**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第625回配信分2016年04月18日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その23 〜若くして海外に2回の長期出張で鍛えられる〜 **************************************************** <はじめに> ●初めての1980年10月からの海外出張の、まず最初の入国地のロンドンでの数 回の失敗は、その後の40日の行程への緊張感を、いやがうえでも強くした。や はり、時差や初めての体験の連続なので、どうもリズムがうまくいかない。数 日後に国際会議での20分のプレゼンを控え、これではいけないと、ぐっと気分 を新たにした。初めて見る海外、初めて体験する外国での生活、見るもの、聞 くものが全部新しい。その緊張感と興奮がないまぜになって、どうも平時の心 境でいられない。地に足がついていない。 ●ロンドンで2日間過ごしたのは、成岡が初めての海外出張と言うことでのS 部長の配慮だった。いきなりぶっつけ本番で、大舞台の国際会議は少々荷が重 いと配慮してくれたのだろう。この2日間で海外での過ごし方も、少しは慣れ たのが非常に役に立った。例えば、レディーファースト。日本では全く生活の 中で意識しないが、海外では幼少のときから身についた生活習慣だ。エレベー ターに乗るときも、降りるときも、ご婦人方が優先なのだ。これが、さっと切 り替えてできない。一度大恥をかいたことがある。 ●ホテルやレストランのチップも難しい。通貨の切り替えへの対応。当時はま だユーロがなかったので、国境を越える都度通過を変えないといけない。数か 国行ったり来たりした段階で、頭が混乱してきた。イギリスポンド、オランダ ギルダー、スイスフラン、フランスフラン、ドイツマルク、イタリアリラなど がごちゃごちゃになり、買い物や飲食の都度混乱する。ホテルの支払いはトラ ベラーチェックの旅行小切手がドルであり、これは簡単だが日常の細かい買い 物は自国の通貨で行う。小銭入れが大変だ。 <長時間の接待会食も仕事> ●接待を受けた際の会食の作法もやっかいだった。正式なディナーの前に、別 室で食前酒を飲んでの談笑タイムがある。そして、全員がテーブルに着席して のメニューを見てのオーダー。これがまた何が書いてあるのか、よく分からな い。コースではなく、各自が好きなものをひとつずつオーダーするので、前菜 から始まりスープやメインディッシュを何を頼んだか、覚えていなければなら ない。最後のデザートと飲み物、そして葉巻のサービスまで、うんざりする2 時間のディナーが延々と続く。 ●先方が役員、工場長、工場幹部など5名くらい。当方が、S部長、K課長、成 岡。先方のメンバーに挟まれて、適当な会話をしないといけない。ドイツ人の 英語はまだ分かり易いが、イギリス人やアメリカ人の英語は、結構聴き取りに くい。そして、ときどき若い成岡に会話を振ってくる場面がある。文化、経 済、日常の家庭生活、趣味、スポーツ、娯楽、観光など、話題がどんどん変わ るから、ついていくのも大変だ。立派な食事が運ばれてきても、食べているよ うな気分にならない。いつも会話についていくのに必死なのだ。 ●2時間のディナーが終わったら、また別室で別のアルコールを注文しての、 ディナーアフターがある。もう、この時点で相当にお疲れ。立っているのもし んどくなるが、先方は全員が立ったままでの会話を楽しむ。ようやく終わっ て、30分くらいタクシーに乗ってホテルに帰ったら、それからミーティングが S部長の部屋で始まる。その日の報告、明日の準備段取り、集合時刻と持参す るものの確認。そして、部屋に帰ってから、当日のレポートを書く。だいた い、就寝は夜中の2時くらいになる。間に合わないときは、朝早く起きてレ ポートを書く。 <週末は幹部の自宅で会食> ●もし、翌日が移動する日程なら、これは大変だ。荷物を朝まとめて、チェッ クアウトしないといけない。朝ごはんの時点では、先にチェックアウトを済ま せる。時間によっては、フロントが相当混雑するので、いらちなS部長は必ず 朝食前にチェックアウトを済ませるようにオーダーする。朝食も半分打合せの 時間だ。そして、だいたい8時くらいに先方が差回した車でホテルに迎えに来 る。そして8時30分くらいには先方の工場や研究所に到着。まず、昨晩書いた レポートのコピーを取ってもらって、本文を東京の本社に国際郵便で送っても らう。 ●そこに昨日先方からもらった資料やサンプルを同封する。ずっと持ち歩くと 大変なので、行く先々でこのように毎日毎日東京の本社に郵便で送る。なの で、本社の住所を書いたラベルと大きな丈夫な封筒をたくさん持ち歩いてい る。この毎日毎晩のレポート作成、郵送も大きな仕事なのだ。疲れて半分寝て いるような状態のときでも、毎日毎日書かないといけない。次の訪問地へ国境 を越えて車で移動するときなど、泥のように眠っていることも多くあった。そ れくらい体力を消耗し、気力も疲れてくる。 ●週末を開放してくれたことは、ほとんどなかった。先方も気を遣って、半分 観光を兼ねたツアーや見学を組んでくれた。土曜日の午前中にホテルに迎えに 来て、市内や郊外の観光地に案内してくれた。ランチを一緒にして、午後もツ アーして夕方ホテルに戻る。そして、よくあったのは幹部の自宅で夕食を一緒 にする歓迎方式だ。そのときは、S部長は工場長の自宅、K課長は専門部署の幹 部宅、成岡は担当マネジャーの自宅などへ分散する。要は、一人で行かないと いけない。気楽な面もあるがずっと気が抜けない。 <アメリカではほっとする> ●そのときのために、お土産や話題作りのための家族の写真を持っていった り、山ほど工夫をしないといけない。自宅に招待されるのは相当親しい間柄 で、先方の家族も一緒に食事をする。さすがに週末のツアーでは夜の報告書作 成はしないが、もう一週間の緊張と疲れがピークになっていて、夜はほとんど 外に出ることはない。ホテルの周辺を散策する余裕など、皆目なかった。そし て、日曜日に列車や飛行機で長い時間の移動を行う。また、荷物をまとめて数 時間の移動をする。通貨も切り替える。ホテルの精算もする。 ●途中で大陸間の移動がある。20日間くらいヨーロッパにいて、次はアメリカ 大陸に渡る。大西洋を飛ぶ移動になる。このときは、相当緊張した。狭いヨー ロッパなら、まだトラブルがあっても何とかなるが、アメリカに行ってしまっ てからの事後のトラブルは収拾がつかない。それと、アメリカの入国の際に は、相当厳しい手荷物検査がある。下手にいろいろなものを持参していて、 引っ掛かると相当に時間を食う。次のトランジットのフライトに間に合わなく なると大変だ。一度、ロスアンゼルスの空港で手荷物検査でトラブルに会った こともある。 ●アメリカでは2週間くらい数か所をめぐるが、一番ほっとするのは英語が通 じることと、水がフリーで飲めることだ。TVを見ても早口の英語だが、雰囲気 は何となくわかる。南部のジョージア州やテキサスなどの英語は、巻き舌でべ らんめい調なので、日本語の薩摩弁くらい理解できないが、それでも英語なの でましだ。それと通貨がどこに行ってもドルで通用する。ただし、州によって 規制が全然異なるから、週末にアルコールが販売してない州もある。それが合 衆国の合衆国たるゆえんなのだ。行ってみて、初めて分かったことがたくさん あった。 次回でこの40年の社会人生活の軌跡をたどるシリーズの「三菱レイヨン編」は いったん終了し、また新しいシリーズを始めます。