**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第833回配信分2020年04月13日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その5 終息してからでは遅い 〜終息後をにらんでいまから準備する〜 **************************************************** <はじめに> ・このコロナウィルスをテーマにしたメールマガジンを4回で終わるつもりに していたが、どうもそう簡単に終息しそうにない。いや、それよりどんどん被 害は大きくなり、今や世界的に第二次大戦後最大の試練という表現も書かれて いる。成岡の周辺でも、事業の継続に重要な障害が発生し、特に資金繰りの観 点から廃業、破産などの厳しい選択肢を迫られている企業がある。先日も、京 都市内の街中の修学旅行専業の旅館の前を通ったら、夕方にも関わらず灯りが 消えていた。全館休館との張り紙がしてあった。44室定員140名の老舗旅館の 経営危機がひしひしと伝わってきた。現実は差し迫っている。 ・学校の始まる時期もばらばらになり、都道府県で対応が分かれた。京都で も、京都府と京都市、各市町村で対応はまちまちだ。感染源がウィルスであ り、目に見えない敵であり、どこに潜んでどう感染するかわからない。わから ないから、決まりがないので、学校の再開ひとつとっても、行政の判断はまち まちになる。おそらく、次第に終息に向かう時期から、日本全国でも地域に よって大きな温度差が出てくるはずだ。想定だが、人口密度が高い都市部はな かなか終息しないだろう。人口密度が高いということは、当然密集している場 所に多くの人が住んでいるし、仕事をしている。集中していることは悪い影響 を与える。 ・逆に過疎の地域は早く終息するだろう。初期の感染が拡大していく時期で も、相当長い時間、島根県、鳥取県、岩手県は無感染地域だった。日本全国の 地図に、3つの県だけが白くなっているのが、非常に印象的だった。というこ とは、人口密度の低い地域から感染は終息すると考えていい。となると、東京 や大阪、名古屋などの都市部の感染が最後まで残るはずだ。商売にもよるが、 このことは非常に重要だ。大都会では人口が密集している。当然、人と人との 社会的な距離は非常に近い。今回の感染の経過を見ていると、3つの「密」に 該当する大都市圏では、なかなか完全に終息という状態には時間がかかる。 <サービス業は厳しい経営環境> ・大都市で大衆を相手に商売をされている企業やお店では、相当の時間苦戦が 続くと覚悟するべきだ。一方、地方都市で商売されている場合は多少違いがで るだろう。まず、どこの場所でビジネスをしているかで、大きな差がある。こ の地域特性を大きく考慮に入れて今後の作戦を考えないといけない。次の要素 は、お客さんが誰かだ。いわゆるBtoCの消費者を直接相手にしているビジネス と、BtoBの企業や事業所がお客さんを相手にしているビジネスとでは成り立ち が異なる。BtoCは消費者相手であり、商品が生活関連のものだと、一定の需要 は間違いなくある。不要不急のサービスが事業の柱だと、これは厳しい。 ・特に不要不急のサービス業はかなり厳しい経営環境が続くだろう。特に、い ま、今日、必要でないサービスを提供する飲食、美容理容、スポーツ、健康な どの分野は、買い控えも含めてサービスの同時性という厳しい条件がつく。同 時性とは、消費と購入が一致するということで、つまりその場に行って消費す ることが必要十分条件なのだ。カラオケ、スポーツ、医療介護、エンターテイ メントなどは、その最たるものだ。ディズニーランド、USJ、ハウステンボス などが休業に追い込まれたのも、それが原因だ。また、観光産業も大きな痛手 を受けた。旅館、ホテル、飲食、交通などすべてにおいてダメージは大きい。 ・確かに、調子に乗ってインバウンド需要をあてこんでビジネスを闇雲に拡大 した傾向は否めない。京都もお宿バブルといって、ホテルが市内に乱立した。 まだ現在建設中のホテルも多い。烏丸通りは、特に四条から京都駅まで、ホテ ルストリートと変身した。おそらく誰もがオーバーブッキングとホテル過剰と 思っていたが、誰も止められなかった。民泊などという時代の潮流に乗って、 空き家の実家を投資して改造したのはいいが、まったく投資を回収するすべが ない。数千万円の投資は回収されことなく、ドブにほかしたことになった。市 内のホテルも数軒は廃墟になる可能性がある。大変なことだ。 <終息してもまたぶりかえすリスクもある> ・ことほど左様にビジネスは難しい。どれくらいのリスクを覚悟するかという ことになるが、今回のようなウィルス騒動は誰もが予測できなかった。10年前 のリーマンショックは一部の有識者が警鐘を鳴らしていたが、今回はビルゲイ ツが未来予測で言ってはいたが、こんなに早くそのような事態が起こるとは 思っていなかった。しかし、大事なことは目前で起こっていることを受け入れ ることだ。いつまでも他人の責任に転嫁していたのでは、解決しない。自民党 が悪い、安倍が悪い、政治が悪いなどと愚痴を言っても始まらない。一刻も早 く対策に全力疾走する企業が生き残る。まず、この不測の事態にどうするかを 決める。 ・1年半回復にかかるとして、どれくらい資金不足があるのか。まず、細かい 計算をしないと分からないという経営者は失格だ。1年半ならおおよそいくら というざっとした感覚ですぐに判断しないといけない。3,000万円か、5,000万 円か、1億円か。売上は、今年の9月まで50%、来年の3月まで70%、4月か ら80%、10月にほとんど戻って90%。それくらいが妥当な予想ではないだろう か。商売にも依るので、必ずしもこの通りではないが、これを基準に考える と、自社のビジネスはどうなるだろうか。また、東京五輪の行方も不透明だ。 来年の今頃に、全世界で終息していない場合は、中止もあり得る。 ・日本はほとんど終息したが、アフリカや中東、東南アジアの一部の地域でま だ感染が終息していないと想定するのが妥当ではないか。衛生状態が悪い国も ある、ワクチンが全世界にいきわたるには時間がかかる。過去のペスト、天然 痘、マラリアなどの感染撲滅にかかった時間とエネルギーを考えると、そう簡 単なことではない。また、ウィルスも賢くなり、ワクチンが完成し、人間の免 疫力が高まると相手も進化する。DNA配列の異なるウィルスが変異して、また ぞろ感染を拡大する。100年前のスペイン風邪のときは1年目で終息したと 思ったら、2回目の感染拡大が発生した。そういうことも起こりえる。 <コロナ後を見据えて準備する> ・地域、業種、規模、ビジネスモデルなど多くの要素を吟味して、今後を考え ないといけない。しかし、共通して言えることは不況の時は積極的、好況のと きには無理に前に出ないということだ。18か月先に完全には戻らないでも、90 %戻るとしてこの間の資金繰りと借入金額を計算する。それだけ借金が増える のだ。そして、18か月後に自社がどのように成長できるかを考える。おそらく 現状とは相当に様変わりしているはずだ。教育、飲食、健康などのサービス業 において変化が激しいだろう。テレワークが浸透し、サービス業の定義が変わ る可能性がある。金融も変わるだろう。銀行の支店が、もう要らない。 ・そういう古いビジネスモデルが崩れつつある。しかし、依然としてその場所 に行かないと受けられないサービスもある。宅配や出前というビジネスが一層 普及するだろう。今のような自転車やバイクでの出前ではなくて、もっとパッ ケージまるごとの出前のようなサービスが出てくる。体験も、出前でできるか もしれない。今までなら難しいと言われていたサービスがVR(バーチャルリア リティ)などのデジタル技術や5G、6Gといった通信インフラの整備が進み、 現実のものとなっている。今回の騒動で脚光を浴びたWEB授業やWEB診療といっ た、行かなくても受けられるサービスの普及が加速する。 ・住宅や車も変わるだろう。太陽光発電やエネルギー分野、金融分野など、生 活に密接に関わる分野での革新が一気に進む可能性がある。ただ、あまり変わ らないのは食べ物に関しての分野か。生産や物流は徐々に変化を遂げても、料 理飲食の分野ではあまり変わることはない。むしろ、徹底的なコストダウン か、追いつけない付加価値の提供か。中途半端な価値はあっという間にとって 代わられる。社会的にも、経済的にも、地域的にも、存在価値が認められ、な くてはならない存在になるにはどうするか。これから数年間が、経営者の手腕 が問われる時代になる。コロナ後を見据えて、今から準備を始めることが大切 だ。