**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第819回配信分2020年01月06日発行 2020年の年始特別号:今年を展望する **************************************************** <はじめに> ・新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。 今年もどうぞよろしくお願いいたします。さて、2020年オリンピックイヤーだ が、今年はどうなるだろうか。なかなか予断を許さないが、大胆に予測をして みたい。まず、年末から年始にかけて驚いたのは、元日産のカルロスゴーン被 告の日本脱出だ。某新聞では「逃亡」との見出しで、大々的に報道している。 日本の司法から逃れて、逮捕の手が届かないレバノンに逃亡した。国際的な組 織が関与したとの情報もあるが、日本の島国的な感覚ではあり得ない行動だ。 世界は動いていることを痛感する事件だ。 ・2020年は何と言っても11月のアメリカ大統領選挙がメインイベントだろう。 これに向かって、いろいろな事態が動き出す。まず、中国との貿易摩擦。ラス トベルトの失業率が高止まりしている状況で、トランプ大統領は徹底したポ ピュリズムを唱え一層の中国とのバトルを続けるだろう。自国主義の何が悪い という開き直りに、世界の国々が委縮する構図が透けて見える。疑惑の追及も 下院での否決で盤石になり、自信をもって選挙戦に臨むだろう。一番の気がか りは、やんちゃな北朝鮮の挑発だろうか。これだけは、なかなかコントロール が難しく、ジャブの打ち合いが続くだろう。 ・この原稿を書いている最中にイランの軍司令官がアメリカの攻撃で殺害され たとの報道が流れた。昨年の対イランの姿勢を弱腰と批判を浴びたトランプ大 統領が、人気挽回とばかりに大博打に打って出た。イラン国内では戦争が始ま るのではないかとの憶測も飛び交う中、アメリカは在イランのアメリカ人に国 外退去を命じた。中東とアメリカとの確執は今に始まったことではないが、当 面かなりテンションの高い緊張が続くだろう。日本には原油の輸入に大きな影 響が出ることが懸念される。不幸な過去を繰り返さないためにも、大人の解決 が求められる。海外情勢は、時々刻々動いている。 <五輪後の反動は必ずある> ・4月にはお隣の韓国での大統領選挙がある。現在の大統領に対するブーイン グは激しいが、誰がなってもこの難題に関する解決策は簡単には見いだせな い。何か劇的な出来事が起こって、大きく局面が展開しない限り、相当に時間 がかからないと解決しないだろう。迷惑をしているのは韓国からのインバウン ドで収益を稼いでいた日本国内企業だ。場所によっては、売上が半減し観光客 が激減した旅館やホテルもある。引っ越しできない隣人同士だから、最終的に は仲良くしないといけないがこの問題に関しては安倍政権が強硬で、なかなか 譲歩する気配が見えない。当分悪しき関係は続くだろう。 ・7月の東京五輪は経済の大きな分岐点になる可能性がある。もうほとんどの 施設は完成し、ハードでの経済効果は出尽くした。残りは運営面でのソフトの 投資や、ノウハウなどの無形資産への投資になる。ボランティアの動員も相当 な人数になるはずだし、この間の人手不足も地方では深刻だ。また、2週間ほ ど首都圏での経済活動はマヒするだろうから、この間のビジネスは停滞する。 混雑を嫌って、既にこの時期の沖縄の宿泊施設の予約は満杯になっている。海 外への脱出もあるだろうし、物流はマヒするだろう。事前の経済効果は大き かったが、該当期間のマイナスも大きい。 ・オリンピック後の経済の停滞がどれくらい大きいかは予測が難しい。しか し、どう考えても宴の後の反動は避けられない。一般人の消費性向はあまり影 響ないかもしれないが、ハードへの設備投資は当面大阪万博が始動するまで停 滞するだろう。秋口から2年間くらいは反動を覚悟した方がいい。京都市内も ホテルの建設ラッシュも一段落し、クレーンの林立は当分お目にかかれない。 数件の積み残しのホテル建設は続くが、もう部屋数は飽和している。今後は、 日本人が泊まれないくらいの超高級なホテルしか建設されない。しかし、イン バウンドの流れは止まらないから、観光公害は続くだろう。 <新しい市場へ向かう> ・4月の京都市長選挙も大きな争点になるだろう。今までの歴史で1人しかい なかった市長4選に挑む現職に、2名の新人が名乗りを挙げた。従来の保守対 共産という構図が様変わりし、3極の戦いになり予断を許さない。一番のポイ ントは投票率だろう。従来の市長選挙の30〜40%くらいの投票率になるのか、 俄然選挙戦がフィーバーして50%以上の投票率になるのか、それによって結果 が大きく変わるはずだ。さらに選挙権が18歳以上に下がっており、若年層の判 断も注目される。大学生も市内には多く、18歳から20歳台の若者が未来の京都 市にどう判断を下すか。 ・国内経済景気は、五輪の反動はあるものの徐々に緩やかに回復するだろう。 米中貿易戦争の影響は大きいが、何と言っても中国の14億人の人口を要する経 済の規模は大きい。なにせ、日本の10倍以上の市場規模が隣国にあるので、こ れを無視するわけにはいかない。過度の集中は避けるべきだが、東南アジアの 市場も含めて海外市場への進出や提携は、今後の大きな課題だ。単にベトナム から留学生として労働戦力の補充に連れてくるだけではない。積極的に東アジ アの市場や労働力とどう向き合うのか。経営者の見識と力量が問われる正念場 になる。一歩前に出る勇気を持たないといけない。 ・中小企業への経済的な支援は継続するだろうが、支援を受けられる企業が 偏ってきた。補助金や具体的な支援メニューを享受できる企業は、どんどんそ れを活用し積極的に事業を展開、成長している。何より、事業価値が高く差別 化がされており、他社がなかなか真似できない絶対的なビジネスモデルを持っ ている。他社に比較して少し納期が早いというのでは、早晩他社に追随され る。特許があるのではないが、製造のノウハウは特許で保護できる範囲を超え ている。伝統産業の古臭い事業でも、若い経営者の才覚で大手企業やベン チャー企業との協業で大きな市場を相手にビジネスができている。 <変わるために一歩前に出る> ・いずれにしても、これからの日本では人口が減少することは誰も否定できな い真実だ。出生率の増加も対策は打たれてはいるが、効果が出るには時間がか かる。不足分は海外の労働力に頼るしかないが、逆に海外に出ていく選択肢も ある。そして、IT技術やAIの活用は欠かせない。何より、新しい技術を活用し て中小企業の生産性を高めないと、給料や賃金が上がらない。最低賃金は早晩 1000円を超えるだろう。1000円を超えても、十分食べていけるだけの事業内容 にしておかないといけない。募集する企業ではなく、選ばれる企業になるには どうするか。雇用環境は様変わりした。 ・海外に出ていくにしても、外国人労働者を雇用するにしても、新規事業を始 めるにしても、構想から実現に数年かかり、プラスの結果が出るにはさらに数 年かかる。想定以上の時間と費用がかかり、必ずしも結果がうまくいくとは限 らない。2020年はさらに混沌とした時代になるから、従来成功していたビジネ スモデルが通用するとは限らない。新しいことにどんどんチャレンジする気概 を持たないと、今までと同様のビジネスにあぐらをかいていたのでは、早晩事 業が衰退するのは目に見えている。誰と組めばいいか、どこに相談に行けばい いか、どんな市場に進出すればいいか。答えは経営者自身の心にある。 ・いつも前がかりで何でも新しいことに挑戦すればいいものではない。時代を 読み、市場の動向を感じ、資金繰りを考え、未来のビジョンを常に考える。永 く続く老舗と言われる企業ほど、実は経営の中身は変わっている。徐々に新し いことを取り入れ、時代とともに古くなった事業をひっそりとやめている。原 材料も変わり、仕入れ先も変わり、外注先も変わり、従業員も変わる。経営資 源がどんどん変わるなら、経営者の頭も変わらないといけない。2020年は変わ るためのきっかけになる年にしないといけない。となると、軽い失敗の経験を 多く積むほうが有利だ。まず、一歩前に出る。そういう年になるように努力を 怠らない。