**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第748回配信分2018年08月27日発行 これからの中小企業経営の重要課題 経営者としての心構えを伝える7回シリーズその4 〜ビジョンと現状のギャップが課題〜 **************************************************** <はじめに> ・将来こうありたいという経営ビジョンが明確な企業やお店は、当面の課題が 明確になっているはずだ。なぜなら、将来のビジョンと現在の状態とのギャッ プを克服することが課題になるからだ。将来のビジョンが曖昧であったり、明 確にイメージできていないと、何を課題とすればいいのか分からないはずだ。 何が課題か分からないなら、対策の打ちようがない。よく言うのが、課題や問 題点が明確になれば、8割できたのも同じだと。意外と課題や問題点が明確に 分からないのが現実なのだ。 ・課題や問題点が明確にならないのは、2つの原因がある。ひとつは将来のビ ジョンが明確になっていないからだ。来年、3年後、5年後にこうありたいと いう明確なイメージができていないと、これから何をどうしていいか分からな いはずだ。闇雲に霧の中にゴルフのティーショットを打っているようなもの だ。気が付けば、違うホールにボールを打っているかもしれない。一度違う方 向に踏み出すと、なかなか戻るのが難しい。気が付けば、時間と資金を相当ロ スしている。 ・もうひとつの原因は、自社の現状をきちんと認識、把握していないからだ。 特に、設備、従業員、資金、仕入先、得意先、金融機関など比較的目に見えて 把握しやすい経営資源と、形にならないノウハウやブランドなどというつかみ にくい経営資源とがある。いろいろな経営資源を活用し日常の事業活動を行っ ているのだが、すべてをきちんと把握している経営者の方は少ない。当然自分 が得手で得意な分野はよくご存じだが、不得手な分野もあるはずだ。特に、職 人的な性格の方は現場には強いが経営面は弱い。 <現状をきちんと把握する> ・自社の現状をきちんと把握したうえで、将来のビジョンが明確なら、その 差、つまりギャップが課題となる。いろいろな課題があるだろうが、まずは現 状を客観的に正確に把握することと、将来のビジョンを明確にイメージするこ とだ。その差が非常に大きいのか、多少の努力で埋まるのか。あまりにギャッ プが大きいと、ビジョンが独り歩きしてビジョンがビジョンにならない。絵空 事になり、半分ほらを吹いているようになる。でっかくぶちあげるのはいい が、それはスローガンであり、ビジョンではない。 ・多少の努力で埋まる課題は、むしろ日常対応しないといけない課題だ。のん びりやっている時間はなく、最優先で取り組まないといけない課題だ。将来の ことではなく、今日、明日、今週、今月に対応する課題になる。1年先、3年 先、5年先の課題は方針を決めてじっくり取り組まないといけない。要する に、課題にも優先順位があって緊急性の高いものほど優先度が高い。重要なも のほど、急がないので優先度が後回しになる。現場は緊急度の高いものから取 り組み、経営陣は重要度の高いものから取り組む。 ・現状をまず正確に把握すると書いたが、これもなかなか難しい。経営者の得 て不得手も大きい。特に数字に弱い方も多く、経理財務はあなた任せになる ケースが多い。ご主人が現場でバリバリ活躍する企業ほど、おカネの面での興 味関心は低い。おっつけ奥さんや経理担当者の女性の方が資金繰りやおカネの 面の面倒を見ている。将来のビジョンを描いても、資金面での手当ができてい ないとビジョンも絵に描いた餅になる。現状も資金繰りに難儀している企業な ら、まずおカネを落ち着かすことが優先だ。 <手順前後を起こさない> ・課題は何か、という問いに明確に即座に答えられる経営者の方は少ない。そ れも、短期、中期、長期でどうですか、と聞くと混乱してくる。短期は当面、 中期は1年から3年、長期は5年から10年というのが相場観だが、そう簡単に 切り分けられるものではない。それと、将棋や碁ではないが手順前後を起こす とよくない。3年後の課題を解決するには、まず直近この課題をクリアーしな いといけないということの、順番がきちんと系統だてて分かっていないといけ ない。往々にしてそうはならない。 ・一昔前によくあった話しは、社長が外部のセミナーに行ってこれからはWEB の時代だと吹き込まれて帰ってきた。当時、自社のホームページがないことを 知らされて突然やれITだ、WEBサイトだ、デジタルだと言い出した。当時、社 内にその方面の知識がある人は皆無だったのに急にホームページの作成を外部 の業者に依頼した。相当高いコストをかけて作ったホームページだが、誰もが 興味関心がなく、そのうちにほとんど更新もされないまま、ほったらかしに なった。よくあった話しだ。 ・課題は明確だったが、手順を間違った。免許証もないのに車を買ったような ものだ。やはり、ものには順番がある。学校の授業のように順番に勉強してい かないと、いきなり因数分解や三角関数を教えても、ちんぶんかんぷんにな る。代数の基礎を学んだうえで、次のステップに進むのが正しい。しかし、ビ ジネスはそうは言っていられない場合もある。段階を踏んでなどとのんびり構 えていると、置いてきぼりにされるリスクが高い。高いなら、それ相応の覚悟 をもって対処しないといけない。 <環境変化に柔軟に対応する> ・ビジョンを明確にしたら、次に自社の現状をきちんと把握する。ビジョンと 現状のギャップが課題だから、ギャップの大きさや内容によって課題の仕分け を行う。仕分けができたら優先順位をつけてみる。優先順位をつけたら、その 課題を誰が主に担当するのかを決める。全部代表者がやることは不可能だろう から、誰かに課題を振らないといけない。その際にご子息や後継者がいらっ しゃれば、格好の課題になる。そして、時間のイメージを決める。いつまで に、が非常に大事なのだ。 ・時間のイメージによっては、非常に急ぐ場合がある。また、3年くらい先ま でに解決する課題だと、少し時間の余裕がある。この時間の感覚が非常に重要 であり、これによって緊急度が変わってくる。そして、次に考えるべきは費用 だ。どれくらいの費用がかかるか、概算でいいからざっと費用のイメージを 作っておく。莫大な費用がかかる場合もあるだろう。そうなると、ことはそう 簡単なことではない。新工場の建設とか、新しい設備の導入とか、そういう場 合は相当構えて考えないといけない。 ・繰り返しになるが、まず経営理念があり、それに沿った将来ビジョンを考え る。ビジョンのイメージが明確になれば、現状とのギャップを冷静に考える。 それが課題なのだ。当面の課題、中期の課題、長期の課題と時間軸で分けて、 それぞれの内容を深く掘り下げる。優先順位を意識して、担当者を決めて、具 体的な進行手順を決めていく。決してイメージ通りにことは運ばないし、経営 環境も変化がある。柔軟に対応することが大事だ。一度決めたら終わりではな い。