**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第713回配信分2017年12月25日発行 これからの中小企業経営の重要課題 少子化高齢化への対応を考える7回シリーズ:第4回 〜高齢者の活用を図る〜 **************************************************** <はじめに> ●何歳から高齢者というのかは定かではないが、一般的には65歳からと言われ ている。少し以前では、一般企業の定年制度は60歳がひとつの目安だった。細 かくはいろいろな規定があり、成岡が役員をしていたいくつかの企業では、60 歳になった月次の月末で退職という会社もあれば、60歳になった年度末つまり 翌年の3月末という企業もあった。その年の12月末という会社もあった。誕生 日によって相当の差があるのだが、法律的に何が間違いということはない。そ の企業ごとに運用は委ねられているのだ。 ●現在はほとんどの企業で、65歳までの定年延長が施行されている。60歳が一 応の定年だが、その後1年ごとに嘱託契約のようなものを取り交わし、毎年そ れを更新延長する。そして、65歳で一応の「キリ」にする企業が多い。現在の 年金が65歳から支給されることと連動している。退職金の取り扱いには会社ご とに大きな差がある。60歳でいったん退職金を精算する企業が多いと思うが、 必ずしも法的に決まっているわけではない。分割で支払う企業もあれば、一括 で支払う企業もある。それは、いろいろだ。 ●日本では年齢で一定の区切りをしている企業が多い。世界的にはどのような 制度が多いのかは知らないが、意外と年齢で切っている国は少ないかもしれな い。そもそも日本人は時間的に働き過ぎで、諸外国ではむしろ早めの退職をし て、第2、第3の人生をそれから過ごす人が多いと聞いている。会社との関係 性が希薄で、地域やその他のつながりが外国ではおおいはずだ。むしろ、会社 から早く離れて、次の人生設計ができている。日本くらい、会社と言う組織に 長期間所属する文化は、稀ではないか。 <個人差が非常に大きくなる> ●60歳以上を高齢者というかわからないが、これくらいの年齢以上になるとな かなか年齢で推し量れないものが多い。まず、体力。体力とは、なにも100 メートルの競争をいうものではない。長時間の立ち仕事に耐えられるか。寒い 現場で終日頑張れるか。事務所の中でパソコンとにらめっこして頑張れるか。 重たい荷物を運べるか。少々朝早い出勤でも対応できるか。冬の長時間残業が 可能か。そして、体力が衰えてくると集中力がなくなる。ときどき、体調を崩 して突然休むということが起こる。それも、かなりの頻度で発生する。 ●このような現象が起こると、おそらく何かミスが起こる。それも単純なカ バーできるミスならいいが、致命的な取り返しのつかないミスは困る。車の運 転も心配になる。すべてこのような状態の原因は、日常生活のリズムやコント ロール、節制にある。規則正しい生活リズムを刻み、少々のイレギュラーには 対応できる。たまには宴会の席にも顔を出す。カラオケも若い人と一緒に行け る。アルコールも少々飲めて、何より明るい。人ととの付き合いもいい。会社 でも、地元でも、友人がたくさんあり、趣味も多彩だ。そういう人は、老けな い。 ●高齢者のすべてがこのような元気老人ならいいが、現実はそうではない。会 社の業務も、日常生活の延長線上だから、日常生活が乱れている人は、会社の 業務もきちんとできない。高齢者の社員を見るときには、なかなか分からない が、その人の日常生活が想像できるようなマネジメントが必要だ。何も、高齢 者に限ったことではないが、特に65歳以上になると個人差が顕著になる。若い 時代はあまり個人差は感じないが、50歳くらいを過ぎてくると、元気な人とそ うでもない老け込む人との差が歴然としてくる。非常に、はっきりする。 <新しい目標にチャレンジする環境を作る> ●今後の少子高齢化社会の最大の問題は、生産年齢人口が減少することだ。生 産年齢人口とは15歳以上65歳未満の人口を言う。既にピークを過ぎて、どんど ん生産年齢人口が減少している。当然、社会の活力は削がれ、消費は停滞し、 国全体の経済は悪化する。そんな市場に誰も将来を期待して、投資をしようと 思わない。当然、若い人口の多い東南アジア、タイ、ベトナム、インドネシア などへの投資が活発になる。そうなることをカバーするには、今後65歳以上の 高齢者をいかに企業で、いきいきと働いてもらうか。それが大きな課題にな る。 ●ひとつの考え方は、65歳を過ぎてもなお元気で現在の仕事をほぼ同じくらい のレベルで継続してできる人を養成することだ。そのためには、50歳くらいを 過ぎてからの、将来設計図をきちんと各自に描かすことだ。現在の仕事の延長 線上では難しい人と、このままの仕事を将来も65歳以上になってからでも継続 できる人と、おそらく2通りに分かれるはずだ。体力、気力、知力などを総合 的に勘案して、この2通りの区別、区分を早くからしたほうがいい。65歳以上 でも、現状と変わりない成果を出す人もいる。 ●問題は、65歳を過ぎたら業務を変わる人たちだ。大手企業では、興産会社を 作ったりで、軽作業や単純作業を用意し、そちらに転籍を進める企業もある が、個人的には反対だ。自らハードルを下げると、どんどん目標達成意欲が減 少する。若い時ほど、どんどんハードルを上げるのは難しいが、違う業務内容 での学習意欲を高めるような目標設定をすることが必要だ。営業で一生懸命 やってきた人が、突然事務業務に転向して、目標の数字がなくなると途端に元 気がなくなる人もある。100人100様だろうが、個々のパーソナリティに合った 職務が必要となる。 <まずトップがチャレンジすることが必要> ●あるいは、65歳以降も働くとすれば、早くからもうひとつできる仕事を自分 で作り出すか、あるいは、会社で教育研修の機会を設けて、早期に仕事の転換 を図るべく、活動することが大切だ。50歳くらいで将来設計図を描き、それに 対する準備を怠らない。このままの業務を延長でするという意思決定なら、延 長できる自分なりの環境を作る。体力、気力を維持継続できる条件を明確に し、それを目標にする。特に、体力が落ちてくるとメンタルが途端に弱気にな る。そうなると、おそらく継続は難しい。アルコールを節制し、適度な運動を 継続する。 ●または、50歳を超えてから新しい能力開発に注力する。会社もそれをバック アップする。漫然と年齢が進んでは、おそらく新しいことはできない。新しい ことにチャレンジして、それを何らかの形でクリアーしたら、新しい職場や業 務が担当できる。50歳からでもITを学習すればいい。先日のTVでは82歳でスマ ホのアプリを開発したおばちゃんが紹介されていた。それくらいの元気やチャ レンジスピリットがないと、おそらく単に年齢を刻んだだけの老人になる。新 しいことにチャレンジできれば、メンタルは非常に若く維持できる。 ●そのような雰囲気、風土、空気、環境を作るのは代表者であるトップの責任 だ。トップがチャレンジ精神なくして、周囲に叫んでも誰も本気にしない。あ のHORIBA製作所の創業者で亡くなった堀場雅夫さんは、社員に医学関係の勉強 を奨励したら、逆に社員から医学博士の学位の取得を提案されて、見事に高齢 で医学博士の学位を取得された。だから、HORIBAの空気、風土、文化はチャレ ンジ精神に満ちている。中小企業も同じだ。トップの気持ちが早く老けて挑戦 者魂がなくなってきたら、それは早く後進に道を譲るべきだ。すべてはトップ の心持ち次第だ。