**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第660回配信分2016年12月19日発行 成岡の40年の社会人生活の軌跡をたどる:その58 移籍した中小企業で経験したシリーズ 〜最後に在籍したベンチャー企業での経験その5〜 **************************************************** ※先週号で成岡が最後の転籍をしたのを2013年と記載しましたが、正しくは 2003年でした。読者の方からすぐにご指摘がありました。訂正します。 <はじめに> ●上記の訂正にも書いたが、2003年の04月にベンチャー企業に転職し、1か月 経たないうちに東京支社への単身赴任をすることとなった。それも当然で、代 表者の社長は週の大半が東京。ご自宅は奈良なので、もちろん単身赴任。社員 のほとんどが東京支店に勤務し、大手のクライアントも大事な外注先もほとん どが東京に集中している。4月から烏丸七条のテナントビルの7階にある京都 本社に出社したが、なんとなく力が入らない。50歳で最後のご奉公と力んで飛 び込んだにしては、どうも手ごたえがいまいち感じられない。 ●ときどき、東京支店で重要な会議があり、出張という形でお邪魔すると、東 京支店は人数も多く、場所も赤坂見附。社員も若い人がほとんどで、活気が あり元気がいい。70名近くいたので、テナントビルの3フロアーを借りて、用 事のある都度ノートパソコンを抱えて移動する。会議の際にも全員がノートパ ソコン持参で、会議室テーブルの裏にセットされているLANケーブルのハブに ケーブルを突っ込む。誰かがプロジェクターを操作し、画面を見ながらどんど ん会議が進行する。目の前で決まったことが画面に映し出され、全員で確認す る。 ●終わると、全員がLANケーブルとアダプター、自分のパソコンを脇に抱えて デスクに移動する。あるいは、我々幹部はそのままで、次のミーティングのメ ンバーがどっと入ってくる。直ちに画面が次のアジェンダに切り替えられて、 会議が進行する。当時、寝ぼけた印刷会社にいた感覚だったので、これには目 からウロコという感じだった。正直、これは大変なことになったなと、危機感 を抱いた。ついていけるだろうかと、正直不安になった。確かに、診断士の資 格や高度情報処理の資格があるとはいえ、これは実戦で鍛え直さないといけな いと、ふんどしを締めた。 <赤坂見附にワンルームを確保> ●そこに降って湧いたように東京支店への単身赴任のお誘いだった。逆に言え ば、成岡のレベルで合格したということと、急いで迫っているIPO(株式公 開)の準備をしないといけないという、差し迫った事情もあった。合計4億円 近いファンド各社からの投資の期限が迫っていた。本社登記は京都だが、幹事 証券会社などは全部東京のほうで段取りができていた。また、大手のクライア ントはほとんどが東京に集中していた。本社が大阪、京都の大企業もいくつか あったが、人事部などの窓口はほとんどが東京にあった。 ●必然的に東京支店の人数が増え、70名近くになり、フロアーもどんどん手狭 になっていた。東京支店をワンフロアーの新しいビルに移転したいという希望 もあり、これも喫緊の課題だった。京都本社ののんびりした雰囲気とは異な り、東京支店は若く、活気があり、活動的、ダイナミックだった。アルコール も中途半端ではなく、会議が遅くまでかかり、それから腹が減ったと近くの行 きつけの居酒屋で宴会が始まる。地下鉄の最終で帰る人もいるが、近所のサウ ナで寝て、そのまま出勤する猛者もいる。とにかく、若くて、元気があった。 ●そこに、代表者が40歳で10歳年長の成岡が突然飛び込んできた。彼ら、彼女 らにしてみたらお父さん世代なのだ。多少浦島太郎的なところはあるが、何と か持ち前のキャラクターとアルコールの量の勝負で、切り抜けた。単身赴任の 住居を、会社のある赤坂見附から徒歩10分以内と定め、徹底的に探して歩い た。過去に2回単身赴任していたので、東京の地理には明るく、もともと土地 勘がいいほうなので、場所を探すのは慣れている。かくて、探しているうちに 赤坂見附から10分くらいのTBSの赤坂本社近くのワンルームを見つけた。すぐ に手付金を払った。 <赤坂見附の飲み屋街のど真ん中> ●不動産は、売買、賃貸に関わらず、思い立ったが吉日、出会いでなるべく早 く決めるのが原則だ。見合いと不動産はファーストオプションで意思決定する のがいい。あとでいい物件が出てきたり、別嬪の相手が現れる可能性はもちろ んあるが、なるべく早い決断が好ましい。それより、物件探しは当方の希望を 明確にしておくことだ。あいまい、いい加減な条件で絞り込むより、尖った明 確な条件で絞り込んだ方がいい。このときも、赤坂見附駅から徒歩10分圏内、 ワンルーム、・・・・、とか条件を明確にしたので、すぐにいい物件が見つ かった。 ●内覧をしてその場で即決、他の物件は見に行かなかった。手付金を払い、手 続きを済ませ、5月の連休の間に荷物を入れることとした。よって、借りるの は5月1日からとし、仲介手数料、敷金、紹介料などの金銭の支払いを済ませ た。住むところが決まると、少し気が落ち着いた。10分以内と決めたので、実 はかなり近い物件もあったが、逆に近すぎて断った。あまりに近かったので、 帰宅しない社員のたまり場になりそうだった。そこは代表者の単身赴任の住ま いとも近かった。あまりに近いので、断った。後から考えると正解だった。 ●単身赴任は二重生活になり、少々コストがかかる。電気製品も、小型とはい え一揃いのものが要る。洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、その他いろいろなもの が必要となり、その年の連休は新居の用意で明け暮れた。ようやく少し落ち着 いたが、日中が不在なので、宅急便の受け取りなどができない。管理人も常時 いるのではなく、他の物件と兼務のようだ、まあ、完全を期待しても難しいの で、そこそこで妥協することとした。何よりも有難いのは、周囲が有名な赤坂 の飲み屋街で、大使館も多く、外国人も多い。芸能人も有名人も、よく歩いて いる。 <6月に父が急逝し場面が変わる> ●京都の田舎で永年暮らしていた人間にとっては、TVによく出てくる場所が、 人物が、目の前にいる。赤坂のTBS本社の目の前だから、朝のモーニング ショー、ワイドショーのスタジオから外を映した風景そのものだ。近隣には、 国会議事堂、首相官邸、アメリカ大使館。少し足を伸ばせば、神宮球場、秩父 宮ラグビー場、国立競技場。さらに少し行けば、六本木ヒルズ、麻布十番な ど。今までの単身赴任の住まいは、新小岩、若松町などで、どちらかという と、あまりいい場所ではなかった。会社からのあてがいぶちだったからだ。 ●それと会社が以前は水道橋〜お茶の水という土地柄で、大学、出版社、書店 などが密集する場所だった。それはそれでいいのだが、今回の赤坂見附は、日 本の政治、経済の中心地だ。NHKのニュースでやっている場所そのものだ。子 供みたいなもので、50歳のいいおっさんが、それだけで少しワクワク感があ る。夜も、会社から真っすぐ単身赴任の住まいに帰るのは、相当勇気が要る。 つい、誰かをさそって、軽く一杯というのがお決まりになる。しかし、飲んだ ら走る。運動は、そのころからも毎朝欠かさなかった。飲んだ分、汗で出すこ とにした。 ●5月に単身赴任で東京勤務になってから、俄然仕事が面白くなった。社員 も、メンバーも、社会経験には一日の長があることは認めざるを得ないので、 困りごと、ややこしいこと、うっとおしいことなど、どんどん持ち込んでく る。管理部門の統括のような立場なので、会社全体のことはすぐに理解でき た。総務、人事、経理、渉外のような、何でもありの部署だった。営業もした し、講師で客先へ研修にも行った。使い勝手が良かったのか、結構忙しかっ た。転職して、よかったと思うことができた。しかし、その6月に京都の父が 急逝した。また、場面が変わった。