**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第717回配信分2018年01月22日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第1回 〜自社の利益優先の考え方を改める〜 **************************************************** <はじめに> ●ほとんどの中小企業は、自社単独でビジネスのすべてのステージ、段階、プ ロセスを完結することは難しい。いや、大企業でも難しい。通常のビジネスで も、一般的な商流があり、この商流をうまく設計できないとそもそものビジネ スが成り立たない。製造業なら原材料の入手に始まり、製造加工、保管物流、 営業マーケティング、ロジステック、アフターフォロー、サービスなど、想像 以上に業務は多岐にわたっている。その、どこかで欠陥が生じるとビジネスモ デル自体が成り立たない。しかし、その工程の全部を自社ではやれない。 ●自社ではやれないコア以外の部分やプロセスを他社に依存することになるの だが、これを全部他社がきちんとやってくれるという保証はない。一般的には 通常の商取引の中で、契約を締結しそれに違反したときはどうすると決めてあ る。しかし、ほんとどのプロセスでは契約時点で取り交わした約束事が、すべ て守られるという保証はない。守られなかったときのペナルティが実行される のは、本当に重大なトラブルに発展したときであり、通常の毎日のビジネスの 中では、日本と言う国ではそんな揉め事が頻発することはない。 ●これが海外に出かけると、とんでもないことが日常茶飯事で起こる。預けた キャリーバッグが飛行場の中で紛失したり、落し物はまず出てこないし、予約 したホテルがきちんと部屋を確保していなかったり。特に後進国の海外旅行 は、本当にハプニングがつきものだ。慣れないと、旅行をしている楽しさを享 受するより、無事にここを脱出できますようにと祈っていることも多い。それ くらい、法人同士の連携も悪いし、それぞれがそれぞれに一生懸命にやってい て、生産性は上がらないが、確実に成長している実感はする。 <連携では通常の商取引以上の関係> ●それくらい、日本国内では当たり前、通常通りと思っていることが、海外に 出るといかに企業間相互の連携が悪くて、右往左往することが多い。日本ほ ど、縦横斜めの企業間の商流を中心にした企業間連携がきちんとできているこ とは少ない。では、何も問題がないかと言うと、必ずしもそうではない。現在 のビジネスモデルを維持するには、過去の実績に基づく商流が完成していた。 もちろん、それ以外の商品でも、あるのだが日本人はとかく過去の実績を重ん じる。過去が大事で、未来は勝手についてくると思っているのだろうか? ●中小企業がこれから未来の一層厳しい時代に立ち向かっていくには、自社の 技や付加価値を磨くことはもちろんのこと、自社でできないプロセスをいかに レベルの高いところと協力関係を結べるかが重要なのだ。何もかもがすべて自 社内でできない工程の中で、どの部分は自社の強みだから、これを内部に残し てさらに一層磨きをかける。後工程の一部は、これは設備がないとべきない工 程なので、外部の連携企業に任せる。ひとつひとつそういう観点で連携のネッ トワークを構築する。通常の商流以上の関係を作れるかが重要だ。 ●通常の商取引は発注があり、受注があり、見積もりがあり、仕様が決まって いて、見積書通りであればほとんどトラブルも問題も起こらない。ところが、 新しいことを始めようとしたり、まだ先の見通しが見えないことを始めたり、 そういう場合はリスクが高くなるから、なかなか連携と言ってもうまくはいか ない。その典型的な例が金融機関との関係だ。金融機関は、一般的にはリスク の高い事業には融資がしにくい。何か物的な資産価値のある担保が提供できれ ばいいが、そんな資産を持っている中小企業の経営者は少ない。 <最初からおカネの話しを持ち出さない> ●試作開発時点などは、全く海のものとも山のものとも分からない、不確実で 不確定な状態になることが多い。代表者の方がこの試作機なら、絶対にビジネ スになると信じていても、周囲はそうは考えていない。なかなか案件が進まな いときほど、この利害関係を越えた連携が重要になる。通常の売掛、買掛でも つ商流が出来上がっているなら、それはそれで一旦持ち越しにしたほうがい い。いくら担当者が素晴らしいと言って肩入れしてくれてても、最後の最後で どんでん返しがあることが多い。 ●特に、費用の負担割合を決めるときなど、相当に揉めることが多い。試作開 発をスタートするときなどによくあるケースでは、まとめ役の代表取締役社長 が決めることになるが、あまり自社の費用負担を減らすことは難しい。通常、 最適に分配した金額より自社の費用負担を多めに設定するのが好ましい。今ま で、おカネが発生しない段階ではきれいごとで済んだが、いざ投資をして1号 機を試作開発で作ろうとなると、大揉めに揉めるケースを今まで何度も見てき た。だいたい、ここで空中分解する。 ●やはり、アイデア段階ではまださしたる費用も発生していないから、実際に 自腹や身銭を切るという行為には至らないが、本当に多額の費用が必要となる と、ことはそう簡単ではない。これは通常の商流の感覚では決まらない。それ ぞれの代表者の感性や感覚で決めることが多い。ここで理屈を持ち出すと、逆 に好ましくない。連携、連携と言いながら、実は自社のリスクは低く、他社の リスクは高いというケースなら連携チームの仲間になり、ずっとそこでメン バーに参画している意味がない。 <私利私欲をどこまで抑えられるか> ●連携のまず第一歩は、私欲を捨てて公の感覚でどれくらい事業に向き合える かだろう。確かに補助金も欲しいし、時間もかかる。何と言っても、自分のモ チベーションで維持している部分も大きい。しかし、売上やおカネの話しをこ の段階で持ち出すと、いい連携はなかなか構築できない。いい連携関係を構築 するには、とりあえず私利私欲を前面に出さないことだ。大義名分を打ち立 て、社会的な価値観を大事にして、自社が先行していくら持ち出しになるか、 よく計算した上で、プロジェクトに取り掛かる。 ●こういう新しい連携関係を構築したり、構築に向けて時間とおカネを自由に 使えるのは、代表者しかいない。代表者なら、おカネの責任も自分で持つだろ うし、失敗したときの責任も取れる。また、その方向が自社が将来目指すべき 方向と合致しているか。果たして、私心はないか。そういう観点からものを考 えるようになるには、少々時間がかかる。もちろん、そのために自社の経営が 大きく左前になってはいけない。社運を賭けたり、一献一滴の大勝負に打って 出たりするのは、基本的にやめるべきだ。 ●最近の流行言葉で、オープンイノベーションなどという言葉があるが、これ も結局は外部に情報を積極的にオープンにして、自社のドアを開け、従来にな い技術やノウハウを外部と積極的に協同開発するというものだ。難しく考えず に、今まで平生お付き合いのない企業や研究機関などと、新しく製品開発をし ていくことだ。ここで、自社の収益だけに目が行くと、間違う。今からやろう という新規事業は、世の中にどういうプラスの影響を与えるのか、それが本当 に自社のミッションとして正しいか?常にそれを自問自答して、悩むことが大 事だ。