**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第674回配信分2017年03月27日発行 働きかた改革を考える7回シリーズ 長時間勤務を改めるには:その1 〜仕事の能率を上げるにはどうするか〜 **************************************************** <はじめに> ●安倍政権の目玉政策になった「働きかた改革」。残業時間の総量規制にばか り目が行っているようだが、ことの本質はそうではない。本来、仕事とは繁 閑、つまり繁忙期と閑散期が必然的にあるので、閑散期に人員を合わすと、繁 忙期は手が足りない。従って、繁忙期にはどうしても仕事が溢れてしまう。そ こを仕方ないから、時間外勤務でカバーする。当然と言えば、当然であり、何 もおかしことも何でもない。そのトータルの時間の上限をいくらとするかの規 制をどうするかということだ。あまり、目くじらを立てて議論することでもな いように感じる。 ●大企業より、実は中小企業では、どうしようもない残業や時間外勤務は日常 茶飯事に行われている。なにせ人数に余裕がない。大企業のように大勢で仕事 をしているわけではない。ほとんどぎりぎりの人数でやっている。そして、そ のぎりぎりの人数で最低限やらないといけない仕事を回している。そのような 状態で、誰かが病気になったり、けがをしたり、欠員ができたりする。家族の 介護などという悩ましい理由もある。そんなときに、人数が少ないからカバー するのは、現有の社員でやらないといけない。 ●必然的に、数日間にせよ、こぼれた仕事は誰かがやらないといけない。その 分は、確実に負担になる。多くの社員がいれば、カバーする分量も一人当たり に直せば少ないが、2人や3人で分けると相当な負担にはなる。期限がわかっ ていれば、我慢してカバーもできるが、いつまでになるかわからないと、相当 なストレスになる。かといって補充するわけにもいかない。現場からは、その うち文句が出てくるようになる。休んでいる方も、非常に心苦しい。かくて、 現場のメンタル状態に綻びが生じることもある。 <職務分掌を完全に掌握する> ●どういう仕事が大事で必ずやらないといけないのか。まず、それをはっきり する。意外と惰性で従来からやっている業務も多いはずだ。担当者が変わった り、上司が交代したときに、いまやっている業務の棚卸をする。それも、中途 半端にやらないで、とことんきっちり棚卸する。異動した新任の上司も、中途 半端に考えずに、新しい職場の細かい仕事まで、きちんと掌握する。掌握する には、職務分掌を各自に提出してもらう。各自の職務分掌を子細に点検し、誰 が、何を、いつ、どのようにしているのかを把握する。 ●自分への業務の引継ぎはあまりやってもらわないほうがいい。前任者のやり 方が正しいとは限らない。失礼な言い方だが、その方法がベターとも言えな い。どんな資料がどこにしまってあるのかを聞けば、それでいい。あとは自分 自身でやってみて、やり方を考えればいい。どうしても、この方法しかないと いう仕事や業務はないはずだ。少なくても、何かやり方に改善の方法があるは ずだ。異動や交代のときに、新しい方法を編み出せばいい。それくらいの覚悟 で新しい職場で目立たないと、異動した意味がない。引継ぎはやらない。 ●部下の職務分掌を把握したら、数か月で完全に仕事を掌握する。そうすると 不思議と疑問を抱く仕事がいっぱい見つかる。どうしてこの仕事に意味がある のか。この資料は、いったい何のために作っているのか。誰が利用しているの か。同じような伝票の数字をダブってハンドリングしていないか。入力作業を 重複してやっていないか。専務が必要と言ったからやっているが、専務の勝手 なリクエストではないか。会議のために、こんなつまらない資料を誰が活用し ているのか。毎回思い付きで、オーダーしていないか。疑問を持つことが大事 だ。 <真剣に生産性を上げることを考える> ●業務の見直しは日常茶飯事にやらないといけない。惰性でやっていること に、疑問を持たないといけない。こうしたら、重複しているこのことを、一緒 にできるはずだ。末端の社員や女子事務員に、このような問いかけをしても、 あまり意味がない。なぜなら、彼ら彼女らは、それが自分の仕事なのだ。それ をやるために会社に来ている。その仕事そのものに疑問を呈しても、それは酷 というものだ。善悪、よしあしは、上司が判断しないといけない。勇気を持っ て、業務の改善、改革に当たるのが管理職の務めなのだ。逃げてはいけない。 ●生産性を上げることが大事なのだ。同じ時間で2倍の仕事ができる。同じ時 間で精度が格段に向上する。ミスがほとんどない。仕事の手戻りがない。二重 のチェックが必要ない。のんびりとやっていては、そうはいかない。いい緊張 感のもとで、集中して短時間で成果を挙げる方法を考える。本当に真剣に考え ないと見つからない。なんとなく、上司や社長に言われたから、考えろとオー ダーされたから、宿題になったから、いやいや考えても、アイデアは出ない。 自分自身の課題として、自分自身の問題として、まともに向かわないと出てこ ない。 ●オーダーする方も、真剣にオーダーしないといけない。代表者や社長が、い い加減な気持ちで、何とかしろ程度のオーダーなら、請けた方も気合が入らな い。期限を切って、目標を具体的にして、ここをこうして欲しいと、抽象的で はなく、具体的なイメージを伝えないといけない。それも、一回言っただけで はなかなかわからない。こちらは、ずっと真剣に考えているのに、聞いた方は 初耳ということもある。お互いに同程度のレベルで話しをしないと通じない。 特に、上司は分かったものだと勘違いする。そう簡単に同程度の意識にはなら ない。 <トップ自らが働きかた改革を> ●少数で詰めた仕事をやると、必然的に精鋭に成長するというのが成岡の持論 だ。多人数でなんとなくやっていると成果が出ない。時間もかかる。集中が分 散し、効率が悪い。だらだらやるから時間がかかる。途中で、手が動かなくな る。口の方が動いて、手や頭が動かない。そうなると、あっという間に生産性 が落ちる。最後に点検したら、数が合わない。また、最初に戻ってチェックを かけないといけない。あるいは、シールを解いて、もう一度最初からチェック しないといけない。少数でやると集中してやるから、あまりロスがない。 ●なにせ、少数でやると効率をまず第一に考える。限られた時間で、どうやっ てこの人数でこなそうかと、真剣に考える。多くの人数でやると、集中力が最 大限に発揮できない。40年やってきて、少数精鋭というやり方も、間違いでは ない。ただし、メンバーのレベルを揃えないといけない。少数でやるときは、 同じかそれ以上のレベル感のメンバーでやることだ。常に目配り、気配りし て、レベルを上げることを、毎日毎日考える。急に、突然思い付きのように言 われても、全然イメージが浮かばない。毎日考えていると、ある瞬間に、ふっ と浮かぶ。 ●脳をずっと緊張感で保って、ある時期にふっと弛緩させて緩める。そうする と、思考回路に隙間ができて、いいアイデアが浮かぶことが多い。ずっと緊張 状態では浮かばない。緩急の呼吸が大事だ。仕事も同じで、50分集中して、10 分間弛緩する。これを、日常勤務時間中にだらだらやるから、終わらない。メ リハリをつけるとは、まさにそういうことだ。まず、代表者の仕事の仕方から 変えることだ。中小企業はトップが社員の鑑にならないといけない。働きかた 改革とは、実はトップの働きかた改革に他ならない。