**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第586回配信分2015年07月20日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その84 〜情報の公開を積極的に行うと気苦労がなくなる〜 **************************************************** <はじめに> ●業績が芳しくない企業ほど、いろいろな経営的な情報を社内に公開しないこ とが多い。経営的な情報とは、売上であったり原価であったり、それに伴う粗 利であったり。また、その下にぶらさがる経費や管理費であったり。そして最 終的な営業利益であったり、経常利益などが代表的な経営数字だ。もっと詳細 な情報としては、色々な資産や負債があるが、これらの数字は相当詳しい人で ないと、なかなかぴんと来ない。だから、ほとんどの企業では、売上や原価、 利益の数字は公表、公開している企業が多い。 ●ところが、この経営的な数字を現実より立派に見せようとして、いろいろと お化粧をされる経営者の方も多い。お化粧とは化けるわけだから、実態より良 くみせようとすること。つまり、業績はそんなに芳しくないのに、少しでも表 面をきれいに見せようとする。売上の数字を大きくなぶることは難しいので、 その下にある原価や経費をいろいろと工夫されて、実態と異なる数字に置き換 える。また、顧問の税理士さんも社長からの依頼だから、断りきれないのでリ クエストを一生懸命に、何とか反映さそうとする。だんだん、実態とのかい離 が大きくなる。 ●正直にやると、もしかしたら今期は赤字になるかもしれない。それは、今後 のためには少々まずい。特に金融機関に多額の借入金がある企業では、少しで も利益が多く出ているように見せたい。粉飾ではないが、実態と少し違う解釈 をして、損益を良く見せようとする。しかし、数字は正直だから、どこかで実 態と合わなくなる。しかし、一度誤魔化すとずっと誤魔化さないといけない。 そのうちに業績が良くなれば、一気に修正しようと目論むが、なかなかそんな に都合よくいかない。かくて、少しの嘘が、どんどん大きくなる。もう、戻れ なくなる。 <従業員は会社の実態を知りたいと思っている> ●対外的な公表もさることながら、お勧めしたいのは社内的に数字を可能な限 り公表すること。借入金があれば、金融機関に業績の報告をするのは当然だ が、社内のメンバーに可能な限り経営数字を公開する。公開しても、ぴんと来 ない人が多いから、その意味、内容を懇切丁寧に説明する。それも、管理職に は管理職なりに、リーダークラスにはリーダークラスなりに、一般従業員には それなりに、いろいろと工夫して説明しないといけない。単に、全員を食堂に 集めて簡単に数字を並べたものを見せるだけではいけない。 ●面倒だと思われるかもしれないが、そこにひと手間かけることが、それ以降 の会社の業績の向上に大きく貢献する。まず、それぞれのポジションで一生懸 命働いている従業員や管理職は、会社の現在の状況を知ることを希望している と考えること。自分たちの所属する企業が、いまどうなっているんだろう。毎 日通勤して、一生懸命やっているが、会社の経営状態はどうなんだろうと、や はり気になる。良くても、悪くても、子供の成績が気になる親と同じだ。い い、悪いは別にして、まずは実態を知りたい。 ●従業員はそんなことはないと思っていらっしゃる経営者の方がいらっしゃっ たら、それは大きな間違い。昨日入社の中途採用の方でも、10年選手のベテラ ンでも、当然のことながら所属する会社の状態は知りたいはずだ。そうである にも関わらず、経営者が数字を公開しないと、どうしても疑心暗鬼に陥る。何 か最近業績がおかしいのではないか、残業が少ないのは儲かっていないのでは ないか。そういう風評は、食堂やロッカー室の他愛ない会話から、尾ひれがつ いてどんどんマイナスに発展して流れていく。 <まず自分自身がきちんと理解する> ●売上の数字だけ伝えても、それではよく分からない。実際には、最終の利益 に到達するまでには、それこそ色々な要素が絡んでくる。従業員には分からな い費用もたくさんある。特に、減価償却費などという代物を説明するのは、な かなか難しい。さきほども書いたように、管理職には管理職なりに、理解納得 できる説明が要る。それが経営者の努め、義務、ミッションだと思わないとい けない。まずは、売上から利益までの中味をご自身がきちんと説明できるよう に、理解しないといけない。これも勉強だ。 ●損益に関わる計算は、縦に足し算、引き算だから比較的わかりやすい。分か りやすいが、実際に相手に説明するとなると、結構やっかいだ。日ごろあまり 関心が薄い経営者の方は、数字を見るのに慣れていない。しかし、経営と数字 は切っても切り離せない。だから、肝心なところは完璧に理解しておかないと いけない。そのためには、時間を取って自分自身がいろいろな階層にそれなり に理解できるように説明できるようにする。自分自身の勉強にもなる。場合に よっては、後継者の方と一緒に勉強、復習する。 ●月に一度しか来られない税理士さんに家庭教師を依頼するのもいい。そのた めの顧問税理士さんであるはずだ。しかし、活用されている方は周囲を見渡し ても、意外と少ない。余分な費用がかかると勘違いされているのかもしれない が、こちらから積極的に質問するベースがない。求めようとしないと、質問も できない。聞く力は、黙っていても生まれてこない。質問できるためには、予 習復習が大事だ。毎月の試算表も、なにやら紙で送られてくるが、関心がない から、すぐに引き出しに閉まって終わりになる。勿体ない。 <公開しないディメリットは大きい> ●とにかく、従業員は自社の経営状態にまず関心があると思うこと。そして、 いかにして階層ごとにうまく現状を伝えればいいかを、真剣に考える。細かい 数字の資料は経理の担当者が作成してもいいが、最後は自分の声で伝えないと いけない。ご心配は無用だ。あまり詳細に伝えるとまずいと思われるかもしれ ないが、そんなことは杞憂だと思うことだ。公開しないメリットより、公開し ないディメリットのほうが大きい。悪ければ従業員が組織から離れていくとご 心配かもしれないが、伝えないことでの不安のほうが大きい。 ●さすがに、各自の個人ごとの給料まで公開している企業は少ないだろう。各 自の給料まで公開する必要はないが、全体の人件費は総額で伝えるべきだ。人 数が少ないと何となく各自レベルまでわかってしまうかもしれないが、それは 仕方ない。直接の人件費以外にも、人件費に相当する費用もある。外部の委託 業者に支払っている費用で、本来人件費相当のものもある。それも加算する。 とにかく、現実の実態がきちんとわかる数字を自分自身が納得するまで、掌握 する。その過程が大事なのだ。自分のためだ。 ●そして、だんだん説明のレベルを向上させる。まずは現実を理解させる。次 に業績が毎月変動するだろうから、変動したときにどうなるだろうかというこ とも、説明の範囲内だ。季節で大きく売上が変わる企業も多い。外部環境で大 きく左右される企業も多い。そして、春の昇給、夏の賞与。待ったなしで、ど んどん押し寄せてくる。ほっとしたと思ったら、秋の繁忙期になり、そうして いるうちに冬の賞与。いちいちどうしようと考えるより、まずはきちんと実態 を説明する。そうすることが、会社の業績を向上させる間違いない道だと確信 することだ。