**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第630回配信分2016年05月23日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その28 〜移籍した中小企業で経験したシリーズ:中途採用から新卒採用に方針大転 換〜 **************************************************** <はじめに> ●販売子会社の中途採用の会社説明を、いきなりぶっつけ本番で1時間させら れたが、これが過去の経験が役立ったのか、非常にうまくいった。担当のM常 務の覚え目出度く、京都の本社に戻っての社長への報告は非常に高評価だった そうだ。かくて、次回の募集説明会からは、この困難な中途採用の募集、面 接、採用、教育の業務の大半が成岡へ回ってくることになった。前号にも書い たが、当時の拠点は、東京、京都、大阪、広島、福岡。そして、その後、これ に札幌、仙台、名古屋が増えることになる。まさに、全国区だ。 ●会社説明会は、午後からの半日だが、1週間後の二次面接、また最後のク ロージングになる最終面接などが多方面で日程が重なることになる。また、説 明会当日、現業の業務の都合でどうしても参加できなかった人が、特別に単独 の面接を希望してくる場合がある。ほとんどは前職までの履歴書、職務経歴書 でお断りするケースが大半だが、なかには「これは!」と思える人も、たまに はいらっしゃる。そういう方には、逆に万難を排して会ってみないといけな い。こういうオプションの日程が割り込むと、相当に忙しい。 ●転職して6か月間の実習が終わってからは、この募集、面接、採用、受け入 れでほとんど各地を飛び回っていた。京都の本社には、たまに会議の際に数日 在席するくらいだった。転職しての歓迎会はしてもらったが、あまり縁のない 部署の人は、ほとんど顔を合わさないから、入社したことを知らない人も結構 いたはずだ。廊下ですれ違っても、こちらも分からないし、先方も気が付かな い。かくて、しばらくは知る人ぞ知る存在だった。しかし、スケジュールは厳 しく、移動も新幹線あり、飛行機ありだった。相当、移動には慣れた。 <面接の後はアルコールでの人間関係を> ●前日、神田にあった東京支店で募集、面接を行い、20名くらいだと夕方遅く までかかる。20名でおひとり15分くらいかかると、結構な時間が必要で終わっ てからの各自の評価を再度行い、もう一度1週間後くらいに呼び出す人を決め る。逆に、今回で縁のなかった方には、お断りの通知を出す段取りをしないと いけない。連絡は、ほとんど手紙で行っていたが、家族に内緒で面接に来る人 もいて、連絡方法には神経を使う。自宅に通知を郵送して、奥さんが先に開け て見てしまい、家族夫婦でもめたというトラブルも経験した。 ●通知の手紙の発送は京都の本社の営業事務担当の女性スタッフにお願いする のだが、特に遠方で面接したときの社内での報・連・相には、十分細心の注意 を払って行う。連絡ミス、漏れ、手配段取りの抜けなどがあると、採用面接は 場合によっては他人の一生の運命を左右しかねない一大事なので、ことは慎重 に運ばないといけない。当時は、パソコンという洒落た道具もなく、ほとんど 電話かFAXでやっていた。結構面倒な作業で、面接終了後、疲れているが、こ れだけは当日にきちんと終わっておかないといけない。 ●東京の場合は、その晩はほとんど神田のビジネスホテルに泊まり、夜は必ず 社内または社外の人と会食することにしていた。やはり、創業社長の義理の10 歳違いの弟という立場の人間が、縁あって会社に入ったのだから、ある程度そ ういう眼で見られるのは、覚悟の上だ。だから、まず社内の先輩や上司、同 僚、年下の人たちと円滑な人間関係を構築しないといけない。やはり、一番 手っ取り早いのは、メシを食べて酒を飲むことで、成岡は結構アルコールはい けるから、これはありがたかった。相当、飲食での出費はかさばったが。 <中途採用は受け入れに手間がかかる> ●前の日に夕方遅くまで面接して、夜は会社の人か、社外の知人と飲食を機会 をなるべく持つことを繰り返した。32歳で転職し、出版業界とは全く無縁の世 界からの転職なので、なるべく早いうちに人脈ネットワークを築いておかない といけない。かくて、連日とは言わないが、ほとんど毎日に近いくらいアル コールのお世話になっていた。そして、翌日の朝一番の飛行機で羽田から福岡 に飛び、博多支店で午後から同様に会社説明会と面接を行う。そして、博多駅 の南側のビジネスホテルに泊まって、翌日広島に移動する。 ●結構ハードなスケジュールだが、まだ32歳と若かったのだろう、あまり移動 は苦痛に感じなかった。なにせ、前職で40日間13か国を巡る海外出張を2年間 連続で無事にこなしたので、出張や移動などは手慣れていた。また、いろいろ と移動したり新しいところに行くことは、非常にウエルカムだった。前職のと きは、出張といえばその海外の40日間くらいで、ほとんど工場の開発部門で機 械やデータとにらめっこしていたのだ。外に出て、社会の風を感じて、自分で 自分の行動を決めることができるのは、うれしかった。 ●数か所の会社説明会、募集、面接を詰めてその週に連続して行い、翌週はそ の二次面接に充てる。そして、採用決定者に通知を出し、次の週に最終の条件 決定とクロージングを行う。だいたい3週間で目途をつけないといけない。退 職者は翌月から出社する人が多いが、在籍者だと数か月先になることが多い。 その間に、心変わりしないようにいろいろと手を変え品を変え、コンタクトを 欠かさない。しかし、一度決めた転職の意思も、数か月間かかると、ほとんど その間に転職の意思が弱くなる。あるいは、他社に流れる。 <中途採用から新卒採用に大方針転換> ●しかし、この営業職の関連販売会社への中途採用は、なかなか難しい仕事 だった。転職して入社してもらっても、営業職が初めての人も多い。逆に、営 業職を経験してきた人も、扱う商品やサービスが全く異なるので、なかなか専 門書の営業という仕事のコツが呑み込めない。3か月間の試用期間が過ぎると 本採用になり、そこから販売会社だから営業成績に応じて多少処遇が変動する ことになる。ノルマではないが、一定の販売実績を積まないと、給料がダウン する場合も起こる。なかなか専門書の営業も難しい。 ●それと先週号にも書いたが、最低3週間くらいの連続出張販売になる。東京 から車で出て、初日は終日移動に充てる。翌日から現地で営業活動を行うが、 ほとんど単独の営業行動になる。相当、自己管理が厳しくできて、自分自身に 厳しい人でないと務まらない。成績が上がればいいが、落ち込むと限りなく落 ち込むことにもなる。また、対象者は専門家で限られている。一般的な書籍で はないから、営業活動を進めるとどんどん対象者をつぶしていくことになる。 ここもダメ、あそこもダメとなると、出先で非常に不安になる。 ●過去から10年くらい、この中途採用転職組での子会社での販売活動をやって きたのだが、中途採用、募集、面接の費用もバカにならない。また、入社後3 か月の試用期間が終わった時点で、その仕事に自信が持てなくて退職する人 も、結構多い。かくて、会社でけんけんがくがくの議論が巻き起こり、あると きに代表取締役の義兄の社長の英断で、全面的に新卒学卒者を採用することに 方針転換が決定した。さあ、今度は新卒学卒者の採用を任されることになっ た。昭和60年の夏前だった。これは、大変なことになった。