**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第737回配信分2018年06月11日発行 これからの中小企業経営の重要課題 これからの企業の事業価値向上戦略7回シリーズ:その7 〜経営者の器量を伸ばして大きくする〜 **************************************************** <はじめに> ・事価値を高めるためにいろいろとやらないといけないことを縷々書いてきた が、最終的には中小企業の事業価値は経営者、代表者、社長の「器量」で決ま る。「器量」という言葉の解釈は多様にあるだろうが、つまるところ人間力に 起因する。「器量」という漢字の「器」という字は、四角の入れ物を4つ書い てその中に「大きい」という文字が書いてある。この漢字を造形した古人は天 才だと思うことがある。実に言葉の意味を漢字が的確に表現していると、いつ も感心している。経営者は自分自身の器量をいかに高めるか、その努力の結果 が自分の会社の事業価値を高めることに直接つながる。 ・四角の入れ物のまず一つ目は人柄だろう。どんな企業でも、大企業でも中小 企業でも、ベンチャー企業でも、すべての企業で代表者の人柄は重要だ。人柄 を一言で表すのは難しいが、性格でもあり人当りでもあり、人望でもある。と にかく経営者に性格や能力が向いていようといまいと、どうしてもその立場に ならざるを得ない境遇の人は、天命と思って人柄を磨くことに注力しないとい けない。人柄は自分で評価や判断をするものではなく、外部や周囲が評価し判 断するものだ。自分で決めるものでもない。周囲の人間が自分をどのような人 柄の人物と評価しているか。それを知ることはなかなか難しい。 ・人柄という要素は一朝一夕には形成されない。生まれてからの育ちの影響も あるだろうし、性格は簡単には変わらないが、行動は意識をすれば変わる。ま ず、自分の人柄のどこをどう伸ばして、どこをどう変えないといけないか。こ れは自分ではなかなか分からない。分からないなら、外部から周囲から言って くれる人がいないといけない。直接の近い利害関係者はなかなかものが言えな い、言いにくいから、積極的に自分で仕掛けてそういう人と近しい関係になっ ておかないといけない。奥さんなどは近すぎて難しい。特に会社の外部の人間 で利害関係のない人がいい。 <自分が足りないところを自覚する> ・「器量」の2番目の四角、箱は能力だろう。能力は生まれつきのものもある だろうが、ほとんどがあとから備わるものだ。努力を重ねて、いろいろと学習 をして、そして経験して自分のものになる。机の上で学んだだけでは不十分 だ。それは知っているだけで、できることとは違う。学習することは重要だ が、経営者はその学習したことを利用活用して、事業を営み、結果を出さない といけない。結果については企業によって評価の基準が異なるので、何が結果 を表す指標なのかは決めておかないといけないが、いずれにしても企業を成長 さすことが結果を出すことにつながる。 ・知識として学習したことは、反復し活用し経験しないと、時間が経過するに 従ってどんどん毀損していく。つまり能力とは、何かができることであり、結 果を出せる力なのだ。これも一朝一夕に備わるものではなく。日頃の習慣や日 常生活の過ごし方などに大きく影響される。突然何かを始めたから、すぐにい きなり結果が出せるものではなく、小さな努力の積み重ねが大きな結果を生み 出す力の元になる。面倒なようでも正道を歩いて、手間なようでも時間とエネ ルギーをかけて、こつこつやる人が最後に笑うことになる。ビジネスに一攫千 金はあり得ない。あったら、すぐにメッキが剥げる。 ・経営者が経営に必要なすべての能力が完璧に備わっているということは、お そらくあり得ない。あり得ないので、自分自身はどういう能力が不足している のか、欠けているのか、それを自覚することは非常に大きな意味がある。不足 している能力がわかったら、補うのにどうすればいいかを考える。すべてを備 えることは難しいから、足りない部分は外部から吸収するか、外部から補てん をしてもらう。数字に弱いなら数字に強い人にその部分を委嘱する。マーケ ティングに弱い社長はその部分を外部からサポートしてもらう。自分が足りな い部分を自覚することから始まる。 <リーダーシップを発揮する> ・3番目の箱、器は、リーダーシップではないかと思う。人柄が良く、能力が 備わっていても、リーダーシップが取れないと経営者は務まらない。ナンバー ツーの役員は黒子でもいいが、世の中にその会社の代表取締役であり社長とい うポジションにいる人は、一人しかいない。その経営者にリーダーシップとい う要素が備わっていないと、非常に不幸な結果になるケースが多い。組織の トップは野球で言えば監督だから、監督にリーダーシップが欠落していると、 100回試合をしてもまず勝利は望めない。では、リーダーシップを発揮するに は、どうすればいいか。 ・そもそもリーダーシップとは何かということから始まるだろう。諸説あるだ ろうが、成岡の解釈では、「周囲に影響を与え」「全員の気持ちをひとつにさ せ」「結果を出すこと」になるだろう。影響の与え方は、その人の能力やスキ ル、経験などで異なるから、一概にこうだとは言えない。しかし、組織のトッ プだから必然的に、そういう影響力を行使できる立場にいるはずだ。むしろ2 番目の全員の気持ちをひとつにさせことのほうが難しい。組織にはいろいろの 人がいるだろうから、各自のベクトルを一致さすのは、そうとうの努力がい る。それができれば、結果は出るだろう。 ・企業は毎日、毎日、いろいろな相手と戦っている。競争相手と戦うのもある し、コストを削減することと戦っている場合もある。急に原材料が高騰して も、誰も助けてくれない。その原材料のコストアップを最終価格転嫁で吸収で きるなどという中小企業は稀だろう。みんな我慢して、頑張って、何とかその コストアップを合理化などで吸収しようと必死なのだ。そういうマイナスの状 況のときにこそ、トップの立場の人のリーダーシップが必要なのだ。特に、逆 風の風が吹き、業績が厳しい時にこそ、トップがリーダーシップを発揮して、 その難局を乗り切らないといけない。 <毎日器量を伸ばすことを自覚する> ・4つ目の器、箱は、経営に対する意思と覚悟ではないだろうか。いくら人柄 がよく、能力があり、リーダーシップが備わっていても、立派に経営を行うと いう「意思」と「覚悟」がないとうまくいかないだろう。成岡は、この意思と 覚悟が足りない経営者の方を、今まで嫌というほど多く見てきた。また、自分 自身に振り返っても、本当に意思と覚悟があったのかと言われると、正直返答 に自信がなかった時期がある。一番それを感じたのは、移籍して経営陣の一角 で頑張っていた出版社が破綻したときだろう。代表取締役だった義兄を経営能 力不足が原因だと、彼の責任に転嫁した。 ・このことを自覚したのは、破綻した会社に永く勤続し代表取締役の東京秘書 を自認していたベテランの女性社員の方だった。「破綻した責任をいつまでも 人をせいにしていては自分自身の成長は望めない」と諭された。その一言で はっと目が覚めた。その当時、バブルの絶頂で舞い上がっていた身分から、破 綻企業の同族一族役員と言う立場になり、あっという間にジェットコースター のように奈落の底に突き落とされた。自宅が担保に入っていたので、競売にも かかった。会社から借金して購入した自社株が紙屑になった。すべての原因を 他人のせいにしていた。 ・要するに、経営をしていく意思と覚悟がなかったのだろう。いや、なかった のではないが極めて小さく少なかったのだろう。一念発起してやり直したの は、みなさんご存知の通りだ。経営者は常に自分を磨く努力をし、器量をこの 4つの方向に伸ばし、大きく拡げないといけない。なかなかできないことだ が、自覚している人といない人との差は大きい。毎日意識をして行動し、考え ていれば、ヒントは溢れている。気が付かずに、チャンスが目の前を通り過ぎ ていることが、なんと多いことか。常に器量を伸ばし大きくすることが、自社 の事業価値の向上に間違いなくつながる。そう信じることだ。