**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第583回配信分2015年06月29日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その81 〜日頃から幹部とのコミュニケーションを図ることがトップの仕事〜 **************************************************** <はじめに> ●コミュニケーションとは、いわずもがなながら、双方向の会話なのだ。双方 向とはまさに双方向で、野球のキャッチボールと同じく、お互いに会話のスト ロークとピッチが合っていないといけない。しかし、これはなかなか会社の中 では難しい。社長と幹部の会話を会議に参加させてもらって聞いていると、ど うもうまくかみ合わない。どうしてだろうかと思うが、それには色々な理由が ある。簡単に、ひとつの理由ではなく、色々な理由が混ざった複合汚染なの だ。このひとつずつの理由を全部解消しないと、うまく会議で有効な議論にな らない。 ●まず、お互いの持っている情報量が違う。これを情報量の非対称性という。 全く同じ、対称でないので非対称性と称する。そんな言葉のことはどうでもい いが、とにかく社長と現場幹部との間では、確かに情報量が大きく異なる。現 場幹部の責任は現場での業務をいかに円滑に行うか、ということであり、社長 の責任は会社の経営を継続発展さすことだ。だから、双方の立場とミッション が異なるから、当然日常的に入ってくる情報の量と質が異なる。これはいかん ともしがたい。だから、そのことを前提にして話さないといけない。 ●会議に参加させていただいて聞いていると、そもそも持っている情報の量と 質が違うから、そこを同じレベルにするのに相当な時間とエネルギーが必要 だ。2時間が会議の時間だとすると、前回の会議から今日の会議までの時間の 間に、それはいろいろなことが起こっている。その時間差を埋めるのに、相当 な時間がかかる。下手をすると会議時間の半分くらいの時間をそこに割かない といけない。これは非常にもったいない。どうしてこんな些細なことを、この 会議で持ち出すのか。そういうことは日常共有することではないのか。 <本当に意味のある会議になっているか> ●上記のような会社は結構多い。お互いに忙しいのだろうが、どうしてそのよ うな仔細、些細なことを日常会話できちんとできないのか。どうしてそれを会 議で持ち出さないといけないのか。会議は、会して議するだから、お互いに 会って議論する場面なのだ。それが、日常の情報交換、情報確認のような場面 にすり替わる。そして、些末なことを延々と話す。2時間の時間の大半がその ような時間に終始し、肝心の今後の方向性や課題解決のための検討の方向など は、全然見えてこない。特におかしいとも感じていない。 ●あるいは、社長が一方的にしゃべったり講演したりして、時間の大半を消費 する。気が付けば時間の半分くらいを経過している。これではちっとも会議に もならないし、時間の浪費だ。あるいは、逆のケースもある。出席幹部社員が 一生懸命、社長に語りかけているのに、一向に社長はその人物と会話をしな い。顔もまともに見ない。かくて、何も議論も検討もないまま、単なる報告会 の無策な時間が過ぎていく。その報告も、日常的な内容ばかりで、なんとなく だいたいおおよその内容は察しがつく。 ●そんなことのために数名の幹部が、この貴重な時間中の数時間を割いて、雁 首を並べて会議をする。これが無駄な会議だという意識が低い。他社の会議を 知らないから無理もないが、これが無駄で生産性の低いレベルだという意識が 少ない。かくて、何も決まらない、何も検討がない、何も討議がないまま2時 間が終わる。意味が全くないとは思えないが、これくらいの内容ならわざわざ 会議をする意味がどこにあるのだろうか。会議の場面でまともに切り出すと、 社長の面子に関わるから、当方も黙ってしまう。あまり良くないが。 <管理に強いトップとは会話がしにくい> ●要するに、こういう会社の場合は、社長と幹部との間の日常的なコミュニ ケーションが全くといっていいほど、取れていない。この責任の大半は社長に ある。幹部は日常業務で忙しい。今日の決まった生産をきちんと仕上げないと いけない。今日の納期に間に合わせないといけない。それが仕事であり、それ が現場を預かる幹部の責任だ。それは正しい。よって、会議の準備段階の会話 は、社長側からしかけないといけない。中小企業の社長のタイプには、この場 合、だいたい2通りある。 ●ほとんど現場に行かないタイプ。社長室か、社長のデスクに張り付いている 時間が多くて、長い。こういうタイプの経営者の方は、概して社長の仕事をし ていない。取締役総務部長か、取締役管理部長がする仕事を社長がする仕事だ と思って、ご自分がされている。これがおかしいと思われていない。なぜな ら、社長がその業務をしなかったら、それをする人がいないからだ。だから、 これはご自分のミッションだと思って、一生懸命されている。だから、逆に始 末が悪い。一生懸命な人ほど、そのようにされている。 ●このような管理部長、総務部長的なタイプの経営者には、幹部社員はなかな かコミュニケーションが取りづらい。理屈は非常に立つので、現場的な物言い では、通用しない。そして、数字にも明るい。悪いことではないが、現場的な 感覚とは一線異なる。まず、問題があれば現場へ足を運ぶべきだ。それを、な かなかしない。幹部の報告だけを聞いて、返事をする。返事をすれば、まだい いほうで、返事も解決の方向も、何も提示がない。だから、幹部もあまり足を 運ばなくなる。どうせ言っても、仕方ないと諦める。会話がなくなる。 <日常ワイワイガヤガヤやっているか> ●逆のパターンもやりにくい。こちらは、どんどん現場へ出ていく。自分が営 業部長をしたり、自分が現場の指揮官になったり、自分がやらないと気が済ま ない。現場的な業務や、営業の仕事は得手だから、自分がどんどんやる。任せ ていると、いらいいらする。自分がやったほうが、結果も出やすいし、納得が いく。かくて、部下が育たない。任すことを知らない。自分ができると思って いるから、余計に始末が悪い。会議になると、自分が精通しているので、自分 が話す時間が長くなる。幹部の話しをとことん聞かない。 ●こういうタイプの経営者の場合も、幹部とのコミュニケーションは細り、そ のうちほとんどなくなる。では、どのようなタイプが最も経営者としていいの か。それは、まず人の話しを一生懸命聞くことだ。聞くというより、聴くこと だ。この聴くは、耳偏に心がある。心から聴くことは、非常に大事だし、非常 に疲れる。人の話しを一生懸命聴くと、非常に消耗する。自分がしゃべってい るほうが、楽なのだ。いずれにしても、日常のコミュニケーションを頻繁にや りとりしていると、会議での会話は極めて活性化する。 ●聴いた次には、70%をまずイエスから入る。まずは、相手の話しを肯定する のではなく、認める。この認めることを、やらない人が多い。頭から聴かな かったり、否定したり。それも、最後まで聞かないで途中で遮って、否定す る。そうではなくて、相手の言い分、主張を最後まで聞いてみる。そして、そ れから、やおら会話、討議、双方向のコミュニケーションが始まる。日常、事 務所や社長のデスクの周囲で、幹部がフランクにわいわいがやがややっていれ ば、改めて難しい顔をして会議などすることは必要ない。会議の多い会社の業 績は、総じて、良くない。