**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第726回配信分2018年03月26日発行 これからの中小企業経営の重要課題 これからの企業の人材戦略7回シリーズ:その3 〜近い親しい人が最良の人材のソース〜 **************************************************** <はじめに> ●ハローワークでもいいし、リクルートでもいい。どんな媒体、どんなルーツ であろうと、とにかく中小企業で優秀な人材が応募してくれるチャンスは、非 常に少ないと思った方がいい。いや、皆無とは言わないが限りなく小さいだろ う。特に、創業間もない企業や規模の小さい企業などは、本当に人材の確保が 最も難しい課題になっている。一定の規模、一定の売上、一定の知名度、一定 のブランドになるまでは、相当な覚悟をもって人材の確保に走り回ることにな る。当然のことながら、身近で親しい人からの情報、紹介がベースになる。 ●一番近いのは、身内になる。親族、一族、同族などの親近者だ。息子、娘、 娘婿、兄、弟、姉、妹。そしてその関係者。従兄弟もあれば、叔父さんもあ る。とにかく三親等くらいまでは対象者だ。法事や新年の親戚の会合などで顔 を合わす人たちだ。そういう人に、自社のことを知ってもらい、自社に興味を 持ってもらい、最後は自社に来てもらう。そういうことができるように、環 境、体制、制度などを整えておかないといけない。その時になって、慌ててい ても遅い。常に、日ごろから意識していないといけない。ボーイスカウトの 「常に備えよ」だ。 ●成岡も義兄のヘッドハンティングのお誘いに乗って、32歳のときに転職し た。大企業の化学繊維製造メーカーから、40名12億円の中小企業の出版社に転 職した。とにかく、このときのお誘いは強烈、強力だった。時期を見計らい、 断れないように外堀を埋めて、転職の条件も提示して、一気呵成にアタックさ れた。住まいを移す費用もある。子供の教育環境もある。まして、現在在籍し ている会社の都合もある。多くの条件を調整するためには、最低半年、下手す れば1年間くらいかかる。長い時間がかかると、その間にまた変化が起こる。 <とりあえず周囲にいないか> ●まず、自分の親戚、友人、知人と言う身近な周辺に誰か優秀な人材がいない かを、いま一度点検してみる。娘婿が東京の某社にいて、機嫌よく暮らしてい る。子供にも恵まれ、いい環境で生活している。その娘婿をゲットしようと 思ったら、これは相当覚悟して、腹を括って、決心をしてリクルートしないと いけない。中途半端にオファーすると、お互いにまずい結果になる。中途半端 なリクルーティングは、結果が良くないことが多い。トップの決心、決意、腹 の括り方が一番大事だ。 ●あるいは、可能性がないと思っていた長男が、自分が急に入院し東京から見 舞いに病院にやってきた。珍しく、親子二人きりの会話の時間が持てて、非常 にしんみりとした雰囲気があった。思い切って実家の商売に戻って来てくれな いかと水を向けたら、意外な返事が返ってきた。前向きに考えてみると。急 病、手術、入院という非定常な環境だからこそ、言えたのかもしれない。この ケースでは、長男が実家の商売に戻ってくるには2年かかったが、現在は代表 取締役社長に就任し、親子で頑張っている。 ●何も男性に限らない。娘さんが後を継ぐケースも、最近では結構珍しくなく なった。TVのドラマでもやるくらいで、世間では結構目立つ。まして、女性が 代表者を務めるのが不思議な業界でも、そのような例がある。金属加工業、産 業廃棄物処理業など、おおよそ妙齢の女子ではふさわしくない、ぴったりこな い現場でいきいきと社長として活躍されている。それも、娘さんばかりで止む 無くというケースならまだわかるが、大阪の例のように男性子息が会社に在籍 しているにもかかわらず、娘さんが承継したケースもある。 <とにかく一生懸命探す> ●従業員を採用する場合でも、まずは従業員の親族、家族で可能性がないかを 考えるべきだ。従業員が、その会社に本当に心の底から心酔し、愛していれば 自分の子息に入社を勧めるのは、やぶさかではない。親子が勤めると気恥しい という気持ちもあるかもしれないが、意外と会社の中では親子の関係は持ち込 めない。やはり、先輩社員と新人と言う位置づけになる。成岡の知っている京 都の老舗企業では、親子三代が同じ企業に勤めたというケースもある。こうな ると、素晴らしいの一語に尽きる。 ●あるいは、入社している子息の友達、同級生でもいい。そういうケースは非 常に声がかけやすい。いつも周囲に誰かそういう人がいないかと、目を凝らし ていないといけない。時間がもったいないかもしれないが、積極的に同窓会に 顔を出す。クラブのOB会に顔を出す。そこで誰か候補者がいないかと探してみ る。旧交を温めるのも大事だが、ヘッドハンティングのいい場面なのだ。ある いは、そこで探せなかったら親しい友人にそういう人がいたら、ぜひ教えてく れ、連絡してくれと依頼しておく。営業ではないが、名刺を配るのもやってみ る。 ●それくらい努力しても、なかなかいい人材に来てもらうのは、中小企業では 難しい。難しいといって諦めてはいけない。いまでこそ、京都の著名企業に なった某社の先代社長は、会社の場所がたまたま京都大学に近かったこともあ り、知り合いの教授の研究室に人材を紹介してもらうために、日参したとい う。それでも、当時は名もない企業だったから、誰も来てくれなかった。しか し、頑張って通ううちに一人、二人と応募してくれる人材が出てきたという。 その人たちは、いま最古参の役員になっている。まさに会社の成長を支えた。 <役員全員一生懸命後継者候補を探すこと> ●先日お目にかかった45歳の立派な後継者の方も、現状はお父さんが代表取締 役。ご自分が専務取締役。現在は業績は好調だが、5年先くらいに予想される 後継者への承継時点で、若い新しい代表者を支える人材が果たしているのか。 そう考えると、非常に不安になるという。現在はいい。しかし5年後はどうだ ろう。自分の周辺に、営業、製造、管理など主要な部門の責任者は誰がいるの か。果たしてメンバーは揃っているだろうか。今から、心して幹部を育てた り、リクルートしてこないといけない。 ●経営陣は常に3年後、5年後の自社の組織図を頭に描いておく必要がある。 現時点はいい。しかし、5年経てば全員5歳年齢が進む。機械は償却すれば新 しい機械を購入すれば済むが、人間はそうはいかない。足りないと思ったら、 どこかから引っ張ってこないといけない。しかし、そんな簡単に将来の幹部候 補生が見つかることは少ない。常に自社の人材の欠けている部署はどこか。そ こにはどういう人材が要るのか。どういうところから呼べばいいか。周囲にそ ういう人材はいないか。親戚縁者にそういう人はいないか。 ●知人の息子さんで優秀な人はいないか。確か、友人のAさんの息子は、いま どこそこの会社に勤めている。時間がかかってもいいから、一生懸命口説いて みよう。会社の将来にはこういう人材が必要なのだ。求める人物像が明確だか ら、一生懸命リクルート活動をしてみる。おカネや機械は買えばゲットできる が、人材だけは好きなように買えるわけではない。経営陣がもっと自社の将来 の人材や組織に意識を持つことだ。常に危機感を共有して、全員が必死になっ て人材の確保に注力することだ。