**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第581回配信分2015年06月15日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その79 〜返事を速くするには日ごろから潜在意識で考え続けること〜 **************************************************** <はじめに> ●いろいろな役職をお引き受けしていると、色々なお役目が回ってくる。本当 はこれは面倒だなと思えることも、まま、多い。でも、他に誰も引き受け手が ないだろうから、仕方なくというか、止むを得ずというか、お引き受けしてい ることも多い。しかし、心情的には頼まれたら断らないというのを原則にして いる。そのときのモットーは、返事を速くすること。スピード感を持って、 さっと早く返事する。ぐずぐず検討して、最後の最後に時間切れ寸前で承諾す るくらいなら、始めからさっと早く反応して引き受けたほうがすっきりする。 ●どうせぐずぐず色々と検討しても、そう簡単にいい知恵、素晴らしいアイデ アが滾々と湧き出てくるわけもない。それなら、いっそいったん引き受ける返 事をして、そこからさあどうやってやろうかと考えたほうが、現実的な知恵が 出るものだ。賢い人ほどデータを多く集め、シュミレーションをいっぱいし て、やらない原因や理由を探そうとする。そうではなくて、あまり自信や根拠 はないが、まず返事を速くする。断るなら、いっそう返事を速くする。返事を 速くするには、常日頃そのことを深く潜在意識の中で考え続けておかないとい けない。 ●重大なことをあまり常時深刻に考えていると、逆にいっそう結論が出ない。 もっと迷走する。重大なことほど、内容が重たく深刻だから、あまり子細に考 え出すと細かいことを気にすると、ほとんど結論を出すことは不可能だ。だか ら、大きな重たいことはざっくり方向が間違っていないかということを重点的 に考える。細かい方向は特に気にしない。実際にいろいろなことを進めていく と、必ずいろいろな壁にぶつかる。現実には難しいことが一杯ある。しかし、 その一杯ある難しいことを、先に考え出すときりがない。 <大きな方針ほどざっくり決める> ●大きな方針、方向は、だいたいでいい。だいたいが、合っていればいい。何 に合っているかというと、世の中の流れ。この世の中の流れ、方向に抗うこと はできない。社長のミッションは、この世の中の流れを読むこと。しかし、そ れはそう簡単には分からない。それが分かれば、みんな教えてほしい。だか ら、いろいろな講演を聞きに行き、書籍を読み、雑誌を買い、識者の意見を聞 く。しかし、誰も自社の業界、自社の将来に関して決定的な結論を教えてくれ るわけではない。自分で決めるしかない。 ●足下の業績も大事だが、将来はもっと大事だ。従業員は、今日の、明日の業 務が大事だ。しかし、経営のトップは、少し先を見ないといけない。その少し 先に合致する案件、事象などが起こった時に、瞬時に決断しないといけない。 それが出来ないと、返事が遅くなる。少し考えて、誰かに聞いて、少し調べ て、シュミレーションして、会議を開いて、そこで考え結論を出そうとする。 しかし、案件を持ち込んだり、問いかけた方からすると、どうしてそんなに時 間がかかるのだろうと、疑問がわく。これは、日ごろから考えていないから だ。 ●毎日、毎日、そんなに大きな案件が山ほどあるわけではない。毎日は、子細 な業務のやり取り、細かい日常の積み重ねだ。それは、非常に大事。それが、 きちんとできないと将来もない。毎日、毎日の試合をきちんと勝ち抜けない と、トーナメントなら優勝はあり得ない。ビジネスはほとんどリーグ戦だか ら、かなり負けが込んでいても、継続していれば何とかなるものだ。一発勝負 の連続ではないから、一度負けたからといってマイナスの思考になる必要はな い。少し勝ち越しを連続して行えればいい。 <経営も生活習慣病予防と同じ> ●大事な、大きな意思決定は、ときに突然やってくる。あとから、振り返れ ば、ああ、あのときのあの出会いが大きかった。あの人にあそこで会ったの が、その後の方向に大きな影響を与えた。あのときの意思決定が、その後大き な方向転換のきっかけになった。今まで、そのようなことを経験されているは ずだ。振り返れば、そのときにそんなに重大に考え、十分な時間をかけてシュ ミレーションし、多くの会議を開き、多数を意見を集めたか。意外と、大きな 意思決定ほど、瞬時に意思決定していないか。 ●返事が速い人は、大きなグランドデザインを、いつも考えている。その方向 に合う意見や、人物、情報をフィルターを通して一杯集めている。無意識に、 毎日毎日そのように過ごしているから、自然とそのような情報が集まる。見る もの、聞くもの、集めるもの、食べるもの、会う人が、すべてその方向に関連 する行動、判断につながる。これを、ばらばらにやっている人と、一定の方向 に集まっている人と、最後の最後は非常に大きな差が出る。これは、特に意識 していないけれど、最後は大きな差になる。 ●常に備えよ、とはボーイスカウトのコンセプトだが、企業経営も同じだ。常 に将来に対して、備えることが将来の方向を決めるときに、決定的な差とし て、顕在化する。こればかりは急に意識しても、すぐに改善できるものではな い。毎日、毎日の細かい積み重ねが、大きな要因になる。つまるところ、経営 も人間の成人病、生活習慣病予防と同じだ。成果習慣病の克服には、文字から 考えて生活習慣を変える必要がある。生活習慣を変えるのは大変だが、企業経 営も同じことだ。企業の風土、文化、習慣を変えないといけない。 <大きな方向性をいつも考え続ける> ●大きな意思決定は、日ごろの生活習慣がものを言う。急に、明日から変えよ うと思っても変えられない。日ごろから、将来特に3年後5年後に対して十分 に時間をかけていろいろなシュミレーションをしていれば、急に返事を求めら れても、細かいことは難しいが、大きな方向に関しては、すぐに返事ができる はずだ。その大きな方向に関して、すぐに返事ができない、意思決定できな い、回答ができないというのは、将来に対して考えていない証拠だ。これを自 身のリトマス試験紙だと思って、いつも液が触れたら、赤か青か反応できない といけない。 ●まず、方向を決める。この方向なら、多少応用問題で難しい、細かいことが あっても、軸がぶれない。経営者は、これが大事だ。意外と子細に立ち入り、 つまらないとこで時間がかかる。我々からすれば、そんなことはどうでもい い。どうでもいいことに執着して、大きな方向が決まらない。どのような方向 に自社は行きたいのか、後継者と思われる息子さんとそのような大事なこと は、実はほとんど社内で話したことがない。そういう企業の場合、ほとんどが 現在の社長と後継者とでの意思疎通が図れていない。 ●かくて、大事な案件の意思決定の際に、社長と役員、後継者で意見が一致し ない。意見が分かれてもいいが、基本的な方向、ベクトルは一致していないと いけない。多少のぶれは許容できるが、大きな方向が異なると会社のエネル ギーが大きく削がれる。小さな規模の中小企業、零細企業で、この大きな方向 の誤差は非常に大きい。まず、経営者は常に将来のグランドデザインをイメー ジする。いつも、いつも、これでいいのか、これでいいのかと自問自答する。 その準備ができていると、すぐに返事ができる。それがトップの責務なのだ。