**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第596回配信分2015年09月28日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その94 〜定期健診の結果がいいからと油断してはいけない〜 **************************************************** <はじめに> ●会社や企業での定期健診は、毎月の試算表であり、1年に1回の決算書だ。 これは歴然と業績内容が数字で出てくる。学校の通知簿のようなもので、1年 間の経営結果の集大成だ。上場企業はご存じのように、四半期ごとの業績開示 が義務付けられているから、毎学期毎学期の期末試験の結果が公表される。3 か月くらいあっという間に経つから、うかうかしていると何が起こるか分から ない。しかし、中小企業は1年に1回の決算でいいし、まして業績を公開する ことなど、ほとんどない。借入が多く、金融機関への提出が必須の企業は別だ が。 ●試算表をこまめに利害関係者、なかんずく金融機関へ提出されている企業は あまり見かけない。特段の事情で、毎月の試算表の提出やモニタリングを課せ られている企業は別だが、ほとんどの企業は試算表が出来ても、経理のロッ カーに閉まって、あとはほったらかしになる。そこに、人間の身体で言えば何 かの変調の兆しが見えていても、ほとんど気が付かない場合が多い。例外があ るとしたら、過去にそのような経営姿勢で痛い目に遭遇された企業の経営者の 方は違う。数字を見る目つきが異なる。気迫を感じる。 ●以前に在庫がどんどん増えているのに気が付かなかった。気が付かなかった というか、在庫の数字を正確に把握する努力をしなかった。具体的には、毎月 の棚卸作業をしなかった。現実の在庫の数字が分からないまま、何となくおカ ネが足りない、足りないと感じていた。在庫の数字が不正確だから、損益の数 字もいい加減だ。表面上利益が出て、黒字の収益になっているのに、なぜか資 金が足りない。1年に1回の決算期になって、在庫の正確な数字が分かった途 端に真っ青になる。在庫が増えるのは、それだけ資金が寝ているということ だ。 <毎月健診を受けていても大丈夫とは限らない> ●成岡も、15年ほど以前に十二指腸潰瘍で開腹手術をした。胃を3分の2くら い切り、ねじれた十二指腸を切除し、小腸とくっつけた。切除した部分が予想 以上に大きかったので、小腸の前での縫合がかなわず、小腸の背部での縫合と なった。前でダメなら後ろでバイパスしたようなものだ。随分荒っぽい話しだ が、その後は結構元気になった。02月04日に手術して、4週間後の02月末に退 院。すぐに会社に出勤して、05月の連休にはテニスをしていた。さすがに、03 月の京都ハーフマラソンは欠場したが。 ●それまで、定期的に検査をし、胃カメラを飲み、診察を受けていたが、なぜ か突然変調を来した。症状と兆候が表れていたのだろうが、サインを見落とし た。患者本人もかかりつけのドクターも、もっと安易に考えていた。そのうち 症状が改善するだろうと。しかし、一向に症状は良くならないし、挙句の果て にある日曜日の夕方に、とうとう身体が悲鳴を上げた。あとは、一気に緊急手 術となった。もう数時間遅かったら、腹膜炎になり結構やばかったらしい。日 曜日の夕方に担ぎ込まれて、月曜日の朝に緊急手術となった。 ●毎月の試算表が正確に表記されていても、それが経営の正常化に結びつくと は限らない。なぜかと言うと、その数字を見て経営の判断をするのは社長以外 の誰でもない。あるいは、その周辺の経営陣、役員に限られる。試算表は、あ くまでも試算表であり、果たしてそれが現状を正しく表している数字とは限ら ない。例えば、在庫の金額、減価償却費、賞与の積立金などが正しく計上され ているとは限らない。また、財務会計の試算表の数字と、経営上必要な管理会 計の数字とは、異なる。 <万全ではない診断結果> ●経営者に必要なことは、税理士さんが計算し提出する財務会計の定期健診の 数字を、自分なりに会社の経営状態を正確に表す数字に加工することだ。その 加工もせずに、単に試算表の定期健診の数字だけを見て、安心してはいけな い。もっと最悪は、毎月の試算表の数字すら出てこない企業がある。税理士事 務所は、単に記帳をしているだけで、経営上の参考になる数字の資料は、毎月 は出てこないという。よく、そんな状態で経営していると呆れるが、一向に意 に介さない。それが、当然と思っている。 ●たとえ、毎月の定期健診をしていても、今回の川島なお美さんのように、ガ ンがタイムリーに見つかるとは、一概に言えない。定期健診は年に1回だろう から、その直後にガンができたら、1年後でないと見つからない。まして、1 年後に定期健診をして、見つかるとは限らない。画像に映っていても、ドク ターが見落とす可能性もある。ガン細胞が1年後に見つかっても、手遅れの場 合が多い。検査は万全ではないし、年に1回の検査では不十分なのだ。では、 毎月検査を受けるのか。そんなことは、とても現実的ではない。 ●成岡が以前に所属していた印刷会社でも、毎年07月に健康診断を行ってい た。Aさんはその年の検査では特に異常はなかったが、翌年の検査で肺に陰り があるという診断が出て、二次検査を行った。その結果、大学病院での精密検 査を受け、診断は肺がんとなった。亡くなってからの病理検査で、がん細胞は 11月ごろに出来たという診断が出て、家族の方も納得されたが、一時誤診と言 う疑念がぬぐえなかった。それくらい、定期健診で見つかるのは、難しい場合 がある。万全とは言えない。 <経営者自身がジャッジできること> ●大事なことは、自分自身でジャッジできるようにすることだ。毎日、毎日一 定のリズムで規則正しい生活を送るように心がけていると、何か少しの異常で も気が付く可能性が高い。成岡も毎朝最低30分はランニングしているから、お かしいと非常に良く分かる。もちろん、前日遅くまで飲んでいると翌朝の調子 は必ずしも良くない。しかし、それはアルコールが残っている影響だと、自分 でわかる。そうではなく、おかしいのは、ランニングの疲労度が違う。足の重 たさが違う。呼吸の苦しさが違う。とにかく、足が進まない。上らない。 ●そういうときは、まず五臓六腑に異常がないかを疑う。血液検査などしなく ても、朝の30分のランニングで、十分健康状態が分かる。極めて簡単なバロ メーターだ。経営も同じ。自分自身の判断基準の数字のキーポイントを決めて おくことだ。肝臓なら・・・、すい臓なら・・・・、腎臓なら・・・・。ドク ターなら必ず判断のキーとなる数字をウオッチしている。経営も同じだ。自社 の経営状態を診る指標は何か。売上か、利益か、在庫か、売掛金か、現預金 か。何が、自社の経営数字のキーなのか。 ●まして、定期健診を受けない企業も多い。年に1回の決算だけで十分と思い 違いをしている経営者もいらっしゃる。それで健全に経営できていたら、ご同 慶の至りだ。少し努力をすれば、少し手間をかければ、少し時間をかければ、 毎月毎月きちんと経営上の参考になる数字が出てくる。それを、さらに自分自 身が納得できる数字に改編しないと、役に立たない。せっかく定期健診を受け ているのに、結果を活かしていない。要するに、自覚が足りないということ だ。誰も、それはやってくれない。自分自身がやらないといけない。それが社 長のミッションだ。