**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第712回配信分2017年12月18日発行 これからの中小企業経営の重要課題 少子化高齢化への対応を考える7回シリーズ:第3回 〜女性社員の戦力化を図る〜 **************************************************** <はじめに> ●今後確実に到来する生産年齢人口の減少。つまり、働き手世代の人口がどん どん減少し、機械に代替できる作業はどんどん機械化していかないといけな い。製造業やサービス業などでは、確実そのような動きは加速している。某大 手企業が取り組んでいる、ホテル。ロボットがフロントにいて、ほとんどの作 業はロボットや機械が行う。従業員という人間はほんとの僅かで切り回してい る。それが話題になり、ネーミングの妙もあって非常に稼働率が高いという。 初期投資はかさばるが、将来を考えるとこの人手不足は解消できないからだ。 ●不都合な真実だが、それに目をつぶってはいけない。現在の陣容、体制、組 織、メンバーで5年先、10年先は本当に大丈夫か。まだ社員も40代、50代が中 心だから、ここ当分は大丈夫だ。代表者ももうすぐ70歳。後継者の自分自身は 40歳。若い社員が少ないのが気がかりだが、なかなか最近中途募集しても若い 応募者がほとんどない。人員がもっと揃えば市場は活発であり、業績も停滞せ ずに改善されることは分かっているにも関わらず、この人手不足がネックにな り、やりたいこともやれないし、計画も未達になる可能性がある。 ●では、どうするか。当面の名案はない。なんとか現状では経営はしのげる。 しのげるが、それは現状維持が精一杯だ。何か明るい未来のビジョンが描けて いるわけではない。なんとか当面は過去の遺産と現在の頑張りでメシ食える が、以降の明確な戦略はない。継続的な努力はできるが、どうも大きな改善、 改革は難しい。現状の体制を前提に考えると、こういう状態の企業は多いはず だ。では、どうすればいいか。このままでは組織は高齢化し、活力がなくな り、早晩毀損してくる。早めに手を打たないといけないが、名案はない。 <先達の女性社員を育てる> ●現状を前提に考えると、そのようになる。現状を前提に考えないといい。ま ず、あらゆる既成概念を取っ払う。社員を一人一人思い浮かべ、誰に何をミッ ションに託せば組織は活性化するか。その一つ大きなヒントになるのは、女子 社員の更なる戦力化だ。何も、もっと過酷な条件で働いてもらうという意味で はない。自分の会社で女子社員は、営業事務、総務経理などの間接部門に限定 していないか。もっと生産的な現場で活躍してもらう余地はないか。本当に真 剣にそういうことを考えたか。役員一同既成概念に囚われていないか。 ●特に管理部門の役員が反対しそうな案件になる。営業事務、経理総務事務の 女子社員から、数名性格を勘案のうえ、異動を行い、生産現場や営業現場に配 置転換する。そして、今後は女子社員が戦力化していくことは有効だという社 長の訓示の基で、次の段階に進もうとする。しかし、こういう短絡的な女子社 員の戦力化というプランは、おそらくあっけなく崩壊するだろう。まず、環境 を整えないといけない。環境を整えるとは女性専用のきれいなトイレを新しく 造ることではない。彼女たちが楽しくいきいき働ける環境を整備することだ。 ●まず、先達の女性社員を育てないといけない。彼女がお手本になり、その後 の後輩が安心して付いてくるようにする。まず、これはと思える人物を別の部 署に栄転する。これに管理部門の役員が反対する。彼女を現在の現場から抜か れると困る。彼女は現場のリーダーであり、ベテランであり、安心である。彼 女をいま異動すると、現場がガタガタになる。とんでもない。社長は何を考え ているのですか。現場を知らないにも、ほどがある。私はこの案には賛成しか ねる。いくら社長が言われても反対します。だいたい、こういう展開になる。 <会社の本気度を示す> ●どこの企業でも、本当に飛び切り優秀な社員は少ない。その優秀な女子社員 のトップを異動さすのだから最初から反対はお見通しだ。そんなことで、結論 が変わることもいけない。人事で決まったことは、断固決断して断行する。自 分の部署から優秀だから異動させて欲しいと要望があがることは、出藍の誉れ だ。立派に優秀な部下を育てたと褒められていると思えばいい。優秀な部下ほ ど、いろいろな部署を経験さす。それは将来会社のためには、非常に大事なこ とだと大所高所から判断する。それが役員たる者の務めだ。 ●しかし、現実の現場はそう簡単なことではない。女性を戦力化する際に、一 番大事なことは手本があるということだ。この手本、見本、先達なしにいきな りそういう部門を急ごしらえで作っても、おそらく100%難しい。まず、長期 戦と覚悟を決めて、この先輩女性社員をマネジャークラスに育てることだ。一 人前になるのに1年かかるなら、気の長いプロジェクトになる。しかし、途中 で腰が折れてはいけない。だから、最初の人選や将来のビジョンが大事なの だ。どうして会社は女性を戦力化しようとしているのか。そこを、きちんと腹 にストンと落ちるようにする。 ●この手本の女性社員を育てるのに失敗すると、ことは非常に難しくなる。 よって、この先達の教育は社長直轄でやるほうがいい。誰かに任してどうなっ ているか、などとのんびりした案件ではない。社運を賭けたくらいの意気込み で取り組まないといけない。社員にも、会社は本気だと思わさないといけな い。社長が無理なら後継者の息子さんでもいい。とにかく、責任を取れるポジ ションの上の者が取り組んでいるというメッセージが全社に伝わるようにす る。会社は本気で女性を戦力化しようとしていると。 <特別扱いは必要ない> ●成岡の経験では、出版社に在籍のときに、この女性営業チームを編成しよう とした。新しい料理関係の大型専門書企画を立ち上げたときに、完成時点で女 性の営業チームを編成しようとした。その1年前からリーダーになる女性を3 名ほど選抜して、既存の営業チームに組み入れ、1年後のリーダーとして養成 した。当初、なかなか難しかったが、何とか粘ってリーダーが3名は確保でき た。翌年の新卒採用で10名以上の女性社員を採用し、3組の営業チームを編成 して、新企画の営業活動を始めた。数年は稼働したが、最終的には一定の成果 を残して解散した。 ●稼働中に分かったことは、新卒チームのリーダーには新卒者を充てないとい けないことが分かった。新卒チームのリーダーが中途採用では、彼女らに入社 してからの成長の経過を説明、説得できないことが分かった。同じような経過 を経験してきた者なら、十分説得力をもって説明できるが、そうでないとなか なか難しい。中途採用のリーダーなら中途採用者のチームにしたほうがよかっ た。他には、特に特別扱いをする必要がないことも分かった。こちらがかえっ て妙に気遣うと、それが逆効果になることもあった。 ●営業という仕事では、女性も男性も関係ない。当方が意識過剰になっていた ようだ。待遇も、全く区別せずに男女一緒にした。同じ土俵で同じ条件で勝負 した方がいい。配慮するのは、各自の家庭環境などだ。子育て真っ最中の社員 もいれば、両親の介護の面倒をみないといけない社員もいる。そういう配慮は 必要だが、仕事の上では差別、区別は必要ない。とにかく、今後は女性を現場 で戦力化することが、非常に大きな課題になる。まず、経営者の頭を切り替え ることだ。女性は事務職だと思っていると、世の中の動きから取り残される。