**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第578回配信分2015年05月25日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その76 〜社員一人一人のモチベーションの源泉を知って声をかける〜 **************************************************** <はじめに> ●ときどき講演でお話しするのだが、人間にはすべてモチベーションの源泉、 つまり源がある。これは、ひとそれぞれなのだ。極端に言えば100人100様だろ うが、大きく分けると9つ、もっと大雑把に分けると4つに集約できるとい う。この、タイプを知って声をかけないと、逆効果になる。いろいろな企業や 組織のトップの方とお付き合いがあるが、しばしよく見かけるのは、この社員 や従業員のタイプをあまり頓着なく声をかけたり、オーダーをされる経営者の 方が意外と多い。やる気を起こさすつもりで、逆をされている。 ●9つのタイプを学問的に解明しているのは、エニアグラムという学問があ る。書籍も出ているし、学会もあるから、興味のある方は勉強されたらいい。 成岡も以前在籍の出版社で、人事関係の責任者をしていたときに講師の方を京 都に来てもらって、講習を受けたことがある。体験すると納得して、以来この テーマは色々な講演などで使わせていただいている。誤解してはいけないが、 どのタイプが偉くて、どのタイプがダメということではない。人間にはそうい う側面があり、それを知って人的マネジメントをすることが大事なのだ。 ●9つを覚えて使いこなすのは大変なので、4つに分類することを応用すれば いい。この4つは、「達成支配欲求型」、「論理探究欲求型」、「審美創造欲 求型」、「貢献調停欲求型」の4つだ。以下、それぞれのタイプを簡単に紹介 するが、くれぐれも繰り返すが、この4つのタイプのどれが偉くて、どのタイ プが悪いということではない。それぞれにそれぞれのメンタルの特徴があり、 モチベーションの源泉が異なるということだ。これを無視してマネジメントし てはいけない。逆のことをすると、本当に逆効果になる。 <4つのタイプをまず知ること> ●まず、「達成支配欲求型」の人。このタイプの人は自分を強く意識する。自 力本願であり、成功を収めたいとか、周囲に影響を与えたいとか、意思の弱そ うな人への依存を嫌う。勝ち負けや結果に拘り、明確な目標やライバルの設定 に燃えるタイプ。体育会系のマインドに近く、勝負に執着する。営業的な部署 に多いタイプかもしれない。逆に、目標やライバルの存在がなくなったり、し ぼんでしまうと途端にやる気が失せる。昇進や昇格も非常に大きなモチベー ションになる。数字に執着する。 ●次に、「論理探究欲求型」の人。このタイプの人はいろいろなことを知りた い、知識を吸収したい、ものごとを解明したい、自信を持ちたいタイプ。無計 画な行動を嫌う。勢いだけで、突っ走らないタイプ。原因や結果を常に論理的 に考えようとする。能力を磨く機会を好み、学習を大事にする。逆に、その吸 収したものを活かせない職場にいると、非常にストレスがたまる。行動重視の 職場や考えるより、汗を求めるマインドのような組織では、その能力を活かせ ない。行動は慎重で、ときに見ていてイライラすることも多い。考えてから、 行動を起こす。 ●3番目は、「審美創造欲求型」の人。新しことを考えたい、生み出したい、 変化を好み、マンネリを嫌う。楽しいことを考えたい、自分の個性を尊重され たい。平凡や同じことを作業の繰り返しを嫌う。アイデアを重視され、いろい ろと仕事の内容が変わることが楽しい、嬉しい。単調な作業の職場には向かな い。変化へは期待があり、単調を嫌う。逆に、アイデアや独創性を否定された り、無視されると非常に落ち込んだり、ネガティブになる。無反応が一番逆効 果だ。とにかく、まずその意見を認めてあげる。 <相手に興味を持ち知ろうとする> ●最後のタイプは、「貢献調停欲求型」。貢献調停だから、争いごとを好まな い、人の役に立ちたい、平和を保ちたい、葛藤を避ける。協調を大事にし、常 に周囲に気配り、目配りしている。空気が読めない人と真逆なタイプだ。分か りやすく言えば、集団で食べに行ったときに、決して自分からオーダーしな い。周囲の雰囲気を感じて、最後に自分のオーダーをする。それも、たいてい 皆と同じでいいと言う。一見、意志薄弱のように見えるが、そうではない。こ のタイプの人には、必ず、ありがとうの声をかけ続ける。 ●4つのタイプを簡単に紹介したが、おおむねどの組織でも大きくはこの4つ のタイプに分類できる。あなたの組織の周囲にいる人を想像し、彼、彼女はど のタイプに近いだろうかと考えて欲しい。明確にわかる人もいれば、はっきり 分からない人もいるだろう。それは、それでいい。大事なことは、そのように 決して人間は同じではないということだ。そのいろいろな人が混ざり合って、 混在して仕事をしている。特に、口数の少ない人や、付き合いがあまりない人 のタイプは分からないことが多い。まず、その人を知ることだ。 ●違うタイプの人同士がチームを組まないといけないことも多い。例えば上記 の例で言えば、達成支配欲求型のタイプの上司と、論理探究欲求型の部下の組 みあわせは、一見最悪に見える。上司が考えずに走るタイプで、部下が論理的 で慎重なタイプの場合、何をやってもうまくいかないことが多い。しかし、少 人数の中小企業では選択の余地がないので、そうせざるを得ないことも多い。 それはそれで仕方ない。大事なことは、お互いがお互いをそうだと認識するこ とだ。知っていることが大事なのだ。 <自分自身もどのタイプかを知っておく> ●特にトップマネジメントにいる方は、これを知っておくことは大事だ。そば で見ていると、往々にしてそのタイプの人に逆の声掛けをしているケースが多 い。全員にまんべんなく目配りは難しいが、意識をしておくことは大事だ。最 後の貢献調停欲求型の人には、ありがとうの声をかけ続ける。給料をあげるこ とも大事だが、その人が縁の下の力持ちで、見えないところで頑張っているこ とを評価してあげる。そして、一言、「みんな声に出して言わないけど、みん なあなたのことを感謝しているよ。いつもありがとう」。これが最高の声掛け なのだ。 ●もちろん、待遇や処遇を疎かにしてもいいという意味ではない。しかし、人 間にはそれぞれその人独自の「動機づけ要因」があるということだ。その人の 動機づけ要因を知って、毎日の人的マネジメントをする必要がある。24時間そ ういうことを考えていては、とても頭が持たないが、重要な意思決定のときや 組織を変えるとき、人選をするとき、昇進昇格を考えるとき、管理職を選ぶと き、プロジェクトチームを編成するとき、などなど応用できる局面は多い。 知っていて、意識してそのような編成をする。 ●人事考課、評価をするときにも有効だ。人事考課は、差をつけることが目的 ではない。自分が自分を評価したものと、考課者=上司が評価したことの相違 を認識し、その相違を埋めるためにお互いがどのような努力をすればいいのか を、共通認識することだ。決して、点数をつけたり区分したり、差を計算する ことが目的ではない。その評価者と当事者の面談のときに、この4分類を知っ ていることは重要だ。まず、上司本人が自分のタイプを知り、面談する人のタ イプを想像する。そうすれば、動機付けは間違わない。