**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第635回配信分2016年06月27日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その33 〜移籍した中小企業で経験したシリーズ:まずはマネジャーと一心同体に〜 **************************************************** <はじめに> ●新卒営業チームを新しく創設する際に、一番肝心なことはこの部門のマネ ジャー4名をきっちり育てることだ。しかし、これがなかなか難儀なことだと いうのは、やりながら感じたことだった。なぜなら、成岡は大卒新卒で入社し た大手大企業製造業メーカーは大卒はほとんどが新卒採用だった。04月に一斉 に新卒が入社し、それぞれの配属先に配属される。そこで、短くて1年、なが かったら2〜3年の現場実習を経験する。そういう空気、風土、文化で育った 者に、中小企業の中途採用は、それこそ多民族国家にさながらいるようだっ た。非常に戸惑った。 ●ほとんどが大卒新卒だと、入社のタイミングも同じ、経験することも同じ、 給与待遇も同じ。よって、空気、風土、文化が均一、均質化しやすい。いわ ば、何も言わずに金太郎あめのように、切り口にかかわらず同じ味がする。こ れは、組織の統制やマネジメント上は非常にやりやすい。しかし、中小企業で はほとんど大卒新卒はいない。定期採用の大卒新卒が在籍すること自体が珍し い。社員のほとんどが中途採用であり、学歴、経歴、社歴も、それは多士済々 だ。特に、業務の経験年数においては、非常に多様化している。 ●ということは、育ってきた空気、風土、文化が全く異なるということだ。そ して、その体質がとことん身について染み込んでいるひとも多い。少なくと も、5年や10年やってきたら、そう簡単に新しい会社に転職したからといっ て、変えることができる人は稀だ。今回の看護事業部=メディカル事業部は、 成岡を筆頭に4名のマネジャーがすべて中途採用だ。しかも、今回が初めての 転職ではない。唯一、書籍営業部に在籍していたS課長のみが大卒新卒で入社 した人材だった。あとで分かるが、このS君が大卒新卒事業部のお兄さん的な 存在のメンターになる。 <とにかくコミュニケーション> ●とにかく、突貫工事で04月に20名の大卒新卒新入社員が入ってくるまでに、 4名のマネジャーを育てないといけない。個々の営業技術や営業トーク、ク ロージングなどは、成岡がカリキュラムを編成し、実際のツールや基本トーク を作成した。しかし、大半のマネジャーはこの看護分野、医療分野の知識がな い。まず、この市場の特性、特徴を知っていないといけない。資料は山ほどあ るが、実感がない。奥さんが看護師などをしていれば別だが、そんな人はいな い。とにかく、文字と資料で勉強するしかない。しかし、これは勉強すれば何 とかなる。 ●一番難しいのは、人的なマネジメント、モチベーションマネジメント。大卒 新卒だから、他社の就業経験がない。就業経験がないから、いいようなものだ が、これが意外と難しい。就業経験がないので、すべてが真っ白だから、先輩 社員や管理職の言うことが、すべて真実になる。すべて乾いた砂に水を撒くよ うなものだから、簡単は簡単だが、責任は重大だ。4名のマネジャーの経験、 年齢、体験、人生観もばらばら。1名を除いてほとんどが中途採用だから、過 去の経験からくるノウハウも異なる。これを束ねるのが大変なのだ。 ●とにかく、できる限りの時間を4名の新任マネジャーとのコミュニケーショ ンを図るのにとことん消費した。朝まず全員で顔を合わす。体調の良しあし、 ご機嫌の悪さなど、顔色を見ていたら一目瞭然で分かる。そして、要領よく前 日の反省、課題と、今日の行動を確認する。すぐに外に出る者もいれば、午前 中社内に残る者もいる。時間を見て、本人の邪魔にならないように意思疎通を 図るタイミングを考える。あまり難しい話しを朝からするのも気が引けるし、 かと言っていましかできない場合もある。 <4名のベクトルを揃える> ●夕方から夜の時間に全員が揃って、また短時間で重要なことだけ全員で共有 する。今日のことは今日片づけるのをモットーにして、とにかく曖昧なものを 翌日に持ち越さない。しかし、消化不良でなんとなくしっくりしていないマネ ジャーも結構いる。全員のベクトルがぴたっと一致することは、稀だ。少しず つ角度が異なったり、方向がずれたり、大きさが違ったりする。微妙なズレだ が、ほっておいていいものと、すぐに修正確認しないといけないものとがあ る。就業規則の解釈、社内ルールの確認、毎日の行動基準など、4名のマネ ジャーと一心同体でないといけない。 ●その共有時間が終わってから、営業部分の修正をする。営業基本トーク、パ ンフレットや紙面見本の修正、リードオフと呼んでいた販促材料を分厚いファ イルに綴じ込んで営業の現場で使用する説明資料の部分修正や順番を変えるこ となどは、夜遅くに一人になってからする仕事だ。周囲にいろいろな人が出入 りすると、気が散ってなかなか集中できない。なので、みんなが帰ってからの 仕事が結構ある。そして、夕方や昼間に本社での重要な幹部の会議にはでない といけない。当時はまだ役員にはなっていなかったが、ほぼ同じ扱いだった。 ●たまには、1階の奥の会議室をメディカル事業部が占有していたが、幹部の 方々がときどき訪れる。進捗も気になるだろうし、制作の進行の打ち合わせも ある。まだ完全に18巻の全部が完成していないから、制作途中でもあり、制作 面のハプニングやトラブルもある。予定していた著者が突然の事情で変更に なったりするのは、しょっちゅうあることだ。予定通り進行することのほうが 珍しい。テスト販売に集中できるかと思っていたが、想像以上に雑用が多い。 04月からの新入社員20名の受け入れ教育研修の段取りもある。 <一番上が手本を示す> ●そのひとつひとつを丁寧に、かつ、迅速に、4名のマネジャーと共有しなが ら進めないといけない。特に、新入社員20名を早期に営業の第一線に立たせ て、早く売り上げを立てるという結果を出さないといけない。給料と諸経費を 入れると、この事業部だけで人件費は毎月10,000千円近くになる。年間で1億 円くらいの費用がかかる。会社としては、一日も早く数字をあげて欲しいはず だ。義兄の社長は、それこそやきもきしているだろう。しかし、ことは焦って はいけない。しかし、早く結果も出さないといけない。ハムレットような心境 だ。 ●この悩み、葛藤を、なるべく次元は違えど4名のマネジャーと共有する時間 を作らないといけない。ときどきは、帰りに会社の前の焼き鳥屋で遅くまで話 し込んだ。3名くらいと一緒に行くと、簡単に1万円札がなくなる。しかし、 これも役目柄避けられない仕事だ。会社の中や会議だけでことが足りること は、まずない。とにかく、こまめ、こまめなコミュニケーション、報・連・相 が大事なのだ。そのことは、このプロジェクトを通じて、いやというほど骨身 に染み付いた。最後は、何といっても人間関係なのだ。信頼関係の構築なの だ。 ●だから、言ったこと、引き受けたことは、必ず約束を守る。明日の朝までに やると言ったことは、徹夜してでもやる。ときどき、深夜遅くなって、会社に 泊まったほうが面倒がないと思ったときは、会社に布団を持ち込んで寝泊りし たこともある。とにかく、上の者が約束を守らないと組織成り立たない。万が 一、できないときはできない理由を明確に説明する。そして、何よりトップの 成岡が営業の第一線に立って数字をあげる見本にならないといけない。評論家 は要らない。とにかく、腹を据えて覚悟を決めることだ。意思を強く持つこと が大事だ。