**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第723回配信分2018年03月05日発行 これからの中小企業経営の重要課題 他社との連携を考える7回シリーズ:第7回 〜これからのキーワードは「オープンイノベーション」〜 **************************************************** <はじめに> ●他社との連携を考えるシリーズの今回最終回は、「オープンイノベーショ ン」。中小企業にオープンイノベーションは関係ないと思っておられる代表者 の方も多いのではないかと思うが、意外とそうではない。中小企業こそ、自社 の経営資源が乏しいから、門戸を開いて他社と連携し、まさに「オープン」な 「イノベーション」を目指さないといけない。自社の殻に閉じこもっていて は、今後の成長は望めない。他社や外部と積極的に連携、提携して、「オープ ン」な「イノベーション」を目指す企業のみが、今後の成長の果実をゲットで きる。 ●まず、「オープン」ということを考えてみよう。「オープン」とはまさにド アが開いているということだが、なかなか社内の経営資源を外部に公開、公表 して積極的に連携、提携している企業は少ない。外部の人に積極的に工場の中 を開放して、見てもらうということをしている企業は少ない。どんな企業に も、外部には見せたくないノウハウがある。それを見せたら、真似をされると 思ってそのほとんどは外部に公開、公表していない。実際には、なかなかそう は簡単に真似はできないのだが、ほとんどの企業は外部の人間に内部を公開し ない。 ●データの提供も一部はしても、すべてを公開することは通常行わない。あま り関係ない部分は提供しても、ここはうちの会社の最大の重要な部分だという ところは、ほとんど見せないし、公開しない。具体的には、コスト、製造条 件、品質規格、検査方法などだ。業種、業界、業態によって異なるが、こうい う重要な数値、データ、作業標準、技術標準、検査標準などは、大きな経営上 の重要情報なので、よほどのことがない限り、そう簡単に外部に提供すること はない。まして、担当者の一存で聞かれたら答えるなどということもない。 <工場見学が営業> ●積極的に外部の関係者に工場を開放して、見学を奨励している企業もある。 京都市内南区の某社は、逆に工場見学を営業の大きなツールにしている。積極 的に工場を外部に開放し、多くの方が見学に訪れる。工場を見学し、事務所建 屋の会議室で代表者以下が自社の取組を詳細に説明する。特にそれが感動的で あると、見学に訪れた外部の人が、自社に戻って口コミで周囲に伝搬してくれ る。それが、この企業の大きな宣伝効果になる。まさに、これが営業ツールと なり、見学希望があとを絶たない。 ●また、社内的には外部の人が工場の中に見学に入ると、当然周囲の片づけは 積極的に行い、清掃は徹底し、とにかく見られても不細工なことがないよう に、日ごろから整理整頓に心がけるようになる。工場の中の細かいところを見 てもらうようになると、自然と清掃は徹底し、機材の置き場もきれいになり、 道具もきちんと揃えるようになる。通路の表示も分かりやすくなり、定期的な 清掃活動も徹底する。これが、外部の見学を否定的にとらえると、そうはいか ない。面倒だということになり、見学者にもいい印象を与えない。 ●工場見学が最大の営業ツールになると、それを売りにしていろいろな企業や 団体から見学に訪れる、実は、一番のねらいは顧客や代理店が見学に来てくれ ることだ。一般消費者に製品を販売している企業なら、消費者が見学に来てく れる。代理店を通して販売活動をしている企業なら、地域ごとの販売代理店が 大挙して見学に来てくれる。京都なので、観光を兼ねて地方から来てもらい、 翌日の午前中は市内観光をしてもらう。そして、地元に戻ってから印象や感想 を書いて送ってもらう。結構参考になることが書いてある。 <改善より革新、改革> ●次は「イノベーション」。これを「技術革新」と訳すと、少々意味が限られ る。中小企業は、特に技術革新というキーワードにとらわれる必要はない。製 造業以外でも、技術にこだわらず、卸売り、小売り、サービス業でも革新とい うキーワードはあり得る。いや、むしろサービス業的な企業こそ、イノベー ションが起こりやすい環境にある。なぜなら、過去に積極的にイノベーション を目標に事業活動をしていないケースが多いからだ。過去に取り組んでいない 企業ほど、伸びしろが大きい。少し取り組むだけで、大きな効果を生む。 ●しかし、社内からはなかなかアイデアが生まれない。会議をしても、堂々巡 りの議論に終始し、最後は代表者の独善的な演説で終わる。足下のことばかり を考えていると、遠くを見た意見やアイデアが出てこない。とにかく売上を上 げることばかり考えていると、目先の結果しか求めない。今月、来月、今期の 業績しか頭にない。来期、再来期、5年後、10年後など全く考えていない。現 場はそれでいいかもしれないが、経営的にはそれでは困る。やはり、代表者、 経営者は遠い将来のことを考えていないといけない。 ●技術革新は、なにも技術だけではない。仕事のやり方もそうだし、業務の進 め方もそうだ。要するに、改善レベルではなく、改革レベルなのだ。数パーセ ントの節減は改善で、数10パーセントなら改革、革新になる。そもそもの方法 から全部見なおして、やり方そのものを抜本的に変える。それが改革であり、 革新なのだ。これは従来の方法、方式に固執していると、全く生まれない。一 度、過去をリセットしてゼロから考えないといけない。しかし、日常が忙しい とゼロベースで考え直す余裕がない。かくて、毎日同じことを繰り返してい る。 <窓を開けて風を入れる> ●頭が煮詰まってきたら、窓を開けて外部の新鮮な空気を入れないといけな い。会議も、一度外の異なる環境で行う。いつも同じ会議室、同じメンバー、 議題も変わらないとなると、おそらく絶対と言っていいほど、斬新な考えは生 まれない。そういうときは、積極的に外に出ていく。東京でも、海外でも、温 泉地でもいい。とにかく従来の殻を破って、新しい違う環境に身置く。環境が 変わると見えるものも変わるし、発想も変わってくる。敢えてコストはかかる が、そういう環境を自ら作らないといけない。誰も他人はしてくれない。 ●いつも課題があって悩んでいると、あるときふっと閃くことがある。つま り、困ったり悩んだりしていないといけない。平々凡々と暮らしていると、課 題が見つからない。新しいことに挑戦していると、常に何か壁にぶつかってい る。そして、それをどう乗り越えようかと考える。そういう悩み多き環境に敢 えて身を置かないと成長は期待できない。そうなると、解決策を求めていろい ろなドアを叩きに外に出ないと仕方ない。経営者のミッションは、優秀な部下 やスタッフに常に課題を提示し、困りごとを提供する。 ●そういう空気、風土、文化をどうやって社内に作り、醸成し、根付かすか。 それが経営者のミッションであり、改革、革新を生む原動力だ。ときに、非常 に高い困難な課題を提示する。数字も、そう簡単にはできない数字を目標に掲 げる。数パーセントではなく、数10パーセントの目標を掲げると、従来の方法 では初めからできないことが分かる。そうなると、当然違う方法でアプローチ する癖がつく。そのような空気、風土、文化を社内にどうすれば生み出すこと ができるか。それが、経営者や代表者のやるべき仕事なのだ。遠くを見ること が大事だ。