**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第597回配信分2015年10月05日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その95 〜毎日正しく反省していると会社は成長する〜 **************************************************** <はじめに> ●有名な『論語』に、「吾日三省吾身」とある。ここから辞書で有名な出版社 の「三省堂」という名が出たという。この、「吾日三省吾身」という意味は、 学者やいろいろな方の解説によると、一日に3つ反省をせよと。「人」、「友 人」、「勉強」になるそうだ。孔子の高弟、曽子の言葉として、「吾、日に三 つのわが身を省みる。人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交わりて信ならざ るか。伝えられて習わざるか」というのが本文だ。なかなか難解だが、一日を 振り返り、その日にあったいろいろなことを思い起こすべきだと。 ●かの偉大な経営者である松下幸之助氏は、就寝前の1時間にこの一日の反省 を毎日継続していたそうだ。だから、床についてもすぐに寝ない。成岡のよう に日中外で動き回っていると、戻って少し仕事をしてアルコールをいただく と、すぐに眠たくなる。床についたら、おそらく10秒くらいで寝入ってしまっ ているはずだ。そんな人に1時間も寝ないで、じっとその日の反省をすること など、夢のまた夢。とんでもないと思ったが、さすがに松下幸之助氏は、その ように毎晩床についてから、反省を継続していたという。なかなか真似できな い。 ●1時間は無理にしても、床についてからやらないにしても、日々起こったこ とに対する反省は、しようと思えば誰でもできる。大事なことは、それを継続 して行うことだ。おそらく、何かのことをきっかけにしてそのような習慣が日 常化したのだと思えるが、これを続けることは一種の能力であり、才能だ。簡 単に継続する努力だけでできるものではない。何か、反省をしているうちにひ らめいたものがあって、それが後世に非常に大きな影響を与えた。そのこと が、のちの人生に大きな力となった。そんな経験をされたからだろう。単にい いからといって、続くものではない。 <同じ間違いを繰り返さない> ●反省と言うと、修身の教科書みたいに倫理観に満ちているイメージがする が、決してそうではないらしい。その日の一日を思い起こして、まずかったと ころを思い出し、明日はこのようにやってみよう。うまくいったことも思い出 し、明日はこうやったらもっとうまくいかないだろうか。面談した人を思い出 し、明日はすぐに礼状を書こうとか、とにかく今日一日の出来事を振り返る。 そして、子細なことでも大きなことでも、積み重ねることで改善がなされ、進 歩がある。どうも、そのように解釈して日々研鑽を積まれたという。 ●もうひとつ大事なことがある。愚かなことは、間違いをすることではなく、 同じ間違いを繰り返すことだと書いてある。なるほど、これは日々常に遭遇す ることだ。全く同じ間違いは少ないにしても、同じパターンの間違いやミスと 言うのは、日常茶飯事に起こっている。準備段取りの手抜きやミス。事前の調 べや調査が不十分での間違い。思い込みや勘違い。連絡の不行き届き。徹底し ていなかったことでのトラブル。忘れ物、うっかりの間違いなど、挙げればき りがない。人間とは、そもそもミスや間違いをする動物なのだ。 ●だから、一覧表や工程表を作って、極力ミスを減らそうとする。確認リスト や点検表を作り、徹底する。それでも、慣れてくると手抜きが起こる。横着に なる。両手でやればいいところを、横着して片手でやってとんでもないミスや トラブルの原因になる。いったん、床にものを置いて両手で作業すればなんと いうことはない動作を、荷物を持ったまま左手でやって大けがをする。急いで いたから、そのままのスピードで黄色信号を無理に交差点に突っ込んで事故を 起こす。すべて、これを二度と起こさないと断言できない。そういう弱さがあ る。 <成功体験のトラウマから抜け出す> ●成岡はよく、後悔はするな、反省はせよといい続けている。自分が100%で きているとは言い難いが、そういう風にマインドを持ち続けようと決めてい る。だから、講演のときによくこのフレーズを申し上げている。深く、長い、 それこそ過去のトラウマ的な経験や体験からそのように申し上げているので、 言葉に説得力があるようだ。たいてい、数名の参加者の方がメモされる。何 か、過去の経験体験で、心に響くものがあったのだろう。聞いている顔の真剣 さが違う。急にはっとされてメモされる。そういうものだろう。 ●後悔は悔やむこと。悔やんでも何も進歩もないし、改善もない。ため息が出 るばかりで、反省のかけらもない。多額の金額を損したとか、どぶに捨てたと か、そのことだけを悔やんでいる。あとで悔やむなら、先に手を打っておけば いいのに、それはやらなくて後悔をしても仕方ない。大事なことは、先述のよ うに同じような失敗、過ちを二回と繰り返さないことだ。しかし、人間はどう してもそのような失敗を繰り返す。ひとつは、いやなことはすぐに忘れようと するからかもしれない。記憶の彼方に葬り去ると、一時的には気分が良くな る。 ●もうひとつの理由は、過去の間違った成功体験のトラウマから抜け出せない ということだろう。成功体験は悪くないが、その理由を自分の実力だと過信す ることが問題なのだ。たまたま、その時、その時代の風がそこに吹いていたか ら、たまたま機会をうまくとらえてヒットしたから、たまたま運よく何かの フォローの風が吹いたから。だいたい、そのようなある意味ラッキーなどが あったことが幸いし、成功した。しかし、二度と同じことは起こらない。それ を自分自身の力だと勘違いする。だから、間違いを起こす。謙虚になればい い。 <反省とはまたねぎらいでもある> ●反省することで、自分自身への「ねぎらい」の意味もあると書いてあった。 反省とは、また別な言葉で言えば、その日一日の自分に対しての「ねぎらい」 なのだ。あれはよかった。よく頑張った。あれは、よくなかった。次は頑張ろ う。反省する時間は、自分に対するねぎらいの時間でもある。そう考えれば、 ゆったりとした心持で、一日を振りかえることができるに違いない。反省し て、次を考える。次を考えて、実践し、また反省して、次を考える。人間は、 こうして松下幸之助と言う人は、成長、向上していったのであろう。 ●反省すると「感謝の念」が湧いてくるという。あの人のおかげであれがうま くいった。あの人が力を貸してくれたから、ことがスムースに運んだ。あの人 が手を貸してくれた、あの人のあの一言で目が覚めた。あの人があそこで手 伝ってくれなかったら、おそらくうまく行ってなかった。そういうことが、振 り返ると山ほど出てくる。そこで、感謝の気持ちを持ち続けると、なぜか次も うまくいくことが多い。その感謝の気持ちを抱き続けるには、日々に反省を し、振り返ることで、自分の心の中にそういう習慣ができるという。 ●ここまでくると、達人や仙人のような気分だが、経営者と言うより哲学者的 なマインドだ。ここまでの境地には、なかなかなり得ないが少しでも近づくこ とは可能だろう。42キロのマラソンも、スタートの一歩からだし、富士山への 登山も一歩からだ。まず、前に足を踏み出さないと何も起こらないし、始まら ない。反省がしっかり出来ている企業や会社は、強い。まず、トップの経営者 がそのように自覚し、実践することだ。結果はゆっくりしか出ないかもしれな いが、日々継続し、改善し、成長することが大事だ。実行した人にだけ結果が ついてくる。