**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第579回配信分2015年06月01日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その77 〜問題点が見えてくればすぐにアクションをとる〜 **************************************************** <はじめに> ●経営状態が思わしくない企業の共通の特徴は、問題点の把握、理解が不足し ていることが多い。あるいは、間違った問題点として捉えているケースが多い ようだ。思い違いもあるだろうが、大方のケースは経営者の理解不足にその原 因がある。つまり、表層的な、表面的なことが課題や問題ととらえて、ことの 本質に迫っていない。形式的な課題認識の方法で考えて、もっと深刻に、深く 事態を掘り下げない。掘り下げると面倒なことに対処しないといけないので、 敢えてそれを避けている。 ●表面的な課題、問題点は分かりやすい。新入社員でもわかる場合がある。業 績が悪化している。よくみれば毎年、毎年売上が5%くらい減少している。な ぜか、ずっと続いているので10年間で売上も半分近くになってしまった。当 然、原価も減っているが固定費はそんなに減らない。よって、お決まりの営業 赤字になっている。それもここ5年くらい、毎年同じような営業赤字を継続し ている。そして借入金も多いから、当然支払金利が多額にある。よって、経常 利益はマイナス。減価償却をゼロにしているから、キャッシュも目減りする。 ●この状態が数年間続くと、手元の現金資産があっという間になくなってい く。まだ、代表者の個人資産から穴埋めできていた間はよかったが、それも 段々なくなって、いよいよ万策尽きるところまで来てしまった。そこで慌て て、業績が悪い、業績が悪いと大声で叫びだす。そして、課題は明確だとおっ しゃる。明確な課題は、売上が減少していることではなく、それに対して何も 手を打てていない、対策を講じていない経営者それ自身にあるのだということ が分かっていらっしゃらない。なので、病巣は根深い。 <課題が分かっても解決策は見つからない> ●昔は、課題や問題点が明確になれば8割解決したのも同じとよく言ったもの だ。確かに、以前では課題が分かれば、比較的ワンパターンで解決策が見え た。しかし、今は違う。問題が複雑になり、グローバルに考えないといけない し、ITは活用しないといけないし、選択肢は多くあるし、非常に先が見えにく い。だから、そう簡単に課題が明確になったからと言って、解決方法がすぐに わかるか、見えるか、と言ってもそうは簡単なことではない。選択肢もいろい ろと考えられ、逆に迷うことも多い。 ●表面的な課題が見えて、さらに本質的な原因が分かっても、解決策がそう簡 単に明らかにはならない。一層、深刻な原因だと分かると、そう簡単に手は打 てない。あるいは、原因がかなり中心部にあると、そうおいそれと手を出せな い。特に、一族同族間の問題、会社の空気風土に関わる問題など、モラルや規 範、考え方などメンタルな部分に関係する問題だと、そう簡単に一朝一夕で解 決はしない。時間がかかる場合もあるし、何より経営者自身の考え方、生活習 慣を変えないといけないことが多い。 ●65歳の社長だと、それまで65年間生きてきた、45年間社会人生活を送ってき た、35年間この会社で働いてきた、25年間社長として経営してきた自負もある し、キャリアもある。先代社長のお父さんから引き継いで、当初苦労したが何 とか軌道に乗せることに成功した。しかし、それ以降業績は低迷し、収益力は 低下し、資金効率は悪化し、借入金は増大し、なにひとつうまくいかなくなっ た。そうなると、従業員の定着も悪くなり、一層業績の低迷に歯止めがかから ない。しかし、誰もそれを社内から指摘する人はいない。 <行動しないと運はつかめない> ●課題は分かって原因も推定はできたが、行動に移らない方も多い。何より毎 日が結構慌ただしいし、騒々しい。つまらない目先の用事が多くて、結構それ に時間を取られるから、本人は忙しいように感じている。しかし、一番大事な 解決しないといけないことが、後回しになる。着手容易性の高いものから手を 付けるから、困難な課題が後回しになる。本当は困難で難しい課題から手を付 けないといけないのだが、どうも気が向かない。性格的にも合っていないと感 じると、その課題にチャレンジするのは、もっと後になる。 ●人間誰でも好き嫌いはあるが、こと経営に関しては好き嫌いで物事を判断し てはいけない。会社にとって、企業にとって一番大事なことから始めないとい けないのだが、どうも重たい腰が上がらない。何よりも、一歩出て行動を起こ す気配がない。しびれを切らして、こちらから水を向けるのだが、一向に対 処、対応する気配がない。アクションが遅いと言えばそれまでだが、どうして こんな大事な案件をすぐに行動に移さないのか、皆目見当がつかない。そのう ちに、次の重要な課題が出てきて、そちらに一生懸命になる。 ●経営とはデスクの勉強でできるものではない。経営学は座学やMBAでも学ぶ ことはできるが、実地の経営力は現場で力をつけるしかない。某有名大学院の 教授によると、事業の成功は運8分ということも書いてあるが、そこまで極端 ではなくても、相当の部分運やたまたまに左右されることが多い。しかし、行 動しないと運は向いてこない。社長室のデスクに、かまぼこのように張り付い ていても、誰も何も教えてくれない。自分の足で稼いで、自分の眼で見たもの を信じて、行動し、自分で自信を持つことだ。 <経営者が行動的だと会社も行動的になる> ●そういう風に思うと、行動力のある経営者と、そうでない経営者のグループ に分かれるだろう。行動力のあるグループに属する経営者の方の習性は、よく いろいろなものを勉強している。関連するTVの番組を必ず見ていたり、関連す る雑誌を常に読んでいたり、ときどきは講演会に聞きに行ったり、異業種の集 まりに積極的に出たり、あまり会社でじっとしていない。そして、その行動の すべてが結実するわけではない。しかし、それでもいいと割り切っている。 買った書籍の1行でも参考になれば、満足している。 ●行動力が乏しい経営者の方は、何かにつけて否定的。当方からいろいろと提 案があったり意見があっても、試そうとしないし考えない。プランのひとつだ と思わないし、思えないのだろう。そしてタイミングを逸する。なにごとに も、頃合いと言うものがあり、食べ物の旬の時期、賞味期限と同じだ。メール を投げてから、相当の時間が経過してから、やおら質問が来ても、もう栓の開 いたビールのようなもので、一向に気が乗らないし、おいしくない。かくて、 話しは流れて二度と上流に遡らない。結局、何も行動しないし、変わらない。 ●ダメモトという言葉があるが、すべてが成功するはずもない。確率的には非 常に低い。しかし、まずは動いてみないと分からないことが多い。相手の城を 見に行く。人に会ってみる。自分の眼で見て確かめる。店に入ってみる、もの を買ってみる、使ってみるし、食べてみる。経験主義と言われればそれまでだ が、経営はやってみないと分からないことが多い。経営者が行動的な会社は、 全体も行動的になるし、アクションが速い。スピードが要求される現代では、 非常に大事な要素だ。まずは、トップの腰の軽さ、フットワークの良さが必要 なのだ。