**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第744回配信分2018年07月30日発行 これからの中小企業経営の重要課題 経営者の自分磨き7回シリーズその7 〜率先垂範し手本を示す〜 **************************************************** <はじめに> ・経営者としての資質にはいろいろとあるだろうが、一番大事なものは組織を 引っ張るリーダーシップだろう。方向を決めて、見本や手本を示して、みんな を同じ方向を向かうように動機づけをする。そして、結果を出して組織の活性 化を図るようにする。言うのは簡単だし、書くのはもっと簡単だが、実際にこ れをきちんと実行するとなると、非常に大変だ。しかし、経営者の仕事はこれ に尽きる。毎日、毎日、このミッションを達成するために孤軍奮闘することに なる。終わりのないマラソンを走っている。 ・テーマによっては自分が苦手な場合がある。営業が得意な経営者に、数字の 資料を作成する宿題が出ると、途端に機嫌が悪くなる。なかなか期日のぎりぎ りまで手に着かない。おっつけ一夜漬けになり、内容も伴わない。逆もある。 数字に強い経営者の方は、そのほうにばかり関心が行く。一番大事な最前線の 顧客との対話の場面に出ない。営業は苦手だから、営業の責任者にお任せで現 場の情報は自分で確かめようとしない。どちらも良くないが、すべてが完璧と いう方にはなかなかお目にかかれない。 ・勉強なら不得意な科目は家庭教師をつける、学習塾へ通う、夏休みの集中講 義に行くなどそれなりに対策はある。しかし、経営者の方の場合は自らが動か ないと、周囲からいくら勧めても本人がその気にならない限り、ことは一向に 動かない。そのうち、意識がどんどん薄くなり目先のことに気が行く。そし て、数か月したらまたもとの木阿弥になる。この繰り返しをしている限り、会 社の状態は何ら変わらないし、良くならない。そして、一定期間経過後、また 同じことを繰り返す。なかなか直らない。 <不得意な部分は他から補う> ・不得意な部分は何らかの形で補って、カバーして、自分の得意技を十分発揮 し、小さな成功でいいからどんどんことを進める。従業員や社員は黙っている が、経営者の態度、行動などは非常によく見ている。中小企業では、従業員も 50名いれば大きいほうで、ほとんどが50名以下の企業が多い。50名以下だと事 業所としては1か所に収まるから、ほとんどのメンバーの顔と名前は一致す る。逆に、細かいことまで全部見られている。それだけに意思疎通は図りやす いが、マイナスの情報もあっという間に伝わる。 ・手本を示すのは、そう簡単ではない。失敗を怖がって、恐れて、自ら手を下 さない経営者の方もあるが、それは逆効果だ。失敗は失敗、うまくいかなかっ たことはいかなかったとして、甘んじて事実は事実として受け入れないといけ ない。そして、反省をして、教訓を得て、次回からは何らかの改善、改革がな される。そして、次回は改良型のバージョンで前回の失敗を乗り越えた結果を 出すように努める。この地道な努力を継続して行うことが大事なのだ。1回 やってしばしお休みではいけない。 ・そして、成功した方式を社内に伝播する仕組みを作っておかないといけな い。事業承継を行い、後継者に引き継いで途端に業績が悪くなったという会社 もある。先代のノウハウがなかなかうまく引き継げないという企業も多い。ノ ウハウには人脈も含まれるから、そのすべてを100パーセント引き継ぐことは 難しいだろうが、最大限の努力をして後継者もしくはそれに準じる人にきちん とバトンタッチをしておかないといけない。これが結構難しく、ここで大きく つまずく企業も多い。承継を業績悪化の理由にしてはいけない。 <ノウハウを次世代に承継する> ・現在の経営者にはそれなりの経験とノウハウがあり、これが中小企業の場合 大きな企業価値になっていることが多い。特に創業者の場合、そういうケース が多い。手本や見本を示せるのも、現在の経営者だからできることであり、こ れが大きな事業価値向上の源泉になっている。これを何とか次世代に承継する ことが、現在の経営者の大きな責務なのだが、なかなかこれがはかどらない。 そうすることが自分の賞味期限を早めるとでも錯覚しているふしもある。決し てそうではないが、引退を早めると勘違いする。 ・なかなか現在の得意先を引き継がない。自分しかできないと勘違いしている ので、誰も次を指名しないし連れてもいかない。しかし、よくよく考えれば何 がその価値の源泉になっているかだ。意外と技術や知識、経験やノウハウと いった無形の資産ではなく、単なる永いつきあいのうえの人間関係ということ も多い。親しい間柄というなら、先方の担当者が交代したら、そのような価値 はあっという間に毀損する。まして、先方の経営者が代替わりしたなら、こち らも次世代に代替わりしないといけない。 ・会議でもそうだ。言っていることと、やっていることが違うというケースが よくある。当初の計画では売上至上主義を捨てて、今年度は利益重視で行くん だといいながら、毎回の会議では売上、売上と以前と何も変わらない。少し売 上が落ちて来て、収益力が低下すると、途端に前言を翻して売上至上主義に 戻ってしまう。売上の好調さは七難隠すとよく言うが、本質的な課題や問題点 が見えなくなる。好調だと錯覚し、脇が甘くなり不要でムダな経費が増加す る。社長の車が新車になるのも、こういう時期に起こる。 <自ら反省しチェックし修正する> ・常に率先垂範することは、なかなかできることではない。しかし、できなく ても常にそれを意識している経営者と、漫然と意識せずに成り行きでやってい る経営者とでは、短期間では差がつかないが、少し長期の視点で見ると大きな 違いを生んでいる。怖いのは、実は誰もそういうことを経営者であるトップに もの申せない雰囲気があることだ。やはり、従業員からすれば経営者には近寄 り難い雰囲気がある。まして、指摘をするなどとんでもない。つまらないこと を言ってご機嫌を悪くされたら、まずい。 ・となると周囲に厳しいことを言ってくれる人がいなくなる。税理士さんが一 番接触が多いかもしれないが、大きな税理士事務所になると担当者が訪問し て、大先生は社長と会わないこともある。1年間に1回の決算のときだけお邪 魔して、数字だけを見て能書きを延々としゃべる先生もある。ちっとも現場の ことは分かっていないのに、難しいことだけを難しく説明して、自分の存在価 値をアピールする。そんなことより、いまこの企業で何が課題なのか、問題な のか。それを指摘するのが本業のはずだが。 ・本来、経営者と言う立場の方が率先垂範し、現場で手本を示し、全員がそれ を学習して組織が成長するのが理想なのだが、ことはそう簡単ではない。経営 者でも人間であり、感情に支配されることもあるから、常に意識が高く行動出 来ているかと言われると、必ずしもそうではないだろう。それはそれでも構わ ないが、修正し軌道を元に戻すエンジンがないと修正が利かない。PDCAのCの 工程、すなわち反省し、チェックする機能が正常に働くような仕組みを作るこ とこそが、経営者の一番大きな使命かもしれない。