**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第834回配信分2020年04月20日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その6 大きく変わるビジネスモデル 〜コロナ後あなたの事業はどうなる〜 **************************************************** <はじめに> ・今回のコロナ騒動は、世界的にビジネスモデルに変革を迫る大きな出来事に なるに違いない。多くの事業所で、緊急事態宣言を受けて在宅での仕事やテレ ワークに切り替える事業所や会社が出てきた。それまで、働き方改革だと叫ん ではいたが、なかなかテレワークに切り替えられない企業も多かった。しか し、接触を80%減らせと言われたら、ほとんどの社員は在宅で仕事をするしか ない。そのために、パソコンが品切れになり、回線がパンクしているという。 在宅で仕事するソフトがバカ売れしていて、特定の企業に多くの利益が集中す るという異常事態が発生している。 ・在宅で仕事をするのだが、やはり日本はまだ「ハンコ」という文化が根強く ある。紙の書類にハンコを押さないといけない。そうでないといろいろな手続 きや金融機関へ提出する書類が成り立たない。そのために、週に最低1回は代 表者が出社しないといけない。会社の実印を求められる書類は、いまだに多 い。そのために、満員電車に乗って、遠方からわざわざ出勤することになる。 経理の担当者と代表者が、最低週に1日ハンコを押すために出勤するという異 常事態が起こっている。デジタル認証を取り入れている業界は、まだ少数だ。 クラウドの活用は進んではいるが、以降の作業に印鑑を押すことの習慣は根強 い。 ・印鑑に関してはデジタル認証が広まるにつれて、いつも問題、課題に挙がっ ていた。この業界も、なかなか強力で全国各地に印鑑、ハンコ屋さんがある。 軒数は不詳だが、相当数あることは間違いない。もちろん、ハンコを全面的に 否定する気はないが、今後この業界はこれをきっかけに大きく変化、変貌を遂 げる可能性がある。もちろん、それに関連して印鑑の材料、朱肉をはじめとす る文具類にも大きな影響を及ぼす。いろいろな書式、様式もほとんど所定の位 置に印鑑を押すことが前提になっているので、これが変わると書類を全部作り 直さないといけない。大きな金額ではないが、意外と盲点、落とし穴になって いる。 <出勤自粛は困難な企業も> ・金融機関へは最近ほとんど出向くことがなくなった。WEBでいま、資金移動 や振込もほとんどが可能だ。支店のカウンターに行ってする用事は激減した。 なので、今回の外出規制でも金融機関がらみの用事は、あまり困らない。特に 振込もコンビニでほとんどが可能だ。将来、金融機関の支店やATMなどは非常 に少なくなる可能性がある。また、それに伴い自社のビジネスに大きく関係が あるなら、ビジネスモデルを見直す必要がある。通帳もデジタル通帳に移行す ることが推奨されている。5年後には金融機関の業務は、様変わりしているだ ろう。今回のコロナ騒動が、その変化の加速度を大きくしている。 ・飲み会もWEB飲み会なる新しい形の交流の方式が今回新たに登場した。以前 から対面で画面を見て会議や相談を行うことは経験してはいるが、今回の騒動 で一層その有効性が証明された。以前は会議といえば東京の本社に出張して、 本社の大会議室で会議を行うのが、通例だった。それが、今後は全員が一か所 に集まって行う会議などは、相当減ることが予想される。TV会議、ZOOMなどの 新技術が普及するだろう。飲食、移動などのビジネスに関連する職種、業種 は、今後大きな変革に翻弄されるだろう。人が移動することで成り立っていた ビジネスは、移動するということ自体が大きく減少するだろう。 ・製造業は、さすがに工場にでかけないと機械がないので、出勤して作業する ということが、なかなか変えられない。しかし、昨今では3Dプリンターなど という優れものがあり、小さな場所でも切削加工などと同じ製品を製造するこ とが可能になるだろう。大量の量産製品には向かないだろうが、小ロットの部 品加工などは、3Dプリンターの普及で大きな変革を遂げるだろう。金型に溶 けた樹脂を流し込んで部品を作るという製造方法から、樹脂の塊から削り出す という工程を経ることで、高温の装置もいらないし金型も不要になる。多少時 間はかかっても、無人の工場で機械だけが動いている。そんな時代がもうすぐ 来る。 <キーワードはオンライン> ・オンラインというのがキーワードだ。学校の従業もオンライン、会社の業務 もテレワークでオンライン。なんでもオンラインの時代になった。日本中に光 ファイバーが張り巡らされ、高速の通信環境が整った。確かに、ある程度の業 務はオンラインで自宅でも可能だろう。しかし、少し困ったとき、周囲に何か 聞きたいとき、顔を見て相談したいとき、いま集まって協議したいときなど は、簡単には対応できない。オンラインで可能な業務は今後増えていくだろう が、在宅やシェアオフィスでのオンライン業務をするためには相応の準備が要 る。簡単に言えば、出先で本社のホストコンピュータにアクセスできる環境を 作る必要がある。 ・あるいはデータは全部クラウド上にあり、どこからでもネット環境があれば アクセスできる。しかし、セキュリティは厳重にしないといけない。また、誰 が、いつ、アクセスしたのかの記録や、アクセス権限を決めておく必要があ る。こうなると、一定程度ネットやデジタルに詳しいスタッフが必要になる。 社内に抱えるのは大変だから、サポートのサービスを提供する会社が伸びる可 能性がある。あるいは、カメラ機能搭載のパソコンや通信環境を設定したりす るビジネスがもてはやされる。5Gや将来6Gの世界になれば通信速度は格段に よくなる。重たいデータや画像でも一瞬で送ることができる。 ・本社は何も東京である必要はない。今回のテレワークの普及で、通勤時間の 調査によると首都圏での平均往復の通勤時間は1時間15分だそうだ。一番長 かったのは神奈川県で、1時間45分。毎日の通勤にこれくらい時間を浪費し、 消耗し、エネルギーを費やしている。考えれば非生産的な時間だ。読書や英会 話の勉強くらいしかできない。電車でも車でも、通勤=痛勤と同じだ。毎日、 毎日これくらいの時間がムダに消えているので、日本のホワイトカラーの生産 性はG7主要国で最低だ。今後は、これらの改革が一気に進む可能性が高い。 そうなると、多少不便な土地でも住環境がよければ仕事場として脚光を浴びる ことになる。 <新しいことに前向きになる> ・以前成岡も東京に長く延べ10年間単身赴任をしていいたが、「住むのは京 都」「仕事は東京」と言っていた。これは今後見直さないといけない。「住む のも京都」「仕事も京都」という環境に変化するだろう。いや、もっと過疎地 的な土地でも、ネット環境が整っていれば、必ずしもハンディキャップになら ない。それが証拠に、四国のある県であったり、島根県の離島であったり、そ ういう地域の人口が移住により増えていく。いま、人気なのは沖縄だそうだ。 温暖で、食べ物がおいしく、最近では台風がそれて来ない。高齢になり、まだ 元気で、仕事は第一線からリタイアした中高年のご夫婦が多く移住するらし い。 ・人間が仕事場に出て行ってする業務がどれくらいあるだろうか。物流倉庫 も、自動で収納、ピッキング、搬送、格納、積み込みができたら、相当マンパ ワーは削減できる。そして、トラックの自動運転も、近未来では現実のものと 成りつつある。税理士業務も経理会計ソフトのいいのができている。人に会っ てする営業活動も、在宅やテレワークで激変するかもしれない。銀行の支店や カウンターは、もうほとんど無用の長物になる。広々としたオフィス空間も、 いずれはそうニーズは高くない。先日、Zoomでのチャット会議をしたが、3名 だったがほとんど違和感なくできた。大学院の講義もWEB授業でやることに なった。 ・戦争が起こると不幸な出来事だが、技術は格段に進歩し多くの技術革新が生 まれるという。今回も見えない敵との戦争だ。もちろんワクチンの開発など、 医療系の技術革新もあるが、ビジネスモデルがどう変わるかは意識し、注目し ておかないといけない。相当先のことだろうと、のんびり構えていたら、あっ という間に後発の企業が総取りしていく。競争相手と思っていなかった企業 が、突然ライバルとして登場する。下請けと思っていた企業が、突然メジャー になる。小学校の英会話など、まだまだ先だと思っていたら、タブレット端末 が今回のコロナで普及して、あっという間に広まった。目の前で起こっている ことに背を向けないで、凝視することだ。自分の身に降りかかる変化を見逃さ ないことだ。