**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第729回配信分2018年04月16日発行 これからの中小企業経営の重要課題 これからの企業の人材戦略7回シリーズ:その6 〜少数でやれば精鋭になる〜 **************************************************** <はじめに> ●少数でやれば精鋭になるか、精鋭だから少数でできるのか。何か哲学的な テーマだが、中小企業は少数だから精鋭になるというのが正しい。初めから精 鋭で始まる中小企業などはない。少ない人数で知恵を絞って、何とか現場を切 り回してきた。気が付いたら、もう20年経っていた。現場の連中も最近ではど んどん現場の改善、改革を意識するようになった。うるさいことを言わなくて も、自発的に課題に取り組むようになってきた。我慢してやってきたことの結 果が実を結んできた。こんな嬉しいことはない。最近聞いた代表者の方のコメ ントだ。 ●とにかく中小企業は人の入れ替わりが激しい。なかなかいい人材が長くいて くれない。しかし、その会社は比較的長く社員が在籍している。聞けば、仕事 は相当厳しい。営業もしかるべき目標があるし、達成できないと非常に気まず い。ノルマではないが、目標に到達しないと当然評価は低い。賞与も昨年より 減額になる。しかし評価はオープンなので、何をすれば褒められて、何をすれ ばダメなのかが明確なので、わかりやすい。20名くらいの会社なので、難しい 評価制度などはない。社長が決めているが、フィードバックが丁寧なので理解 できる。 ●この企業は無駄な仕事はしない方針だ。在籍者が何らかの事情で退職して も、すぐに補充はしない。退職者がやっていた仕事も、すぐに後任者に引継ぎ をせず、一度上司がきちんと内容を精査する。担当者から担当者に引き継ぐ と、どうしてもその仕事はその方法でしないといけないようになる。そうなる と、効率的な、合理的な方法とは限らないから、同じような方法でその仕事を することになる。もっといいやり方があるだろうが、以前から同じようなやり 方だと進歩がない。まずは上司が引き取って仕事内容を精査する。 <同じような仕事をやっていないか> ●そして、やらない仕事をあぶりだす。一生懸命やってはいるが意外とムダな 仕事も多い。ムダというより意味がない仕事がある。精緻な資料を作成する が、あまり活用されていない。作った人が自己満足のような状態で、当人は活 用されていると思っているが、周囲の人はあまり利用、活用していない。そも そも他人が作成した資料は、なかなか活用できない。経理のデータで、多少不 足もあるが、おおよそそれで十分だったら、それをそのまま活用すればいい。 遅い時間まで残って、あまり活用されない資料を一生懸命作っていないか。 ●どんな資料がどこに入っているのかが分かっていれば、もっと時間が短縮で きる。それが、各自が各自なりに勝手に作るから、バラバラで分からない。同 じような見積書を作るのに、非常に時間がかかっている。隣の営業の人が以前 に同じような見積書を作成していても、知らないからまた同じように時間をか けて苦労して作成している。同じような内容の見積書があれば、それを少し直 せば立派に通用する。宛先の会社名と日付を変えるだけで、ほとんどそのまま で通用する。1時間かかるのが、あっという間にできてしまう。 ●要するに、情報の共有化ができていない。ファイル名を付ける共通のルール がない。それぞれが、個人のフォルダーに好きなように名前を付けて保存して いる。同じような内容の資料が、実は山ほどあるが、誰もそれを共通に管理し ていないから、有効に活かせない。もったいないと思うが、部署が縦割りに なっていたり、営業が個人ごとに得意先を持っていると、情報が横に共有でき ない。やはり、誰かがこれをきちんとマネジメントしないといけない。しか し、忙しいことを理由に誰もそれをやらない。 <やらないことを決めて特化する> ●少数の人間でやろうと思うと、必然的にムダな仕事をしなくなる。最低限の 仕事でいかに効率的にやるかを考える。全くムダではないだろうが、それでも あまり意味がない、活用がされない業務は次第に消滅してくる。やることを決 めることも大事だが、やらないことを決めることも、もっと大事だ。うちの会 社はこういうことはやらないと、明確に決めることだ。トヨタは二輪車も製造 しないし、軽自動車も製造しない。しかし、ホンダは二輪車も、軽自動車も、 4輪車も製造する。どちらがいいかは別にして、トヨタは明確にやらないこと を決めている。 ●中小企業も、やらないことを決めて特化すればいい。他社と似たようなこと をやっても、消耗戦になる。飲食店ならその店を名物料理を明確にすること だ。最高なのは、一品もので世間に通用すればいい。そうなると少人数で仕事 も効率化し、精鋭になるはずだ。その製造技術をとことん磨くから、ますます 品質は上がるし、技術も磨かれる。特化することは恐いことだが、恐れずに チャレンジするべきだ。漫然と、何でもありというやり方は、これからは通用 しない。それは、高度成長期のビジネスで、少子高齢化する今後は特化するこ とだ。 ●特化すると明確に方針が決まれば、それに沿って組織も、体制も、設備も、 技術も集中できるようになる。いろいろなことに、一杯手を出すと横に広がっ て収拾がつかなくなる。在庫も、材料も、設備も一杯持つようになり、総資産 の額が膨らむ。成長より膨張のイメージが強くなり、気が付けば人も多く、ム ダな仕事を一生懸命やっている。以前は人が少なかったから、そんな業務はな かったのだが、知らない間にそういう仕事がたくさんできてしまった。誰もそ れを止めようとしないから、どんどん業務が膨張していく。 <少数にすれば必然的に精鋭化する> ●高度成長期は売上をとにかく増やして、それに伴い人もどんどん増えていっ た。多くの従業員を雇用できるのは、ある意味地域や社会に貢献していると言 えるだろうが、それが原因で赤字が連続するのは良くない。少数にして、その 少数の人に多くの配分をしてあげたほうがいい。一人女子社員が退職したら、 残った人数で業務を見直し、ムダな仕事を止めて残った人員でカバーする。最 低限の業務量を少し上回るくらいの水準に人の数を合わすくらいのつもりでや ればいい。どうしても溢れるなら、何が溢れるのかを見なおす。 ●それでも、会社や組織と言うのはムダな仕事を作り出す。だいたい、組織は そもそもそのようにできている。広い事務所に移転すると、格納する場所があ るから、要らない資料でも捨てないで置いてしまう。事務所も定期的にレイア ウトを変えて、小さな引っ越しをしないとムダなものが周囲に一杯たまる。捨 てることに躊躇することが多いが、思い切って捨てても大した影響はない。過 去に、幾多の引っ越しを指揮したが、捨てたもので失敗したことはほとんどな い。一回捨てた段ボールを開梱した記憶はあるが、その一回だけだ。 ●人も多少多いと余分な仕事をする。本当にどこに人材を投入するのか。単な る作業なら社員がすることに意味があるのか。自社の社員がやらないといけな いことは何か。どんどんそれを突き詰めていくと、意外と最後に残ることは少 ない。これは外部の会社に頼めるなという業務が意外とある。それを決断する のは代表者や経営トップしかできない。思い切って、やらない業務を決めて、 少数で精鋭にやる方法をとことん突き詰めて考える。妥協せずに、考える。や さしい経営者の方は、これが苦手だ。決断することが経営者の仕事なのだか ら。