**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第836回配信分2020年05月04日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その8 休業要請と補償 〜もっと補償に知恵を絞る〜 **************************************************** <はじめに> ・休業要請と補償の問題をここで発言するのは、非常に難しい。しかし、非常 事態宣言が想定通り1か月ほど延長になり、特にサービス業を中心にいっそう 出口の見えない戦いが続くことになった。日本人は真面目で性善説で対応能力 が高いので、自粛という方法で感染防止を図っている。これが諸外国なら、強 制力のあるロックダウンという方法で、罰則も設け自主的など甘いやり方では 通用しない。有名な、渋谷のスクランブル交差点での多くの群衆が整然とぶつ からずに交差点を渡るのが、インバウンドで訪れた外国人には異様に映る。そ れくらい、日本人は環境に適応し、周りとの協調性に優れた国民なのだ。誇る べきことだ。 ・この感染対策でも、自主的な自粛という方法で切り抜けている。しかし、商 売をしている人には、たまらない。飲食、宿泊、小売など、お客さんあってな んぼの商売は、人出がない世界では成り立たない。自粛を強制するなら、補償 とセットでというのは、当然理解できる。政府は、国は、強制的にやると必ず 補償とセットになるのがわかっているので、最後の最後は逃げられるように、 自粛という逃げ道を用意している。つまり、おカネが心配なのだ。小池都知事 と最初にもめたのも、結局補償を言われたときに誰が責任を取るのかだ。東京 都はお金持ちなので、小池知事は強気に出た。国は、おそるおそるご機嫌伺い になった。 ・財源がない。そもそも、国は現状で大幅な債務超過なのだ。ない袖は振れな いとばかりに、補償に対して逃げ道を作る。諸外国の首相達は、大見得を切っ て補償をきちんとするから、完全に店を閉めなさいと強制した。とりあえず、 この危機を総力戦で乗り切る覚悟を見せている。トランプ大統領のように、フ ライングして早く再開し、あとで手痛いしっぺ返しを食う可能性をわかって、 選挙のための人気取り政策を進める政治家もある。政治家らしい政治家だが、 果たしてこのフライングは後世に禍根を残しそうだ。一時期沈静化しても、ま た一定の時間が経過すれば感染の第二波が襲ってくる。わかっているはずなの に。 <補償は借入で対処する> ・補償の財源がないなら、今こそ官僚は知恵を絞るべきだ。その昔、印紙税と いう税金を考えた官僚は天才だ。領収書に一定金額以上は印紙という証紙を張 ることを義務付けた。素晴らしい発想だ。こういう発想を、今こそ考えないと いけない。消費税に特別に付加税をつけるとか、高額所得者に何らかの税金を 時限立法として期間限定で付加する。赤字国債で将来にツケを回すより、10年 くらいかかってもいいから一気に勝負をかける税金を考えるべきだ。東日本大 震災の財源には、まだ継続しているがわずかだがあまねく広く税金がかけられ ている。10%の源泉税が、10.21%になっているはずだ。この増分は復興に充 当されている。 ・今回のコロナウィルス騒動は、天災と同じだ。激甚災害に指定してもいい。 台風、地震、大雨、突風などの天災と同じだ。天災ならまだ局所的に被害が発 生するが、今回は全国、全世界で発生した。人とモノの動きが完全に止まっ た。発生源が中国だと、他国を非難する前に、まず復興、復旧に1年は完全に かかるとして、その補償の財源を手当てしないといけない。お勉強のできる秀 才は、平時には強いが戦時には弱い。戦時には、剛腕が必要だ。理屈はあとで つければいい。いま、目の前で起こっていること、困っていること、対応しな いといけないことに、俊敏に対応することだ。目の前で火事が起こっているの だから。 ・補償は借入で対処する。給付金や補助金は、お涙頂戴になる。一過性のおカ ネは、すぐに消えていく。それより、長期戦覚悟で、超長期のローンを組む。 あるいは、完全劣後にして、現在の借入が完済したら、それから今回の借入を 返済する。その間は、今回の借入は疑似資本金とみなす。完全永久劣後ローン にする。最近、政府に近い機関が売り上げ10億円、従業員50名以上の中堅企業 に劣後ローンを適用すると発表した。おおよそ1割の中小企業が該当するとい う。では、9割の中小零細企業はどうするのか。このハードルをもっと下げる べきだろう。売上1億円、従業員5名以上の企業としたら、かなり効果があ る。 <国の補償をあてにしない> ・これ以外にも、知恵を絞ればもっとあるはずだ。借入の金利は営業外費用に なるが、返済金額の一部も一定の限度内で費用に繰り入れる。費用が増えると 最終の利益は減少するから結果的に税金が減少する。あるいは繰越欠損金が増 えるから、法人税を払う時期が後ろにずれる。または、支払金利をマイナスに する。マイナスにすれば逆に利益が出る方向になる。または、返済金額の一部 を税額控除する。いずれも、金融機関や国に負担をかけることになるが、赤字 国債を発行して、一過性の給付金をばらまいて、後世の若い世代に借金をつけ まわすより、よほどいいのではないか。これ以上国の借金が増えるのは、よく ない。 ・今は戦時なのだ。悠長にやっている場合ではない。危機管理、BCPなどと難 しい理屈をこねるより、目の前の火事をどうやって火を消すかを考えないとい けない。消火器で消えないくらいの、大きな火事になりつつある。世界的に山 火事が都市圏にも及んでいるようなものだ。一定の方針を決めて、なりふり構 わず前に出ないといけない。そういう意味では失礼ながら、日本の政治家、国 会議員の諸兄に戦時のリーダーはいない。比較して、外国のリーダーは立派 だ。ニュージーランドの女性首相はまだ非常に若い。若いが、堂々たる自信を 持ったあのスピーチは出色だ。どういう経歴、キャリアの人か、非常に興味深 い。素晴らしい。 ・失礼ながら現在の日本の宰相は、談合の下で生まれた首相だ。そもそも国会 議員で専門性が高い方がどれくらいいるのか?今回、新聞を読んでいると、と きに医師の資格を持った国会議員がいるが、非常にまれだ。そういう人に、今 回の危機対処を委ねることだ。それを無視して経験や当選回数で判断して素人 を大臣に据える。全く、適材適所とは真逆の人事になる。最近、在宅の時間が あるのでTVの国会中継を見ていても、まったく滑稽としかいいようのない大臣 がいる。あれくらいの答弁なら、自分でもできると、馬鹿にしてしまう。ある いは、官僚の用意した紙を、ただ読んでいる。自分の言葉で語らない、語れな い。情けない。 <今回の借入を永久劣後に> ・給付金の申請に、申し込みが殺到している。WEBサイトがパンクして、つな がらない。回線の容量もあるだろうが、これほど多くのアクセスが集中すると 思っていなかったのか。とにかく、政府のアクションは、遅い、鈍い。まず は、さっと性善説で迅速に行って、おかしいものはあとで精査する。幾分か、 漏れるものがあるだろうが、完ぺきにやることは難しい。減点主義で運営され ている役所だから、とにかくお役人はミスを怖がる。ミスは、即自分のマイナ ス点につながる。できる限り、自分のリスクを回避するように行動する習性が ある。それに引き換え、自分の主義主張でその立場に立つ自治体の首長には覚 悟がある。 ・北海道の若い鈴木知事、東京都の小池知事、大阪の吉村知事などは、見るか らに覚悟がある。これ以外の首長も、今回は国にまともにものを言う首長が多 くみられた。お上の言うことをただ聞いておけばいいという風潮は吹き飛ん だ。それも、これも、中央官庁と内閣がだらしない。戦時にはときの首相の支 持率が急上昇するものだが、今回は逆に落ちている。危機に際し、どう行動す るかは、実は全員がよく見ている。危機に際し、逃げない経営者、弱音を吐か ない経営者、身銭を切る経営者などは、賞賛される。アメリカではトップの報 酬を99%カットし、役員報酬を50%カットし、原資を従業員の給与補填に回す 経営者がいる。 ・本当に雇用を守るというなら、こういうことが大事だ。単に、雇用調整助成 金に依存するのは、間違いではないが、よくない。借入を目いっぱいして、自 身と一族の報酬を削減し、なんとか従業員への給与の支払い原資を作る。不足 するなら目いっぱい借入する。当分のおカネの手当てをまずしてから、やおら 今後の対策を考える。対策を考えるには、余裕と時間と努力が必要だ。間違い なく、社会は変わる。ということは、自分の会社のビジネスモデルも変わる。 変わらないと生き残れない。変わるためにはどうするか。まず、経営者自身が 変わることだ。新しい酒は、新しい革袋に入れる。会社の未来は、経営者の器 にかかっている。