**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第624回配信分2016年04月11日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その22 〜初めての海外ロンドンでまずは失敗の連続〜 **************************************************** <はじめに> ●ドタバタした初の海外40日の出張準備も何とか無事に終えて、1980年10月10 日新幹線で愛知県の豊橋市から東京に向かった。今回の長期の出張メンバーは 3人。名うてのS部長、2回目のK課長、そして初めての成岡。K課長は一足先 行して2日前に単独でロンドンに出発。S部長と成岡が追いかけてロンドン へ。そして、ロンドンのホテルで合流するという段取りだった。S部長と成岡 は、東京で落ち合い、同じフライトでロンドンへ成田から出発するという日程 だ。成岡が初めての海外なので、S部長が気を遣ってくれたのだろう。 ●東京駅からタクシーで箱崎のTACTへ。待合室で待っているとS部長が大きな キャリーバッグと共に現れた。さっそく、そこからレクチャーが始まった。ま ず、成岡のキャリーバッグを点検。アムステルダムのAKZO本社である InternationalMeetingの国際会議に使う資料、スライドは全部手荷物のカバン に移すことを命じられた。万が一、キャリーバッグが迷子になっても、その資 料だけは今回の出張で最も大事なものだ。これは絶対に預ける荷物に入れては いけない。もしかしたら、キャリーバッグは迷子になることもある。 ●次にコートを取り出すように命じられた。10月10日は当時体育の日の祭日。 まだ、日本は秋とはいえ相当暑い気候だ。薄手のコートを入れておいたが、そ れを機内に持ち込むようにとのことだ。どうしてですか?と聞くと、フライト はアンカレッジからソ連の上を飛んでヨーロッパに行くという。「もし、仮に シベリアの上空でトラブルになり不時着したら凍死する。コートは絶対に着く まで手放すな。」とのお達しだ。同様に、トラブルに備えて、水とクラッカー のような非常食を持ち込むように言われた。 <いきなり戦闘モードを教えられる> ●何となく、初めての海外出張で浮き浮きしていた気分が一気にしぼんで、突 然の戦闘モードに変わった。「いいかね、成岡君。これから何が起こるか分か らない。無事に着けばいいが、トラブルは付き物だ。何が起こっても対処でき るようにしておかないといけない。」と、いきなり戦闘心得のようなお説教が 始まった。飛行機に搭乗する前からこれでは、この先思いやられる。荷物のカ ウンターで計量して、荷物を預けてから、バスに乗り込んだ。「ここからは外 国だよ。」とS部長が言う。確かに、座席の間隔が外国人仕様だ。 ●成田空港に着いて、出国手続きを終えて、待合室に行く途中に免税店があっ た。当時、成岡は煙草を喫っていたので、日本のたばこはここでしか買えな い。1カートンとホテルで飲むお酒を買っておくように言われて、買い込ん だ。これが、あとで結構面倒な荷物になることは、その時点では気が付かな かった。そして、待つことしばし、ようやく搭乗手続きが始まり、機内へと乗 り込んだ。座席は、通路側でS部長とは離れ離れの席を取るように言われた。 このロンドンへ行くまでの間に、隣の外国人と会話に慣れるのが目的なのだ。 ●隣が必ずしも外国人とは限らないが、やはり英語に慣れておくことは大事な のだ。機内の案内もなるべく英語で聞くように言われた。もう、ここからト レーニングが始まっている。機内食の食べ方や、飲み物のオーダーの仕方など も、いろいろと教えてくれた。さすがに、フルブライト留学生で英語は達者 で、海外生活も百戦錬磨。こちらは、田舎の工場で6年間作業服と汗にまみれ て働いている技術屋とは、海外と言うことでは雲泥の差がある。これは、とて つもなく大変だと思うようになり、逆に徹底的に教えてもうらことを決め込ん だ。 <ホテルでトラブルから始まった> ●アンカレッジでいったん機外に出て休憩室でドリンクのサービスがあり、改 めて給油して乗り込んでから、ソ連の上を通過してヨーロッパに到着した。ロ ンドンのヒースロー空港に着いたのは、午前5時。窓からロンドンの灯りや空 港の照明が見えた時は、さすがに初めて海外に来たんだと、感激もし緊張もし た。S部長からは、ロンドン、ロンドンと何べんもエルの発音を練習するよう にオーダーが出ていた。そして、無事にロンドンのヒースロー空港に到着。さ あ、初めての入国審査と手荷物検査だ。 ●入国審査も無事に通過し、意外なことに手荷物検査はなかった。朝の5時な ので、職員がまだ多く出ていない時間帯だったからだろうか。こんな簡単に入 国ができるなら、拳銃でも麻薬でも持ち込めるなあと、バカなことを考えた。 空港の両替所でドルをポンドに少し両替して、空港から有名なロンドンの黒塗 りのタクシーに乗り、目指すホテルに直行した。ホテルで先行して到着してい るK課長と落ち合った。そしてチェックインして部屋に入り、2泊の予定だっ たので、いったん荷物を簡単にほどいた。そこにS部長から内線電話で集合が かかった。 ●慌てて部屋に出たのはいいが、ルームキーを部屋に置いたままだった。オー トロックなので、自動的にドアがロックされた。さあ、まずここで最初のトラ ブル。廊下にいたスタッフに英語で声をかけたが、全く通じない。しかたない ので、いったん手ぶらでS部長の部屋に行き、打合せを終えてから、教えられ た通りの英語で用件を伝えたら、見事に伝わった。やはり、コツがあるんだ と、そのとき悟った。ボーイが開けてくれたが、いつまでも帰ろうとしない。 怪訝な顔で待つこと数分、ようやく帰ったが、チップを渡すことを全く気付か なかった。 <寝ること、食べること、出すこと> ●もう、頭が正常に回転しない。時差もあったし、慣れない海外で初めてのホ テルでのトラブル。英語がこれほど通じないのに、愕然とし、一気に自信がし ぼんでしまった。何やら、やることが手に着かない。そこに、S部長が朝ごは んを食堂で食べようとお誘いがあった。そうか、朝飯も食べていなかったんだ と、そのときようやく気が付いた。食事をしたら、少し落ち着いた。当日は夜 の先方との会食まで用事はなかったから、K課長とロンドン見物に出かけた。 そこで、またトラブルを引き起こした。カメラを地下鉄に忘れた。 ●ロンドンの地下鉄は、東京並みに相当複雑だ。K課長と一緒に出掛けたのは いいが、切符を買ったり乗り換えを確認したり、頭が日本語と英語で混乱し て、そこに時差ボケが加わり、相当混乱していた。寝ぼけて、うとうとして、 降りる駅に着いたところで、はっと気が付いて慌てて降りた時に、座席にカメ ラを置いたまま降りてしまった。さあ、どうしていいか分からない。とりあえ ず、駅の事務室に行って落し物の話しをしたが、なかなか通じない。手続きは したが、100%諦めたほうがいいだろうと、観念した。 ●かくて、成岡の最初の海外出張は自分のカメラなしになった。ロンドンで買 うことも考えたが、ばからしいのでやめた。K課長のカメラにお世話になると 決めて、もう気分をリセットすることにした。最初から、いろいろと躓いて、 トラブル続きの最初のロンドンになった。これは、これからえらいことになる ぞと、気を引き締めた。相当なストレスがかかり、精神的に相当疲れた。その 晩の接待会食の記憶もあまりなく、夜は枕も異なり、時差もあって、ほとんど 寝られなかった。S部長から言われた心構え「寝ること、食べること、出すこ と」が大切なことが身に染みて分かった。