**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第835回配信分2020年04月27日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その7 コロナ後の日常社会生活は 〜すこしずつ、しかし大きく変わるライフスタイル〜 **************************************************** <はじめに> ・いつ頃このコロナ騒動が終息するか予測が立たないが、出口が見えないトン ネルというものは非常に大きな不安を感じる。終息に向かいつつある数字が出 てきた国もあるが、まだまだと判断し規制を緩めない国もある。アメリカのよ うに11月の大統領選挙を意識して、早くも規制を段階的に解除するという方針 を表明した国もある。以前にも書いたが、終息の定義は全世界で4週間1人の 感染者が確認されなかったという状態が出現することだ。いまの世界中の状況 からすると、とてつもなく高いハードルだ。おそらく、この状態を終息という なら、1年では難しいだろう。1年半か2年はかかるだろう。 ・ご存じのように10年前のリーマンショックのときには、そのとき元気だった 中国が大規模な設備投資を決断して全世界の需要を喚起した。その結果、アメ リカ、欧州、東アジアが呼応して徐々に元気になった。中国さまさまの復活劇 だったが、今回は全世界がやられた。感染しなかった国は南極だけ。北朝鮮も 発表はないが、金総統が感染したのではないかという噂も流れている。とにか く、出口が見えてきても決定打がない。いまのように、中国とアメリカが喧嘩 しているようでは、回復はおぼつかない。アメリカからこのような経済状態に 陥った責任は中国にあると、訴訟にもなっている。WHOが窮地に立っている。 ・アメリカと中国の仲たがい喧嘩が続き、EUではイギリスの離脱で混乱し、加 盟国の回復に温度差があって連帯感が全くない。比較的被害が軽微で済んだド イツと、影響が大きかったので回復が遅々として進まないフランス、イタリ ア、スペインなどとでは回復のスピード感が違う。アジアで比較的被害が軽微 で済んだのは、台湾、韓国くらいだ。これらの国には世界経済の回復をけん引 するだけのエネルギーとボリュームはない。となるとどこが引っ張るのかとい うと、これがないのだ。もちろんわが日本国も頑張らないといけないのだが、 世界の最先端を走る超高齢社会に突入の国だから、とても候補にはなれない し、ならない。 <どんどん新しいことが始まる> ・この復旧の過程で、やはり想像していた通りAIやIT技術の進歩が目覚まし かった。特に感染の拡大を阻止できた韓国や台湾の徹底した個人情報管理に は、スマホを活用したIT技術の進歩が大いに寄与した。個人情報管理やセキュ リティの課題があるにせよ、感染の拡大阻止に大きな貢献をした。それに引き 換え、わが日本国ではオンライン診療ひとつとっても医師会と厚労省との確執 で、なかなか普及が進まない。数年前から始まった個人情報のマイナンバー カード化も普及が16%くらいなので、今回全く役に立たなかった。10万円の個 人への配布もマイナンバーカードが普及していれば、もっと簡単にできたはず だ。 ・ことほど左様に日本のIT系統の技術革新のスピードは遅い。遅いというよ り、のろい。投資の回収という概念が希薄で、国は税金を使うことは使うが、 使って投資して回収しようという気迫が感じられない。自分が官僚の代で何か をやれば、それが実績なだけで結果がどうだったのは問われない。だから、馬 鹿みたいに新しいことがどんどん始まり、重複し、屋上屋を重ねたような施策 が度重なって無駄が生じている。同じような支援策を違う予算で異なる官庁が 行うから、我々には非常にわかりにくい。平穏な時代はそれでも何とかやれた のだろうが、今回の戦争のような時代に突入すると右往左往するばかりだ。 ・今後は日本にあまり期待できない。かといってアメリカや中国の回復もおぼ つかない。ITに今まで投資をしてきたイスラエルやインドが世界経済を牽引す るのは、まだ時間がかかる。人が集まって行うイベント系のビジネスがどんど んITの活用でVR世界が現実になり、博覧会会場にいかなくても6Gの活用で臨 場感満載のバーチャルな世界が目前に展開される。時差もなく渡航の費用も要 らない。フランクフルトの博覧会に行けば、100万円仕事で1週間はかかる。 旅行代理店も、航空会社も、ホテルもいろいろなビジネスが徐々にこの流れに 伴って変化していく。気が付けば周囲の景色も様変わりしている。 <どんな市場でも淘汰が始まる> ・まず高齢化と合わせて、どういうビジネスがなくなるか、衰退するかを考え る。どいうビジネスがAIに置き換わり、どういう仕事がAIでは置き換わらない かを考える。高齢化の進展に伴い、社会の生活スタイルがどう変わるかを考え る。核家族化がどんどん進み、高齢の両親と一緒に暮らす息子夫婦は極端に少 なくなる。高齢者は自立自活できるように、アクセスの便利な場所に生活に必 要なインフラが集中するようになる。医療機関、生活必需品、娯楽、文化的な 施設、高齢者の暮らしをカバーするサービスを提供する場が集積される。医療 は当然オンラインになり、生活必需品は宅配が主流になる。 ・少々遠方の生活圏の高齢者でも、Maasの普及で移動やアクセスが格段に良く なる。オンラインでの生活が普及し、日常生活もすこしずつ変わってくる。高 齢者もタブレットの操作に慣れて、WEBでの買い物が増加する。デリバリーの 必要性が高まり、配達というビジネスは一層重要になる。気候が温暖な地域へ の移住が進むだろう。引退後高価なマンションを買わずに、賃貸にしてそこか らさらに高齢になると移住する家族が出てくる。同じ場所に同じようにずっと 暮らすという生活が様変わりする。どうせ、息子、娘は近くにいてもほとんど 来ない。なら、オンラインでたまに孫の顔を見るので十分だ。 ・医療も買い物も、文化的なイベントも本当に出かけないといけないのは、ご くわずかになる。友人たちとのおしゃべりも、リビングから画面を見て好きな 時にできる。会って直接顔を見て話しをするのもいいが、たとえ15分でも画面 でおしゃべりするほうが面倒がない。雨の日でも風の日でも、寒くても暑くて も、どんな環境でも時間さえ合わせれば会話はできる。そして、たまに一緒に 食事をすればいい。食事もデリバリーで少し高級な出前をとればいい。シェフ 付きで出前してくれるサービスもある。となると、街のレストランや飲食店は どうなるだろう。なくなりはしないが、確実に残る店は減少する。 <確実にコロナ後世の中は変わる> ・高齢化とオンライン。これがキーワードだ。全世界的にも同じだが、高齢化 のスピードが異なり、日本は最先端を走っている。人口が減少し、高齢者の割 合が増加するのは誰もがわかっているが、漫然といまのビジネスを続けてき た。特に今日、何をしないといけないわけではないので、従来のビジネスモデ ルを変えようとしなかった。しかし、今回のコロナ騒動で、いまの自社のビジ ネスに限界があることが分かった。自分の世代ではなんとかいけるだろうが、 10年先、20年先を考えると果たして同じビジネスで続けていけるとはとても思 えない。後継者がいるなら、今から準備し、研究し、段取りし、人材を確保す る。 ・どれくらい今回おカネが痛んだかにもよるが、確実に経済が回復するのに10 年かかるとして、その時に先を走っているようにするには、今からハードより ソフト開発に投資をしておかないといけない。先日お目にかかった企業の役員 さんは、当時の社長と30歳くらい年齢差があったが、社長の英断で異業種だっ たが転職してその企業に入り、現在取締役。先代社長から後継者に承継され、 その承継を支えるスタッフとして頑張って、若い社長を支えて10年先、20年先 の企業のありようを考えている。やはりこれからの将来を考えるには、人材に 対する投資が一番大事だ。今日明日はメシが食えても、10年後に食える確証は ない。 ・今回のコロナ騒動で分かったことは、ブラックスワン(黒い白鳥)が現れる ということだ。黒い白鳥など世の中にいないと言っていたが、実は存在した。 そして、そのブラックスワンが世界を恐怖に落としいれた。100年に1回かも しれないが、起こったことは事実だ。想定外のことに備えるのは難しいが、小 さな想定外は頻繁に起こる。「ヒヤリハット」と同じで、起こっていることの 水面下に10倍の体積のブラックスワンがいる。それが100年ごとに爆発し、新 しい技術革新の引き金になり社会変化が加速する。馬車が自動車に代わるのに 20年とかからなかった。ガソリン車が電気自動車に代わるのは想定内だ。その 次に何があるかを見る努力をしないといけない。