**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第751回配信分2018年09月17日発行 これからの中小企業経営の重要課題 経営者としての心構えを伝える7回シリーズその7最終回 〜事業計画を作ることに注力する〜 **************************************************** <はじめに> ・事業計画があるのとないのとでは、大きな違いがある。計画があっても、ど うせその通りはいかないから、あっても意味がないという人がいるが、それは 間違い。計画はあくまでも計画だが、計画は仮説。仮説だからできるか、でき ないかはやってみないと分からない。分からないが、計画を立てた時点では、 こうありたいと思っていた仮設だから、その仮説と実際がどれくらい違ってい たのかを検証することが大事だ。計画通りいかないことは、先刻承知。いかな い理由を検証することが大事なのだ。 ・計画は3年後、5年後のイメージが固まってから、そこからスタートする。 決して来年から始まらない。来年は、3年後の1年目、5年後の1年目という 解釈で考える。来年から考えると、来年は今年度の翌年という位置づけにな る。そうなると、現状から出発するので、どうしても現状を引きずってしま う。3年後にこうありたい、5年後にこうありたいという将来ビジョンから計 画は出発する。まずは、3年後、5年後の自社のありたい姿を考える。その姿 と現状とのギャップが課題なのだ。 ・課題は問題点だから、問題点が分かると解決策も見えてくる。問題点が分か らないと、解決策も分からない。よく言うが、問題点が分かれば8割解決した のも、同じだ。問題点が明確に分からないから、迷ってしまう。ああでもな い、こうでもないと、試行錯誤して、時間とエネルギーを浪費し、最後は違う ところに行ってしまう。そうならないように、課題が、問題点が明確にわかれ ば、それは大変素晴らしい。まずは、3年後、5年後のビジョンを明確にし、 現状とのギャップを課題と認識する。 <120%の成長を織り込む> ・3年後、5年後の自社のこうありたいという姿から事業計画は出発する。3 年後のビジョンからさかのぼり、その1年目が来年度なのだ。来年度は今年度 の翌年だから、それがあまりに今年度とかけ離れたものではおかしい。いきな り月にロケットを飛ばすようなもので、それはあまりに実現可能性に乏しい。 やはり、頑張れば手が届くというイメージがないといけない。理想は理想だ が、絵に描いた餅になってはいけない。頑張れば手が届くというのは、120% くらいのイメージだ。120%という数字が大事なのだ。 ・成長のイメージは、頑張れば手が届くということだ。頑張る程度は人によっ て異なるから、一概に言えないが個人的には120%くらいというのが理想だと 思う。110%では普通に頑張ればできそうだし、130%以上は現実とかけ離れ る。感覚的には120%くらいの成長ができれば、確実に中身は変わっていくは ずだ。それも、毎年、毎年120%の成長を刻むのは容易ではない。いろいろな ことが起こるし、環境が変わる。環境が変われば前提条件が変わる。そんな環 境の変化は、なかなか計画に織り込めない。 ・計画はあくまでも計画だが、計画があるのとないのでは、大きく異なる。ま ず、計画がすべての基準になる。売上、原価、経費、利益などの損益面。資産 と負債の貸借対照表。そして、現実の資金収支。そして成長を担保する設備投 資。それらをすべて網羅している事業計画は、すべての経営の基準となる。そ の基準がないと、何を目指してやるのかが分からない。おカネを何に、いくら 使っていくのかが分からない。将来の姿がないと、不要なもの、要らないもの に多額の投資をしてしまう。 <設備投資は大きな要因> ・投資の間違いは、非常に多い。思い付きの投資で、将来のあるべき姿と全く 違う方向に行ってしまうことは、よくある。大企業でもよく間違えるのだか ら、中小企業で投資の間違いが起こるのは避けられないことも多い。しかし、 将来のビジョンが明確で、そこに至るまでの課題や問題点が明確なら、投資の 失敗、間違いは最小限にできる。何事にも基準があれば、その基準に対してい いか、悪いかを判断、判定できる。基準がないと、成り行き、その場その場の 場当たり的な判断で行ってしまう。 ・間違った投資は、よくあることで、間違った場合は取り戻そうと思わないこ とだ。間違って買ってしまった商品や在庫。これを売って取り返そうと、か えって費用がかかって傷口が大きくなる。失敗したコストは、サンクコストと 言って「サンク=沈んだ」コストなのだ。深い海底に沈んだコストで、二度と 浮上しない。浮上しないのだから、もう諦めて追い銭をかけてはいけない。こ れも、計画が明確にあると、何が間違いの投資なのかが、一応わかる。計画が ないと分からない。すべては計画を基準にものごとを考える癖をつける。 ・設備投資は、なにもすべてが前向きな投資ではない。現状の設備を維持する 投資も多い。更新投資といって古く老朽化した設備を新しくする。その際に新 しい技術や品質が期待できるものはいいが、単に古くなったので取り換えない といけない投資も多い。屋上の空調機が古くなった、エレベーターが老朽化し て危ない、建物の壁が傷んだので修理する。こういう投資はほとんど利益を生 まないので、投資回収と言うことにはならない。しかし、企業ではこうした更 新投資が多い。多額の投資が必要となる場合もある。 <事業計画を考えるには準備が必要> ・自社の事業計画をどういうメンバーで考えるかということは非常に大事なこ とだ。メンバーの選定を間違うと、話しがあさっての方向に行ってしまう場合 が多い。慣れていない企業なら、まずは役員メンバーで始めてみてはどうだろ うか。あまりに経営のことに関与していない人が大勢入ると、中身が経営のこ とに行かない。日常の子細な課題のことに終始して、大事な3年後、5年後の 自社のビジョンなどと相当かけ離れた中味の議論になる。やれ、トイレが汚い とか賞与が少ないとか。 ・まずは経営に直接関与している一族親族の役員などと議論を始めるのがい い。そんなメンバーがいないなら、いい機会だからまだ平社員でもいいから後 継者の息子さんと話しをしてもいい。そして次に選ぶのは場所だ。会社の応接 室や会議室なら便利だが、そこは日常をどうしても引きずってしまう。周囲に あるもの全部が日常の業務と関連している。電話がかかり、社員がうろうろ歩 いている。そんな日常の環境の中で、改まって3年後、5年後のことを真剣に 考えられない。外に出るのがいい。 ・ただし、しっかり準備をしないといけない。いきなり手ぶらで集まって、さ あ3年後、5年後を議論しようとしても準備体操をせずにいきなりマラソンを 走るのと同じだ。数か月前から、過去の実績を一覧にした数字の資料を作る。 過去10年間の大きな出来事を並べてみる。設備投資の一覧表を作成してみる。 人の出入りの資料を作る。得意先の上位10社の過去10年間の推移を調べる。な どなど、準備に時間とエネルギーをかけることが大事だ。これをせずに集まっ ても時間の浪費をするだけだ。段取り8割、当日2割だ。主催者の意気込みが 問われる。