**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第716回配信分2018年01月15日発行 これからの中小企業経営の重要課題 少子化高齢化への対応を考える7回シリーズ:第7回 〜外国人研修生の活用を考える その2〜 **************************************************** <はじめに> ●外国人研修生も、最終的に日本でずっと働きたい人が多くいるという。先 日、JETROの方の講演でそのような内容を聞いた記憶がある。研修生は、一定 の期間が終了すると、本国に帰国するルールになっているが、介護現場ではそ の後もずっと働いてもらえるように、制度を変えるらしい。一定の資格を取得 したら、研修期間が明けても、ずっと日本で働けるようにするようだ。特に、 介護現場では近い将来団塊の世代が75歳以上になると、大幅に介護の担い手が 不足するという。そのための処置なのだ。そうなると研修制度が形骸化すると いう指摘もある。 ●前号にも書いたが、もともと研修制度というのは、日本に来てもらって技術 やノウハウを学んで本国に持ち帰り、母国の産業を発展さすための制度なの だ。それが、日本国内のお家の事情で働き手が足りないので、そのままいつい てもらうことにした。随分都合のいい、むしのいい話だが、研修生彼らにして みれば給料が非常に高い日本で、ずっと働ける方が魅力的なのかもしれない。 もしそうだとしたら、中途半端に研修生だといわずに、もっと受入れに関して 別の制度を創設すべきだ。海外からの移民の受け入れにつながるようなことに なるかもしれないが。 ●いずれにしても、生産年齢人口は激減するのだから、いくら生産性革命と 言っても、やはり働き手が足りなくなると国内総生産高は減少する。消費人口 も減るのだから、ダブルパンチになる。生産も国内では難しい、消費量も減る となると、あとの選択肢は海外に目を向けるしかない。たまたま、01/12の金 曜日に京都の診断士協会の新年会前の特別研修会で、JETRO京都所長の石原さ んに講演いただいたが、今後有望な東南アジアの市場に出ていくことが至上命 題になるかもしれない。いや、おそらく確実になるだろう。 <受入の環境を整えるのに時間がかかる> ●研修生、特に中国やベトナム、フィリピンなどからの研修生は、今後金の卵 になる可能性がある。成岡もはじめ、福知山の某土木建築建設関係の企業がベ トナムからの研修生を受け入れるから、面接や事務的な段取りがあるから行く という。それならこれに便乗しない手はないと一念発起し、そのままついてい くことにした。ところが、直前になって福知山の誘ってくれた企業の代表者の 方の都合でドタキャンになった。なったが、もうここまで準備したのだから勢 いで一人で行くことにした。一人はなかなか不自由だが、何とか行ってきた。 ●また、研修生が複数在籍していると結構難しい。必然的に複数名在籍してい るとなると、必ずしもうまく行くとは限らない。一人が退職すると、もう一人 もさみしいのだろう、ほとんど退職になる。かくして、数年間海外からの研修 生を受け入れて、苦労して地盤を築いてきたが、結局うまくいかなかった。研 修生もダメ、中途採用もダメ、ハローワークもダメとなると、どこを活用し て、どこに依頼して、どこに情報を流せばいいのか、結局のところよく分から ない。何回も失敗し、何回も挫折し、何回も学習して、ようやく1名か2名の 研修生を受け入れいることとなる。 ●そのような試行錯誤を繰り返し、ようやく定着することになる。そこまでに 数年の年月と膨大なエネルギーが消費されている。ようやく、研修生を受け入 れるコツのようなものがわかり、社内も受け入れに肯定的な雰囲気がある。当 初はどうせ社長が思い付きで採用面接してきたという、半ば興味本位で現場で は受け入れ態勢ができていない。住まい、生活環境、待遇、仕事以外のイベン トなど、我々が普通だと思っていることが、必ずしもそうではない。特に、人 間関係で苦しむケースが多い。自分の常識は国境を超えると通じない。 <異国の文化を理解する> ●海外からの研修生を受け入れて、その後の大きなグランドデザインを描くな ら、相当勉強することが必要だ。昨年、2回にわたりベトナムに行った理由 は、今後海外から研修生を受け入れて、かつ、自社の今後の海外展開の可能性 が高いのは、ベトナムだろうと事前に相当学習していた。なので、知己の会社 の代表者がベトナムで研修生の受け入れの業務で行くということを聞いたの で、二つ返事で同行することにした。事前の学習は、その国の文化、歴史など を理解することだ。相当な書籍をアマゾンで買って、予習に励んだ。 ●それでも現地に行くと、全く予習した情報が通じない。やはり、なんといっ ても現地、現物、現場の3つが大事なのだ。特に、現場を知ることはその人の 人となり、日常、生活を推定するのに十分な情報を提供してくれる。両親にも 会って、実家まで行って、その人がどういう環境で育ったのかを理解すること は重要だ。これは、何も研修生に限ったことではない。日本国内で中途採用を する際に、一番重要なことは当人と会社のベクトル=方向性が一致しているか どうかだ。これが異なると、いったん採用してから修正することになる。かな り厳しい。 ●ミスマッチをなくすには、すべて正直ベースで対応することが大事だ。面接 の日だけ掃除してきれいにしても、それ以外の日程では全く環境に配慮するこ とがない。そのような企業では、仮に研修生が現場に配属されても、長続きし ない。先輩もいないし、後輩もいない。自分一人で異国で、知らない環境で、 知らない人たちと数年間うまくいくだろうかと、非常に不安な面持ちでやって くる。そこに、突然の環境の変化が起こる。頑張ろうと思っていた気持ちが、 何かのきっかけでプッツンする。いったんそうなると、リカバーするのは難し い。 <実践して経験して修正する> ●これを毎年繰り返している企業は、最終的には研修生を受け入れても、一過 性の対症療法になるだけだ。今後、生産年齢人口は減少する、団塊の世代は増 加する、年金財政は破綻に近い。成岡にも某厚生年金基金から解散するとの通 知の文章が届いた。他山の石だと思っていたが、その後の展開は結構時間が厳 しい。人生経験の長い我々が、道筋をつけて、その道筋が曲がらない環境を整 備する必要がある。住まい、生活、余暇、おカネなど、配慮しないといけない 要素は多い。実際にこれをお世話する係りが要る。べったりついている必要は ないが、非常に重要だ。 ●研修生以外の受け入れは、いろいろな方法、方式があるだろうが、原則は求 人を探している企業が用意する生活パターンが問題になる。最初は何も分から ないから、適当に環境を整える。住まいが中心になるが、会社から適当な距離 のところに、当面の住まいを確保する。ところがこれが必ずしも研修生の希望 に沿っているかと言うと、必ずしもそうではない。当初は分からないから、と りあえずのアクションで対応する。ところが、当人にとってみるとそれが非常 に大事な要素になる。これは、何回か経験しないと分からない。 ●要するに、結局のところいろいろな場面を経験し、そこで学習したことを次 に活かす。まさに、PDCAのサイクルなのだが、こと現実となると学習したPDCA の実践がうまくいかない。いろいろな環境の要素があり、いろいろな経営環境 の要素が乱れ飛ぶ。その中でも、長期の展望に立って、今後の自社の戦略にど のように研修生、海外からの労働力の受け入れをするのか。基本的な方針は、 代表者が決めることだ。支援機関は、あくまでもお手伝いだ。そこを錯覚しな いように導くことが大事だ。間違った方向に行きそうなときは、身体を張って も止めないといけない。