**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第604回配信分2015年11月23日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その2 〜学卒新卒で入社して認識した社会の仕組み〜 **************************************************** <はじめに> ●前号では32歳の時の転職のいきさつを書いたのだが、いろいろと反響をいた だいた。32歳での思い切った転職は、今でこそこうやって冷静に過去を振り返 えれるが、当時は全く過去のキャリアを捨てたのだから、逆に必死だった。成 功しなければ、何のために今までがあったのだろうか。苦しい青春時代を経 て、ようやく社会人になり一人前を目前にしてのキャリアチェンジ。これが成 功しないで、何になる。今まで一生懸命努力してきたことが、水泡に帰するこ とになる。それだけは絶対に避けたい。 ●10年間の製造メーカーでの現場体験、経験だったが、非常にいまになってそ れが生きている。今回は、22歳で社会に飛び出し、32歳までの10年間の製造 メーカーでの社会人経験を振り返る。まず、入社してびっくりしたのが、歴然 とある学歴によるコース人事管理。我々学卒(大学卒)は大学のレーベルに関 係なく、一律学卒(修士は修士卒、博士は博士卒)というレーベルで管理され る。修士卒は学卒より2年次上級。博士卒は学卒より5年次上級。そういうヒ エラルキーが歴然と存在していた。 ●どこの大学を出たかは関係ない。社会人になれば、どこの大学を出たかよ り、何ができるかだ。よって、学卒は全部学卒、高卒は高卒という学歴社会に なっている。今はどうなっているか知らないが、いったん入り口ではそのよう な区別が歴然と行われている。従って、日常を動かしている現場の人たちは、 大半が高校卒だ。それも、製造メーカーだから工業高校卒業者が多い。機械、 電気、化学など、当時の工業高校のレベルはそんなに劣らない。大学卒の我々 とは、確かに違いはあるが、経験では勝っている。 <現場三交代勤務に入る> ●まず、入社して1か月間の修学旅行のような各事業所を遠足のようにめぐる オリエンテーションが終わり、事業所にそれそれが配属された。成岡は工学部 の化学系学科卒業だから、必然的に中央研究所か開発研究所、または工場勤務 となる。文系の人は営業などがある東京、名古屋、大阪、北陸などに配属され る。非常に堕落した理由から、成岡は愛知県の豊橋市にある事業所への配属を 希望した。なぜ豊橋市かと言うと、新幹線が停まる駅があり、実家の京都に一 番近かったからだ。それが堕落したという意味だ。 ●そして5月の連休中に荷物をまとめ、布団を独身寮に送り、連休の最終日に 独身寮に入ることとなる。そして、連休明けから配属された部署に初出勤と なった。まず、大卒新入社員を待ち受けているのは、現場実習だ。現場実習と いうのは、製造業の三交代でやっているものづくり現場で、それこそ本当の三 交代勤務を経験し、現場感覚を身に付けることだ。そして、製造業のものづく り現場のなんたるか、その思想、考え方、管理手法、労務環境などを将来のた めに学習することだ。現在もやっていると思うが。 ●製造業の三交代勤務というのは、経験された方はお分かりと思うが、非常に よくできたシステムなのだ。まず、全体を4班に分ける。配属された部署はだ いたい1班が25名くらい。総勢交代勤務で100名だ。それに日勤者ばかりの部 署があり、それが30名くらい。まずは、その交代勤務のどこかの班に入る。班 の責任者は当時の名称では作業長。だいたい45歳くらいの20年以上のベテラン だ。その下に班長が3名くらい。そして、リーダー達が5名くらい。そして一 般作業員が15名くらい。みんなまだ若い。 <よくできた三交代システム> ●ほとんどが工業高校を卒業している。学科は化学や機械、電気など。高卒で すぐに入社し、5年くらいでリーダー、10年くらいで班長。そして、35歳くら いから管理職登用試験というのに合格すれば、さらに上級の管理職になれる。 当然、職能資格等級制度があって、中卒1級職から始まりずっと何段階もラン クがある。学卒新卒者は5級職位に位置づけられる。さきほどの各班の作業長 クラスは、この5級職位の少し下の位置づけになっている。つまり、学卒新卒 者は入社の時点で、20年以上のベテラン社員より等級は上位なのだ。 ●そんな交代勤務の班の中に、いきなり我々は掘り込まれる。そして、現場の 実務は当初はやらないが(逆に危なくてやらしてはもらえない)、作業長補佐 のような立場で現場の仕事を実習する。実習しながら、作業の問題点や改善点 などをくまなく摘出したりする。つまりスタッフ的に当初は動くことになる。 そして一定の時間が経過して、現場の仕事の要領が呑み込めたら、一部の実際 の業務を担当したり、作業長の完全にパートナーとして補佐の業務をする。改 善や実験などの担当をする。 ●以前にも書いたことがあるが、交代勤務は朝勤が07時〜15時、夕勤が15時〜 23時、夜勤が23時〜07時となっている。三交代勤務とは、この朝勤、夕勤、夜 勤をそれぞれ3日間やって、1日休み。そして1日の休日後次の勤務に入る。 つまり、朝勤を3日間やり、15時にあがって翌日まるまる1日休み。そして次 の日の15時から夕勤に入り3日間勤務する。そして3日目の23時に終わり、翌 日は休み。そして休みの翌日の23時から夜勤を3日間する。勤務明けから次の シフトに入るのにきっちり48時間がある計算になる。 <まず現場に受け入れてもらうこと> ●朝勤の間は15時に勤務が終わるから、夕方から夜の時間が結構使える。朝は 07時からなので少々早いが、そう問題にはならない。夕勤は15時から23時まで なので、午前中が有効に使える。23時に終わってから少々夜更かししても、翌 日が15時だからそうしんどくない。問題は、23時からの夜勤で事前になかなか 寝られない。この夜勤をどううまく乗り越えるかで身体のリズムを作らないと いけない。しかし、各班のメンバーは入社以来ずっとこのリズムの生活をして いるから、いろいろとノウハウがある。 ●25名くらいの45歳くらいのトップから18歳の高卒新入社員も交じる現場に掘 り込まれて、まず一番大事なのはメンバーに受け入れてもらうことだ。学卒と いう高いレッテルをそのまま持ち込むと、全くうまくいかない。さりとて、メ ンバーと同じ目線では社員等級の重たさがない。学卒新卒者が5級職位という のは全員が周知の事実であり、給料的には相当メンバーより高い。きちんとし た労働組合があり、職能資格等級制度の職能給も公開されているから、歴然と ある給与格差は周知の事実だ。 ●25名の三交代勤務のメンバーとは長期間、同じシフトで勤務するから、当然 休憩室でも一緒、食堂でも一緒、申し送りも勤務日誌も一緒に書く。必然的に コミュニケーションを図り、意思疎通を行い、業務の連絡やいろいろな点検項 目なども共有する必要がある。まず、ここで学卒新卒者が直面する大きなハー ドルが、この人間関係、コミュニケーションの円滑な構築なのだ。いきなり社 会に入り、いきなり高卒者ばかりの現場に掘り込まれ、いきなり大卒という レッテルのもとに、それなりの結果を出さないといけない。この現場経験は、 あとで非常に役に立った。どうしたかは、次号以降に。