**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第589回配信分2015年08月10日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その87 〜管理職教育を考える以前に自社の方向性は共有されているか〜 **************************************************** <はじめに> ●某支援機関から、某社の管理職研修をやってくれないかとのご依頼があっ た。どうも、その企業の代表者の方が某支援機関に依頼されたようだ。先日、 その支援機関の方にお目にかかり、該当企業さんの状況をいろいろと情報交換 した。まだ、代表者の方にもお目にかかっていないので、詳細は分からない が、どうも聞いているといまいち状況がよくつかめない。どうも代表者の方の 依頼の根本的な理由、背景、原因があいまいなようだ。このまま、簡単に「は い、そうですか」とやってしまうと失敗しそうな気がする。 ●以前にも、企業は違うが同じようなご依頼が別の支援機関からあった。そこ で、その窓口担当者と一緒にその企業にお邪魔し、最初2時間ほどいろいろと その企業の状況を教えていただいた。そこで、教えていただいたことをベース に、当方で研修の内容を検討し、プランを書いてみた。それを代表者に見ても らって、これでOKですと納得、了解してもらった。今度は、それを対象となる 管理職の方に事前に会議で説明してもらった。そして、双方が納得したうえ で、管理職研修なるものを数回実施した。 ●初回の研修のときに、再度依頼の目的、背景、ねらい、目指すべきゴールの 姿などを当方から説明した。その時に気が付いたが、あまりそのようなプレゼ ンの内容が理解されていなかったような印象を受けた。全員がそうではなかっ たが、やはり数名の参加者の一部の方は、へえそんなことをするの、へえそう なんだ、というような感想を持たれたようだ。そのように感じるのは、参加者 の顔にすぐに直接現れるからだ。話しているほうは、すぐにわかる。なので、 入り口のところで懇切丁寧に、再度確認のための時間を費やした。 <経営者と管理職には意識のギャップがある> ●成岡も以前に所属していた出版社や、最後に所属した人材系のベンチャー企 業でも、そのような管理職研修を企画したり、自分が受けたり、いろいろな場 面を経験し、それなりの蓄積もある。参加者の立場も、企画する立場も、実際 の講師の立場も、いろいろと経験した。随分勉強になり、いまそれが生きてい るが、なかなか参加者の意識を統一するのは難しい。やはり、それぞれの立 場、背景などが異なるので、ベクトルが統一されない。特に、中小企業では参 加者のキャリア、入社からのいきさつが全然異なる。 ●大卒新卒が一斉に入社する大企業、中堅企業ならいざ知らず、従業員が50名 前後で、管理職が10名以下の組織なら、もっと背景がばらばらだ。入社の動 機、それまでの社会人経験、現在の担当部署へ配属されたいきさつ、経過、理 由などが錯綜し、いろいろな要素が絡み合う。そのような複雑な事情は、当方 ではなかなか分からない。分かったからどうこうということではないが、少な くとも参加者の立場や担当業務が分からないと、何をどのように話したらいい のか、非常に戸惑うし難しい。 ●よって、入り口のところで時間をかけて、該当企業の具体的な業務、組織、 メンバーの特性などをある程度把握して、そこからプランを練らないといけな い。その工程をすっ飛ばして、いきない依頼内容を鵜呑みにしてかかると、と んでもないボタンのかけ違いが起こらないとも限らない。そういう怖さを秘め ていることが多い。つまり、代表者の方と現場の管理職の方々との間での、意 識の相違、ギャップが大きいことが普通だ。しかし、これはあって当然。代表 者の考えていることと、管理職の意識とには、ギャップがあって当然なのだ。 立場が違うから。 <研修に参加するだけでネガティブ> ●代表者はその組織を代表し、経営を司っているのだから、常に考えているこ とは企業の、事業の方向性だ。この会社、組織、企業を将来どのような方向に 持っていけばいいか。この方向性を間違うといけないので、常にそのことに想 いを巡らせているはずだ。足下の業務のことより、近い将来のことを考えてい ることの時間が長いはずだ。成岡のよく言う、「足下2割、来年5割、再来年 以降3割」の大原則だ。しかし、現場の管理職の方は、そうではない。足下が 8割くらいが現実だろう。 ●毎日の業務をいかに円滑に、遅滞なく済ますかが勝負なのだ。だから、朝礼 のあとの当日の段取りの打合せが重要なのだ。特に金曜日は要注意。最近で は、土曜日、日曜日が休みの企業が多いから、金曜日の段取りに齟齬を来す と、来週の前半に大きく影響する。だから、金曜日はぴりぴりしている管理職 の方も多い。そのような企業で金曜日に研修などを企画すると、ブーイングの 嵐になる。しかし、代表者の方はやっていることが違うから、一向に頓着しな い。かくて、日程の決定からミスマッチが起こり得る。 ●管理職研修会などは、全部の管理職を集めるから、さすがに日程は思い付き ではできない。事前に相当周到に準備が必要だ。まず、日程や時間帯の決定で 不満が起こる。自分の部署の都合を全然考えてくれないと、不満を漏らすこと になる。そうなると、研修の入口でネガティブな心理のままで参加することに なる。そうなると、数時間の研修時間は全くの無駄になる。このように、参加 者の意識を統一するのは、研修を主催する代表者の責務なのだが、これがどう もうまくいかない。機会を設ければ何とかなると思っている。 <大事なことは方向性を明確にすること> ●参加管理職の意識を統一するのは、まず会社の今後の方向性を明らかにして からだ。今後の方向性が定まらないのに、管理職だけを集めて能書きのオンパ レードのような研修をやっても、全くと言っていいほど、意味がない。まず、 代表者がそのことを明確に自覚することだ。意外と、ご本人はきちんと表明し ていると思っていらっしゃるかもしれないが、周囲にはそのように伝わってい ないことが多い。言っている、言っていると言われるが、意外ときちんと伝 わっていないことが多い。このことが代表者の最大のミッションなのだが。 ●管理職研修などは、非常にいい機会なのだ。こういう改まった機会に、代表 者から今後の会社の方向を明確に表明してもらう。その方向に今後進むのだか ら、管理職にはこのような行動、このような発言、このような考え方を持って 欲しい。そのための研修なのだ、というのが正しいやり方だ。まずは、トップ からの方向性の表明がないといけない。その方向性がないままに、机上の研修 だけを行っても、全くと言っていいほど意味がない。この入口のところでの、 共有、統一が大事だ。ほとんどの研修はそれをすっ飛ばしている。 ●今回は、この入口に徹底的に拘るつもりだ。そうでないと、貴重な時間をお 互いにつぶして、しかも一定の報酬をもらってやるほうも、気合が入らない。 通り一遍のお題目的な研修は、いくらでもできる。しかし、将来この研修の成 果が具体的に出て、会社の成長、業績の向上につながらないといけない。その ためには、まずは代表者との方向性の確認をする。もし、方向性が不明確な ら、これを機会に明確にすることだ。明確にできないなら、明確にできるまで 研修は先送りすればいい。形式的な研修より、一番大事な方向性を決めること が先決だ。