**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第762回配信分2018年12月03日発行 これからの中小企業経営の重要課題 経営する上での重要なキーワード:その4 〜やってみせ、言ってきかせて、させてみせ〜 **************************************************** <はじめに> ・山本五十六という太平洋戦争の大将を務めた人の名言に「やってみせ、言っ て聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」 というのがあるの は、よくご存じの方も多いはずだ。しかし、これには続きがある。後半は「 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」。「 やってい る、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」。ここまで、全部知って いる人は少ない。特に最初のフレーズだけでもいいのだ。これにはいろいろな 多くの示唆に富んだ内容が盛り込まれている。 ・まず、「やってみせ」とは、自らが手本となるような所作をすることだ。自 らが汗をかき、自らが動き、自らが手を下すことが必要だ。口先だけで指示し ても、今の若い人は動かない。自分自身で納得しないと動かない。いや、納得 しても動かない。まずは、上司や先輩が手本を示すことだ。製造業なら金属加 工の製造技術の手本を示す。難しい切削加工を自らやってみせて、そのノウハ ウやコツを伝授する。いくら作業標準書を読んでも書いていないノウハウを伝 授する。作業には秘訣があるから、それを伝える。 ・営業なら客先に同行して、フロントトークからクロージングまで、一連の営 業活動を横で見ていて勉強してもらう。大事なのは終わってからで、帰りの道 すがらその会話のひとつひとつをひも解いて解説する。あの場面でこう話した のにはわけがあって、どうしてそのような会話をしたのかを、きちんと説明す る。この解説や説明がないと、会話の中味が分かっても絶対に身に付かない。 そして、ロールプレイイングで再度確認する。自分のものになるまで、相当に 時間がかかるが、一度身に付くと次第に意識しないでもできるようになる。 <まず褒める> ・「言って聞かせて」というのは、前段に書いた解説や説明だ。次に、実際に 「させてみる」。慣れないうちは非常にリスクが高い。納期の迫った仕事や、 高度な技術が要る仕事、重要な営業案件をいきなり新人が行うのは大きな危険 が伴う。もし、うまくいかなかった場合、大きなトラブルになる可能性もあ る。させてみせるなら、ケースをよく選んで、まずは練習程度の場面から入る のがいい。そして、レベルアップに対応して順番に大きな仕事、リスクの高い 仕事に移行していくのが好ましい。失敗もあるだろうし、手戻りもあるだろ う。 ・次に「褒めてやる」。出来栄えだけからすれば、まだまだという段階でも、 まずは「褒める」ことは大切だ。どんな人でも、褒められて悪い気はしない。 まず、認められたということを意識するだけで違う。特に、大勢の前で褒めら れると、気分的には非常にモチベーションが高まる。よって、まず褒める。次 に、まだまだの点を指摘する。どうしても、先に文句を言いたくなるが、まず GOODが大切だ。これを逆にしないことだ。まずBADから入ると、その時点で心 の窓が閉ざされる。そうなると何を言っても耳に入らない。 ・人は認められたということが分かっただけで、非常にモチベーションが上が るものだ。このやる気に火をつけることが大事で、逆のことをすると水をかけ ることになる。折角、少し火が付いたやる気に、逆に水をかけると一気に落ち 込む。実は、意外と現場では、このやる気に水をかけることを平気でやってい ることが多い。どうしてそうなるかというと、その人その人でやる気の源泉が 異なるからだ。百人百様で、ヒトはそれぞれ性格があり、特性がある。その、 それぞれの特性に応じて、声のかけ方を変えないといけない。 <相手の性格を理解する> ・以前に書いたかもしれないが、人の性格特性には細かく分けると9種類、少 し大雑把に言うと4種類の性格の特徴がある。まず、この4つの特性の特徴を 知って、自分はどの特性におおよそ合致するのかを知っておくことだ。意外と 自分で自分の特徴を客観的に把握することは難しい。自分より、周囲の他人の 方がよくわかっていることが多い。分からないときは、親しい周囲の知人や友 人に聞いてみる。そうすると、意外な答えが返ってくる場合がある。違うと思 わないで、周囲の他人からはそう見えているのだから、素直に受け入れる。 ・周囲にいる人の性格やタイプを知っておくことも重要だ。自分と合う人もい れば、全く理解不可能と言う人もいる。どうしてそういう風に考えるのだろう か、どうしてそういう発言をするのだろうかと、首をかしげたくなる人もい る。自分と合わない性格や態度行動の人でも、仕事や組織となるとそういう合 わない人と一緒にやっていかないといけないことが多い。そうなると、非常に ストレスになり、うまくいかない。挙句の果てに、こちらがおかしくなり、体 調不良まで引き起こす。メンタルの弱い人は特にこの点に注意する。 ・逆に、向こう側の人から見れば、こちらの発言や態度行動が理解不可能だろ う。こちらが思っているのと同じことを、先方も感じている。双方の性格が全 く反対だと歩み寄る気配すらない。そうなると、同じ目標に向かって頑張ろう というモチベーションは、さらさらない。トップは一生懸命旗を振るのだが、 そう簡単に性格は変わるものではない。性格や人間のタイプは一生のものだか ら、少々注意されたから急に変化するものではない。それくらい性格というも のは変わらないし、変えられない。 <コミュニケーションに労を惜しまない> ・冒頭の山本五十六のフレーズに、「人は動かじ」とあるが、これだけ丁寧に 「やってみせて」「言ってきかせて」「させてみて」「褒めて」も、それでも 人は動かないこともある。もういい加減に頭にきて、どうでも良くなることも ある。しかし、仕事なら成果を出さないといけない。ボランティアでやってい るのではないから、結果が出ないと意味がない。努力をしたことが仕事ではな い。結果が出て、初めて成果が挙がったことになる。それには根気が要る。そ して、相手の性格やタイプを知ることだ。 ・そのために必要なのは、会話。しゃべることだ。永年夫婦をやっているカッ プルを見ていると、ほとんど会話がないことが多い。新幹線で夫婦旅行だと思 えるお二人は、ほとんど会話がない。最近ではお互いにスマホをさわって、会 話がない。組織でも同じだ。要するにコミュニケーションの時間がそれくらい 積みあがっているのかということだ。会議でも、会社の中でも、立ち話でも、 居酒屋でもいい。成岡のわかいころは、なにかにつけて飲みに誘った。相当な 時間と費用がかかったが、それでも必要だと思って続けた。 ・会社の道路をはさんで向かい側に焼鳥屋があって、よくそこに誘って飲みに 行った。行ってからまた戻って仕事をしたことも何度かある。3人くらいでい くときは、先にカウンターの中の大将に1万円をわたして、これがなくなりそ うなら終わりにするから言ってくれと、先払いしていた。確かに相当の投資だ が、部下をもったり組織の上に立つにはメンバーを掌握する必要がある。とき には険悪な会話になることもあるが、他意がなければ許されるはずだ。とにか く、人を育てるには会話が要る。労を惜しまぬことだ。