**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第752回配信分2018年09月24日発行 これからの中小企業経営の重要課題 事業計画を作成する:その1 〜自社を取り巻く外部環境の変化に対応する〜 **************************************************** <はじめに> ・前号で事業計画を作ることの重要性を訴えたが、果たしていきなり事業計画 を作成と言われてもぴんと来ない。では、まずどういうところから手を付けた らいいのだろうか。いろいろと準備することは多いが、自社の経営資源の分析 は比較的可能だから、今回は外部環境、経営環境の見方について少し書いてみ たい。経営とは、とよく言われることだが、経営とは社会の変化に柔軟に対応 することだと、かの有名なフレーズがある。ダーウィンの進化論にも、そうい う著名なくだりがある。 ・曰く、大きな生き物、強い生き物が生き残ったのではない。変化に柔軟に対 応できた生き物だけが生き残ったのだ。かの巨大生物の恐竜も死に絶えた。小 さな動物でも、外部環境の変化、例えば気温の変化、氷河期の到来などに耐え て、しのんで生き延びた種だけが残っている。これは、動物、植物に限らず、 永遠に正しい。よって、企業も会社も組織も、外部環境の変化に柔軟に対応で きたものだけが生き残れる。奢れるもの久からず、盛者必衰の理とは、このこ とだ。今がいいからと慢心してはいけない。 ・この外部環境の変化を読み解き、将来を見通すことが難しい。そんなことが 分かっていれば、誰でも会社の経営など簡単にできる。それが分からないから 苦労するのだと、みなさん考えている。まさにその通りで、誰もが将来の経営 環境を予測することなど、簡単にできない。また、従事されている業界によっ ても全く環境は異なる。製造業、加工業、卸売業、小売業、サービス業などと いうのは古い分類で、最近ではその境界線、ボーダーラインも不透明になって きた。何をやっている会社か分からない。 <業界により外部環境は異なる> ・いずれにしても、その業界ごとに外部環境は大きく異なる。自動車関連、半 導体関連などは、今後の変化は激しいだろう。食品関係は、意外と安定してい るが消費者直結のビジネスなので、はやりすたりがある。嗜好性の強い商品だ から、常に飽きられないように目新しいものを出し続けないといけない。一方 ではロングセラーの定番商品も必要だ。変わらないために、変わり続けるとい う名言があるくらいだから、環境の変化に合わせて変わり続けないといけな い。変わり続けるには、外部の変化を読み解く必要がある。 ・外部環境を読み解くキーワードは、PESTだ。PはPolitics、つまり政治。政 党がどこかということではなく、政治の動向に基づき法律、法令、規則などが 改訂される。世の中が規制の方向に行くのか、オープンになるのか、許認可制 だったものが、届け出制になるのか。政府主導でことが進むのか、開放型に向 かうのか。発展的に考えたほうがいいのか、保守的に考えた方がいいのか。 ケースバイケースだが、日本国内では中国政府のようにいきなりのお達しはな い。数年前からかなりの内容がリリースされている。 ・発表された時点では、あまり気に留めていないことも時間の経過に連れて、 いよいよことが現実味を帯びてくる。本気で対応を考えないといけない次元に なってくる。まともに考えると、その法規制に対応するには人材がいない。多 少の投資資金も必要だ。しかも、時間がかかる。今日言って明日に結果が出る ことはない。他の企業でトラブルがあり、一挙に規制が厳しくなることもあ る。海外からの圧力で、それまで規制で守られていた業種がいっぺんに大変な ことになる。そういう例は枚挙にいとまない。 <経済と社会の環境変化> ・次なる大きな変化は経済全体の変化。人口構成の動向や、海外発展途上国の 台頭、中東とアメリカとの関係、生産年齢人口の減少、少子高齢化のいっそう の進展、住宅環境、交通インフラ環境、医療などの社会的なインフラの変化。 賞味期限の切れかけた道路、橋などの交通インフラ。情報化社会の急激な進 展、フィンテック技術の進化、金融環境の駅編など、これもあまりに最近急激 すぎてついていけない企業も多い。逆に、ベンチャーなどはここがチャンスと ばかり、一気呵成に仕掛けてくる。 ・為替や貿易の動向も見逃せない。いずれ日本の国内市場は縮小する傾向は間 違いないから、海外に目を向けるのは必定だ。なので、昨年から遅まきなが ら、成岡も海外に目を向けて1年に数日は海外に積極的に出かけるようにして いる。数日滞在しただけでは分からないが、しかし現地において肌感覚でその 国の空気、風土、文化に触れることは、非常に意義がある。百聞は一見にしか ず。まずは、出かけて行って実際に自分の目で見て確かめる。それが一番大事 だ。また、そういう時間を積極的に作らないといけない。 ・あとは、社会の変化。特に上述した人口動態の変化で、社会がどのように影 響を受けるか。少子化は学校教育分野をまともに直撃する。しかし、すべてが 縮小するかといえば、それはそうでもない。生き残り勝ちもあるし、アイデア によってはさらに高付加価値化に進むこともあり得る。高齢化もすべてがネガ ティブではない。高齢化の進展をビジネスチャンスととらえて、積極的に事業 展開している企業も多い。要するに、前に一歩踏み出す勇気が持てるかどうか だ。決断して、勇気を持って進めるか。 <代表者の失敗は投資> ・最後のTはテクノロジー。技術の進歩は早い。昨日まで新しいと思っていた ことが、数年で陳腐化する。半導体のムーアの法則も成り立たなくなってき た。特に情報化の進展は早く、4G、5Gの世界がもうすぐそこにやってくる。 いったい、何がどのように変わるのか予測がつかない。しかし、その予兆はい ろいろなところで報道されている。新聞を細かく読んだり、TVのビジネス番組 を見ていると、傾向がおぼろげにでも浮かんでくる。都銀の支店とATMがどん どん縮小になるという。これなど、いい例だ。 ・これらの予兆が変化の前触れであり、今後どうなるかを推測することは難し い。難しいが、企業が継続するには何らかの手を打って対応しないといけな い。現在のビジネスは、そこそこ順調だが、もうひとつ柱を作っておかないと 危ない。一本足打法では、スランプに陥いると長引く。しかし、そう簡単にも うひとつの柱を立てるのは難しい。しかし、難しいからと放置すれば、いずれ そのツケは自分のところに戻ってくる。それも、想定以上の速さで影響が出始 める。 ・代表者の失敗は投資であると、喝破した人がいる。従業員の失敗は教育であ る。このように割り切って、勇気ある一歩を踏み出す。それは、十分に今後の 社会の環境変化を見据えて、自分なりに情報を集め、外部に勉強に行き、いろ いろな人に会って意見を聴くことだ。親しい人とゴルフにばかり興じていたの では、情報は集まらない。積極的に今まで縁のなかったところにボールを投げ ないといけない。ボールが返ってこなくても、投げ続ける。そんな強い意志が ないと、生き残りは難しくなる。想いと志しが重要だ。