**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第594回配信分2015年09月14日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その92 〜社長はいつも元気で前向きであることが大事〜 **************************************************** <はじめに> ●中小企業の社長は、野球で言えば監督と総監督、そして球団社長とオーナー を全部兼任しているようなものだ。所有者であり、大株主であり、マネジメン トのトップであり、現場監督でもある。だから、判断の基準がそれぞれ異な り、ときとして相当混乱することもある。オーナーとしてはやりたいが、現場 監督としては難しいという案件も多い。医療機関では、理事長と病院長が意見 が対立し、学校法人では理事長と校長とが一枚岩になれないのと同じだ。とき として、判断がどちらかに偏り、ぶれることもある。 ●朝令暮改は日常茶飯事だ。朝言ったことが、昼ごろにはひっくり返る。小さ なこと、つまらないことで判断が変わることも多い。変身が速いと言えばそれ までだし、決断力があると言えば、そうとも言える。慎重に、慎重に判断を重 ねて、いろいろなデータを集めて、相当な時間をかけて決断するトップは少な い。むしろ、過去の経験、体験に照らし合わせて、自分なりの物差し、自分独 自の判断基準というものが出来ている。それに照らせて比較的早く判断でき る。ときに、間違うこともある。人間のやることだから。 ●それが、いいか、悪いかは、非常に難しい。船長の瞬時の判断で衝突を免れ ることもあれば、大魚を逃すこともある。大きな損失を被ることもあれば、リ スクを取ったことで、あとあと非常に収益力が上がることもある。何がいい か、そのとき、そのときの時代や環境の変化に応じての決断だ。なかなか、雇 われている身分では、このような大きな決断は中小企業では難しい。万が一、 うまくいかなかったり、失敗して大きな損失を被ると、カバーできない。年間 の報酬を半額にしたくらいでは、カバーできない。 <みんなの注目の中小企業の社長> ●かくて、大きな経営上の決断はトップがするしかない。そして、結果につい ても自分で責任を取ればいい。ほとんどの経営判断は、このようになるから、 このプレッシャーをむしろ気持ち良いと思えるくらいの度胸、器量、マインド の持ち主でないと、社長は務まらない。いちいち落ち込んでいたら、いくつ身 があっても持たない。よって、中小企業で業績がいい企業の代表者、トップは 総じて前向きで明るい。いつも、積極的で果敢に攻める。考えるし、行動力が ある。創業から自分でやってきた社長は、なおさらそうだ。 ●多少例外があるのは、2代目、3代目の承継してきた社長の場合だ。特に、 3代目以降のトップは創業の先代を知らない。だから、創業時点の苦労、辛酸 をなめた立ち上がりの3年間、お粥をすすって糊口を凌いだ貧乏な時代。そん などん底の時代の苦労は、話しには聞くが実感はない。そういうトップは、場 合によっては保守的になる。大企業では6年間くらいがトップの任期だから、 その間に業績を落とすことは耐え難い。多くの口うるさいOB連中もいるから、 とにかく自分の任期の間は業績を落としたくない。 ●あの大企業の東芝の不始末も、そのようなトップの思いから来ているのだろ う。業績が悪くなると、社長の機嫌も悪くなる。雰囲気が暗くなり、保守的に なり、後ろ向きになる。大企業はそれでも優秀な人材が多くいるが、中小企業 はその点辛い。社長以外の役員もいることにはいるが、同族一族でない限り、 なかなか責任ある行動はとれない。従って、社長たるトップの存在感が、存在 価値が、俄然大きくなる。そのような立場だから、皆が注目している。黙って いるが、みんな社長の背中を見ている。 <社長は明るい性格でないといけない> ●プレッシャーを心地よいと感じないといけない。だから、性格は前向きでな いといけない。何事にも明るく、積極的にアタックする。失敗もあるが、不成 功もあるが、反省はすれど後悔はしない。学習はするが、後戻りはしない。時 代の風には乗るが、振り落とされることはない。常にマインドは前向きで、 トップのリーダーシップで中小企業は前に進む。そのように行動し、発言し、 みんなを引っ張る。ときに、キャプテンであり、監督であり、ヘッドコーチで あり、総監督でもある。球団社長でもあり、オーナーでもある。 ●そのようなオールマイティの立場だから、皆が発言、行動によって大きな影 響を受ける。そのように立ち居振る舞い、みんなを鼓舞する発言がないといけ ない。会議での独演会はいただけないが、一定程度は社長が会議をリードする 必要がある。発言者の顔をまともに見て、一生懸命その人の発言を理解しよう とする。常に気分が前向き、積極的でないと、そのようなマインドは持てな い。人間が好きでないと、中小企業のトップは務まらない。少々、おせっかい くらいのほうがいい。寡黙より饒舌のほうがいい。沈黙は金ではない。 ●それと、日々健康でないといけない。どこかをケガしたり、どこかが内臓的 に問題があると、雰囲気が暗い。空気が淀んで、雰囲気が暗い会社は相対的に 業績が芳しくないことが多い。外から見ていたら分からないが、社内に常にい る人は、良く分かっている。たまには、周囲の人間を笑わせたり、時間外に居 酒屋に連れて行ったりする。昼のランチを一緒に食べるということも出来る。 その際に、社長の性格が暗いと、だれも昼飯に誘っても、来ない。かくて、社 員食堂で社長が黙々と独りで食事する風景を見たことがある。 <会社で一番元気なのは社長でないといけない> ●昼の社員食堂で独りで食べている社長ほど辛いものはない。ある企業で、そ のような光景を目にしたので、幹部社員に聞いたら、いつもそうですと平気な 顔をしてのたまった。それがこの会社の普通の風景だそうだ。これは、成岡か ら言わせば異常な光景だ。かくて、あとで社長本人に聞いたら、全く意に介し ていなかった。平気だった。みんな自分と昼飯を食べるのを、嫌がっていると 錯覚していた。誰もそばで食べようとしないから、特に気にしていないとのこ とだった。慢性の会社習慣病にかかっている。 ●昼飯の社員食堂で、社長が不人気な企業がどうして業績が良くなろうか。誰 も寄って来ないなら、自ら声をかけて、明るく元気で冗談のひとつも言って、 場の雰囲気を元気に明るくできないといけない。性格やキャラクターも関係す るが、行動を変えればみんなが認める。どんどん自分から声をかけて、昼飯、 ランチに誘う。40分くらいのランチタイムだが、これは結構貴重だ。会議室や 社長室での会話と異なる、素の人物同士で話しができる。日ごろ分からない側 面が垣間見ることができる。この時間は非常に貴重だ。 ●とにかくトップが明るくないといけない。空元気というのもあるが、それで も社長が明るく元気だと、会社の雰囲気が明るい。明るいと、いい考え、前向 きな考えやアイデア、意見が出る。陰気くさいと、みんなが後ろ向きになる。 社長が明るく未来に向いて邁進していると、みんながそのように感じるもの だ。トップの元気がないと、会社そのものに元気がなくなる。嘘でもいいとは 言わないが、一番元気なのは社長でないといけない。そのためには日常から明 るく振る舞う。そうなると自然に業績も良くなる。そう、信じることだ。