**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第724回配信分2018年03月12日発行 これからの中小企業経営の重要課題 これからの企業の人材戦略7回シリーズ:その1 〜人材が来ないのは企業自身に問題がある〜 **************************************************** <はじめに> ●いや、最近は非常に厳しい条件になった。新たに採用募集をしても、全く人 が来ない。少し前までは、ハローワークに募集をすればすぐに数名の応募が あった。その人材がどうかは別にして、少なくとも数名の応募があった。新卒 採用にしても、会社説明会に出展すれば、数名の人だかりができた。その中か ら数名の採用は、何とか確保できた。しかし、昨今はそう簡単なことではな い。少子化で大卒4回生の人数も、徐々に減少する。厳しい採用環境で、 中小企業が人材確保に走り回るのは、いかんともし難い。 ●数年先、10年先は、もっと厳しい。現在の会社の組織図を見ながら、果たし て10年先の組織図が描けるか。手元に現在の組織図を描いて、はたして10年後 に誰がどのポジションにいるだろうか。決して仕事の問題ではないかもしれな い。実家の両親の介護の問題もあるだろう。家族の中に円滑に承継を果たすべ き理由が見つからない場合もあるだろう。これを説明、説得するのは至難の業 だ。成岡が、15年前に独立したときのことを思い出してみよう。何かのヒント はあるはずだ。 ●少し前の時代ではセンター試験の受験者数が毎年増加して、大学の入学者数 が50%を超えたと大きな話題になった。いまや、大学の数は相当増えて私立大 学では経営難の大学が相当数ある。私立大学の公立化で何とか急場を凌いでい る大学もある。しかし、所詮受験者数は減少する。生き残れる大学は早晩見え てくる。逆に生き残れない大学は、やめるしか選択肢がない。あるいは、社会 人専門の学校に変身するか。いずれにしても、生き残りをかけてサバイバル競 争になるのは間違いない。 <若手の中途新卒採用は難しい> ●中小企業も同じだ。380万社ある企業の中から、若い人に選んでもらう企業 になるにはどうすればいいか。これを今から真剣に考えておかないと、10年先 に社員が全員高齢化し、平均年齢が60歳という中小企業も出てくる可能性があ る。60歳が悪いわけではないが、その年齢になると色々と問題、課題が発生す るだろう。何より、気持ちの活力が減退し、気力が衰え、フィジカルにもメン タルにもいい影響を与えない。まだ、これから20年は頑張らないといけない年 齢なのだが、どうも新しいことに腰が退けるようになる。 ●これをカバーするには若い人材が組織に入ることが必須になる。しかし、30 歳以下の若い人材に来てもらうにはどうすればいいか。鉦や太鼓で募集をして も、某人材会社の媒体を使っても、なかなか優秀な若い人材は入ってこない。 入ってきても、優秀な人材ほど先がよく見えるので、モチベーションが保てな いと、早晩リタイアする。期待して、教育して、目を賭けて、熱心に指導して も、なぜか噛み合わないまま退職していく若い人材を見ると、非常に残念でた まらない。将来の幹部候補生と期待をかけたのに。気持ちが伝わらない。 ●新卒採用は、なおのこと、もっと難しい。最近の売り手市場の場合は、内定 を複数もらう学生が続出する。3月から説明会が解禁になり、多くの企業で来 年度の採用活動が始まった。先日、京都市内の某大学の特別講義をしに行った が、当日は学内での企業合同説明会が開催されていた。普段着の学生が、その 日に限り全員スーツ姿で学内を歩いている光景は、少々異様な感じがした。果 たして学生の心中はどうだろうか。これからの社会人人生を賭けるに値する企 業が見つかるか。真剣勝負の毎日が始まった。 <経営者は夢を語れるか> ●ただでさえ採用難の中小企業が、新しい若い人材に来てもらうには、会社に 魅力がないといけない。この企業に入ったら、自分が成長するイメージが持て る企業でないといけない。やたら売上、利益ばかりをお題目に挙げている企業 は、そもそもここで脱落する。自分が成長し、周囲に尊敬できる先輩がいて、 経営者の理念に共感できる、そういう企業になるのはどうすればいいか。そん なことは難しいと、頭から一蹴する経営者の方は、失礼ながらおそらくこの先 10年でサバイバル競争から脱落する。ロボットに代用できるなら、とっくに代 用している。 ●自社の提供する企業価値は何か。そこをとことん突き詰めて考えないといけ ない。応募する人材は、社内の細かい業務のことは分からない。分からないか ら、余計に大所高所の理想が必要だ。代表者がそもそも事業活動を通じて、将 来何を目指しているのか。それは、売上でもなければ利益でもない。結果とし て成しえた売上と利益から、将来に向かって何に投資をするのか。地域社会と どう関わろうとしているのか。世の中に何を提供しようとしているのか。果た してそれが正しいのか。そういうことが問われる時代になった。 ●ひと昔前までは、こういうことは大企業が考えることで、中小企業は関係な かった。ひたすら、毎日作業服を着て黙々と機械と向き合い、製品を作り続け ていればよかった。しかし、それでは何のために働いているのか、何を最終的 に達成しようとしているのか、世の中にどう貢献しようとしているのか。そう いうことが見えない、分からないと、毎日を単に仕事をこなしているのに過ぎ ない。30歳になったら自分はどうなっているのか。結婚して、子供もが出来 て、一家を養う立場になったら、家族に自分の仕事を自慢して誇らしく言える のか。 <代表者が熱く語れるか> ●経営者はこういう問いに答えを即座に言えないといけない。毎日、毎日、 やっていることはまさに仕事なのだ。それを通じて何を世間に、地域に、社会 に貢献し、アピールし、主張するのか。単に売上や利益だけではない価値は、 何か。自社はいったいどういう存在でいたいのか。そこに明確な答えが出せな い、言えない、表現できない企業は、早晩外部の人材から見放される。そし て、それが全社一体、経営陣が一体で共通に認識できていいないといけない。 一部の創業家の役員だけに共有化され、他の役員は全く違うものを見ているの は、ダメなのだ。 ●全員が同じものを見ている。代表者も、常務も、部長も、営業事務の女性 も、聞けば全員が同じことを答える。会社は何を目指しているか、どこに行こ うとしているのか、何を社会に、地域に貢献し、提供し、その結果売上が達成 できる。そういう企業になるには、相当時間をかけて、揺るぎない哲学、信念 のもとに企業活動、事業活動を粛々と継続して行わないといけない。目先、目 先のことばかりを考えていたのでは、遠くを見て将来のことを考える余裕がな い。おカネ、時間、人材などに多少の隙間があって、余裕がないといけない。 ●そのような会社の状態は、意外と外部から見ていると非常によくわかる。会 議に参加したり、代表者の発言を聞いていると、この企業は少し先を見て企業 活動をしているのか、目先の業績を追っかけているのか、非常によくわかる。 採用の現場にも、そのような代表者のマインドは、結構ストレートに応募者に 伝わる。悠長に構えているのではなく、5年後、10年後に自社の目指すイメー ジを伝えることができるか。これができれば、人材は結果的に採用できる。採 用はテクニックではない。会社の想いを代表者が熱く語れるか。それが一番大 事なのだ。