05月18日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その75 〜経営者は従業員のモチベーションを更新し続けること〜 **************************************************** <はじめに> ●仕事をやるモチベーションは何なのか?と日ごろはほんと考えたこともな い。10年前に自分で会社を設立し、それまでの30年間の企業奉公にピリオドを 打って、自分で会社を設立したら、毎日がモチベーションの塊なのだ。だか ら、改めて考えたこともない。会社を設立し、毎日毎日をやっていくことが、 結果的に創業した際の目的に近づき、何とか企業を継続できている。いろいろ なところから、それなりの評価をいただき、感謝される。それが、やりがいで ありいきがいであるから、改めて考えたこともない。 ●ところが、ある方から、勤めている人、雇われている人はそうではないと言 われた。確かに、成岡も30年間は雇われの身分だった。30年間のうち、20年間 は役員、取締役をしていたから、厳密に雇われの身分ではなかったが、給料を もらっていたという意味では、本当の経営者ではなかった。そのような立場の 場合、給料を払う方ともらう方では、雲泥の差がある。天と地ほどの差があ る。同族企業の役員であり、相当なポジションで責任も重かったが、それでも 代表権はなかったし、役員報酬をもらう立場だった。 ●では、振り返ってその当時の成岡の仕事のモチベーションは何だっただろう か?おそらく、綺麗ごとかもしれないが、給料や報酬の金額そのものではな かっただろう。32歳で出版社に転職しての最初の10年間は、それこそ衝撃の連 続の毎日だった。従業員数千人、売上数千億の大企業から、従業員40名、売上 10億円の中小企業への落差は想像以上だった。しかし、全くの異業種だったか ら、毎日が滅茶苦茶新鮮だった。担当する事業や業務は全部、真っさら。とに かく、毎日が楽しかった。転職して良かったと思った。 <以前はモチベーションなど考えたこともなかった> ●だから、モチベーションなっどという単語とは無縁だった。とにかく、目先 の新しい任された仕事を何とか成果を挙げてやり切ることしか考えてなかっ た。ところが、バブルがはじけて次の5年間は奈落のどん底だった。会社の経 営が傾き、それも急激に傾き、あっという間に債務超過になり、運転資金が枯 渇した。役員報酬の遅配は起こり、移転した真新しいビルから、古い旧社屋に 移転撤退したときに惨めな気持ちは、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。し かし、同族役員が暗い顔をしていられないから、つとめて明るくふるまった。 ●最後の5年間は会社の清算に明け暮れた。非常に追い詰められた厳しい状況 だった。最後は特別清算して破産するのだが、ガンが進行して人間が死ぬのと 同じで、非常に辛い毎日だった。会社に行くのが嫌なこともあったが、最後の 最後の後始末は、同族一族でないとできない。なので、とにかく、いいも悪い も関係なく、またまた目先の案件、業務、後始末、裁判などの対応に明け暮れ た。だから、時間はあっという間に過ぎて、モチベーションどころの話しでは なかった。だから、あまり考えなくてもよかった。 ●その後少し落ち着いてからが、問題だった。後始末もそこそこ終わり、急に 力が抜けた。さて、これからどうするんだろうと?考えると急に恐ろしくなっ た。実は、何も身についていない、何もスキルがない、何も経営の経験をして いないことが、急に現実に目の前に突き付けられた。それまで考えたこともな かった、モチベーションが全く湧いてこないことに気が付いた。ここから、ま た人生の第二のドラマが始まるのだが、これ以降はまた別の機会に譲るとし て、今日のテーマは経営者が従業員に示すモチベーションの話しだ。 <モチベーションを継続させる工夫が要る> ●人は動くことで、変化が起き、様々なチャンスも生まれる。当たり前だが、 何もしないで動かなければ何も起きない。だからこそ動く動機が必要になって くる。 会社へ行くのは、仕事があり楽しい、あるいは給料が出る、それが会 社へ行くモチベーションになっている。 普段の行動に慣れるとあまり気にし な くなってしまうが、時にはなぜ会社へ行くのか、なぜ仕事をするのかを問い直 してみる必要がある。 そこで重要なことはモチベーションであることが分か る。というのも、モチベーションは常に更新されないと持続しないのだ。 ●脳の中ではドーパミンという脳内物質が出て、モチベーションを作り出して いる。しかし、こういった脳内物質はずっと同じ状態を維持することは難し く、何もしなければ次第に枯渇してくる。だからモチベーションをリセットし ていかねばならない。 昇進する、給与が増える、インセンティブを与えるな ど、いわゆるいろいろな意味での報酬が変化することで、社員のモチベーショ ンは保たれることになる。 上司が「つべこべ言わずに働け!!」という物言い をすれば、いかにモチベーションが上がらないか想像がつく。 ●命令で仕事をやった場合、脳内ドーパミンが出にくくなる。納得して動機付 けできないと、労働意欲は低下するのだ。また、人の行動は後から、なぜそう したのかを自分なりの論理で理由付けをするものだ。自分の行ったことを肯定 的にとらえて、そこで納得しようとし、満足も感じていく。モチベーションの ある理由があって、それを遂行したときに満足していく、という一連の思考の 流れがある。そして遂行してしまうと、一気に脳内ドーパミンは低下してい く。 だから、働き終わる前に、新しくモチベーションになるものを作り出し て、モチベーションを継続させる工夫が必要になってくるのだ。 <仕事への渇望感を作り出す> ●自分の仕事の成功が、周囲の人に満足を与え、会社にも貢献できる、そんな 意欲の継続を工夫していく必要がある。最終的には、モチベーションと評価が あって、ようやく納得という状態になるのだ。最近の若者は「納得した仕事し かしようとしない」という。何も考えずにとにかくやっておけでは、若者はも う働こうとはしなくなってる。「ほどほどでいい」という発想の最近の若者の 意欲を変化させていくのは難しい問題である。なぜほどほどでいいのか、たぶ んそこには成功体験がないのだ。 ●強いモチベーションになるものがないまま仕事をしていけば、ドーパミン自 体も分泌が少なく、自分の感情を動かすほどの感動も生まれてこない。物が無 い時代の人間にとって、何か欲しい物を得るということは、非常に強いモチ ベーションだった。本田宗一郎が子供のとき、航空ショーを見て、自分も飛行 機を作ってみたいと思ったというが、そのモチベーションが時代を超えて、よ うやくホンダのジェット機が販売される段階になった。渇望感がない現代の若 者のモチベーションを作り出すことが、いかに難しいか想像がつく。 ●上司としては、小さなことでいいから最後までやりきらせて、そこでの達成 感という満足の高い記憶をとどめさせることが重要だ。仕事を目の前にしたと き、達成感の記憶があれば、モチベーションを上げさせやすい。この脳の仕組 みによって、人は様々な進歩を遂げてきたのだ。今、渇望感を作り出せれば、 最高のモチベーションになるはずだ。企業の中で、いかにやる気を起こさせる テーマを出し続けられるか。それが経営者の責務だ。それを出し続けられた経 営者が経営する企業だけが生き残り、成長する。