**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第580回配信分2015年06月08日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その78 〜社内で一番時間当たりの生産性が高いのは自分だと意識する〜 **************************************************** <はじめに> ●通常は、社長の報酬が全社で一番多いのが普通の中小企業だ。稀に、社長が 高齢であったり、地代家賃をもらっているから報酬を少なくしたり、業績が芳 しくないから減額したり、いろいろな理由で必ずしもそうでもない場合もあ る。しかし、普通の中小企業では、経営のトップが一番報酬が高いのが普通 だ。当然のことながら、所有と経営が一体になっている場合が多いので、大き なリスクを背負っている。代表者としての保証もあるし、連帯保証人になって いる場合がほとんどだ。株式も大半所有している。 ●業績がかなりいい企業では役員決算賞与や株式の配当をする企業もあるが、 それはむしろ例外と考えたほうがいい。大半の中小企業は好業績でも、決算賞 与を役員に配分したり、多額の株式配当金を出す企業は少ない。それより、年 間の役員報酬を多くもらったほうがいいと考える経営者が多い。また、一定金 額の交際費や、社有車の個人的使用など、経営者とオーナーが一対になってい るので、役員報酬以外の経費の会社負担が大きい。出張でも会社によっては、 グリーン車での利用を認めているケースもある。 ●そういうことが全部悪いというつもりはないが、ご自分の報酬や地代家賃の 収入、経費の使用金額などを合計して、どれくらいの生産性があり、どれくら いの費用対効果を生んでいるのかを冷静に知っておく必要はある。特に京セラ のアメーバー経営ではないが、時間当たりの生産性、つまり金額を把握してお くことは、非常に大事だ。時給いくらというのは失礼な言い方かもしれない が、一般社員に比較して何倍の生産性、効率を求められているのかを、常に自 覚して動くことが大事だ。それくらい、中小企業は経営者に依るところが多 い。 <時間の浪費は会社資産の無駄遣い> ●特に、時間の使い方に非常に敏感、鋭敏になるべきだ。失礼ながら、年長の 社長になればなるほど、動きは緩慢になり、時間の使い方も散漫になり、ロス が多い。普通ならメールで済むことが電話になる。おっつけ、長い電話にな り、お互いにその時間は消費される。メールなら空いている時間にさっと読ん ですぐに返事をすれば済むことが、携帯電話の延々たる会話になると30分くら いの時間はあっという間に過ぎてしまう。この時間が消費、浪費されていると いう自覚がない。おそらく、社内でも同じことだろう。 ●年齢が高くなると朝が早い方は多い。それなら、いっそ早く出社してみんな が出社するまでに雑用を片づければいい。そして、三々五々出社していくる社 員や従業員一人一人に挨拶すればいい。全員に挨拶して、朝の顔色を見るだけ で、誰が元気で誰が少し元気がないかが、一目瞭然でわかる。一番偉いポジ ションだから、一番最後に出社するのがいいのだと、勘違いされている経営者 もいらっしゃる。中小企業は社長の元気、バイタリティで企業が維持されてい るようなものだから、社長が一番元気でないといけない。 ●そのような元気が段々年齢を経ると出てこなくなる。50歳台はほっておいて もどんどんやる気、元気、活気があった。少々へこむような出来事があって も、なにくそと頑張れた。しかし、当然のことながら、年齢を経るとそのよう なバイタリティがなくなってくる。若い従業員や社員との会話が少なくなり、 飲みに行く機会も減る。同窓会に行けば、同年代の愚痴を聞く会になることが 多い。元気をもらうには、若い年齢層の人と付き合わないといけない。そのた めには、自分自身の環境整備が重要だ。日ごろからこころがけておかないとい けない。 <どれくらい会社業務の生産性に寄与したのか> ●時間当たりの仕事効率が悪化すると、どんどん意思決定は遅れ、判断力は鈍 くなり、決断ができなくなる。同じことを決めたり、判断したりするのに、以 前の倍の時間がかかるようになる。つまり、経営者としての生産性がどんどん 落ちていく。当然、時間当たりの生産性は悪化する。では、それに応じてご自 分の待遇や経費の使い方、おカネのもらい方を変えているだろうか?よほどの ことがない限り、経営トップの役員報酬に関しては、自らが決めるしかできな い。周囲からこうしないさいと言うべき事柄ではない。 ●よって、自分の報酬は自分の責任で決めないといけない。いくら社長がも らっていらっしゃるかを公開している企業は少ない。僅かに再生目線の企業で は、外部に公になる場合もあるが、通常役員報酬が誰にいくらというのを承知 しているのは、税理士さんと銀行くらいかもしれない。それ以外の利害関係者 はほとんど関知していない。よって、自らの待遇と出処進退は自分の責任で決 めるしかない。その金額が世間水準から見てどうだろうかというのは、比較の 方法がほとんどない。常識の範囲内で考えるしかない。 ●通常、一番多額の報酬を得ているはずなので、時間当たりの単価は相当高い はずだ。その業務に関する時間の使い方が問題になる。業界団体の会合で東京 に出向くことも、ままある。新幹線での移動や都内での移動、前後のロス時間 は相当なものだ。では、一番時間単価が高い経営者の方が、その時間と多額の 費用を投じて対応した業務が、自社のビジネスの生産性にどれくらい寄与した のか。そのような時間を控除したり、差し引いて計算すると、恐らくとんでも なく高い時間単価になるのが普通だ。 <一番高給をもらってもおかしくない結果を残すこと> ●当然、ビジネス上のおつきあいというのもある。宴会や懇親会に一切顔を出 さないということも、日本ではなかなかしにくいことなので、やはり一定のお つきあいは必要だ。そこで、色々な方との出会いから新しいビジネスの展開が 始まるケースも多い。全面的に否定はしないが、そういう周辺の間接的な時間 を控除し、差し引くと意外と真剣に社業に向き合っている時間は短い。その短 い時間で、時間当たりの単価、生産性などをアメーバ経営的に出してみればい い。驚くほど低い生産性になっていないか。そこが問題だ。 ●中小企業では、経営者の方の公私のけじめというのが難しい。どこまでが会 社の費用で、どこまでが経営者ではなく私人としての範囲なのかは、決めるこ とは困難だ。だから、24時間365日が全部会社の経営に何らかの形で関わって いると割り切ったほうがいい。そして、常に経営者としての生産性を意識して 日常を過ごすことだ。そう割り切ると、聞くもの、見るもの、見えるもの、書 いたものなど、すべてが経営の役に立つことばかりだ。それくらい意識として 凝縮できれば、時間当たりの生産性は格段に高くなる。 ●とにかく現場を把握する。疑問のある報告には必ず現場に足を運ぶ。ここは 自分が出ていくべきと判断したら、間髪を入れずに行動に移る。ときに、もう 少し様子を見ようということもあるだろうが、その待った時間は後に取り返し のつかないロスを生む場合が多い。とにかく、社長の思考の停滞、行動の優柔 不断、決断の遅れは、ときとして致命傷になることが多い。それくらい責任あ るポジションだと自覚すれば、一番高給を取っても何らおかしくない。これく らいもらっても当然だという結果を残すことが、逆に自分へのプレッシャーだ と思えばいい。