**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第839回配信分2020年05月25日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その11 コロナ後の世界その1 〜自社のビジネスモデルを見直す〜 **************************************************** <はじめに> ・コロナ後の日本経済と世界経済の予測は難しい。まず、世界経済を考えてみ ると、依然としてアメリカと中国の覇権争いが続いている。コロナを蔓延させ た責任としてアメリカが中国を追求し、エチオピア出身のWHOの事務局長が中 国寄りだと批判している。今後はワクチンの開発競争が激化し、主導権争いで 情報合戦が始まる。自分の選挙の都合や立場の保身に汲々として、大きな目で 世界の今後を見据える経営者がいない。G7の先進国が世界をけん引したとい うのは相当の昔ばなしになってしまった。Gゼロというのが正しいのではない かという解釈が、非常に現実味を帯びてきた。世界経済は迷走する。 ・今回の騒動でグローバル化の勢いが一時的には止まるだろう。全世界にサプ ライチェーンを拡げたばっかりに、いったんこのような事態になれば、あらゆ るところで供給の分断が起こった。しかし、日本国内でも東京一極集中の弊害 が随所に露呈し、やはりリスクは分散するのが正しいと識者は考える。将来の 大地震に備える意味でも、生産拠点は日本国内にも分散しているほうがいい。 東海地区に集中していたり、九州の北部に集積していたり、集積地区が一度壊 滅的になると、もう取り戻しができない。仕入先の複数購買ではないが、なん でもひとつに集中し偏在するのは好ましくない。管理は面倒だがリスクは分散 させたほうがいい。 ・今回はサプライチェーンやビジネスモデルを見直すいい機会だ。テレワーク も大企業のトップは当初馬鹿にしていた。ビジネスは相対でやるものだ、営業 は顧客のところに足しげく通うのが営業だとの信念があった。とにかくコミュ ニケーションは会って話しをすることだとの頑固な哲学があった。しかし、今 回のコロナ騒動で相当この考え方が変わるだろう。首都圏の近郊にサテライト オフィスがどんどんできて、都心のど真ん中に痛勤することがめっきり減る。 上司に会わなくても、結果がよければいいのだ。少し割り切りすぎでドライか もしれないが、顔を会わさなくてもいいなら、これくらい生産性が上がること はない。 <本当にオフィスでやる仕事は何か> ・今回の騒動は我々社会の仕組みを根底から揺さぶった。会社が継続すること が大事ではなく、自分の生活や健康、家族の生活や健康が優先することを初め てはっきり認識した。22歳で大学を卒業して就職ではなく「就社」するのが当 たり前だったのが、自分の生活を中心にして、仕事も大事だが個人の生活は もっと大事だと、はっきり認識するようになった。通勤に時間をかけるより、 その時間をもっと生産性の高い仕事に振り向け、通勤交通費を給与に上乗せす る。週に3日は在宅でテレワーク、2日は出社してミーティングなどという仕 事のスタイルが現実的に始まる可能性が高い。いや、現実的にかなりそうなり つつある。 ・逆に会社の業務やデータの形を在宅でも活用できるシステムに早く切り替え るべきだ。幾分かの投資は要るだろうが、ここで投資をして活用のノウハウを 貯めこんでおかないと、いずれ世の中はそのように変化していく。セキュリ ティには十分の注意が必要だが、心配して足が出ないより、進んで転んで学習 したらよほど投資効果がある。もう、都心の一等地に広いオフィスを構える必 要が次第になくなりつつある。都心の再開発が停滞し、周辺の住環境のいい地 域の価値が上がるだろう。ただし、製造業は広い場所に機械を置いて、人が機 械に張り付いてモノを製造する。しかし、その工程も多くはロボットに代わっ てくるだろう。 ・本当にオフィスに出てやらないといけない仕事とは何かと考えると、意外と 少ない。全くゼロではないが、遠隔地の人とのコミュニケーションもオンライ ンの会議システムで相当、ことが足りる。当初慣れないので、ぎくしゃくした 会話も慣れてくれば多少時間差は感じるが、結構想像以上にスムースにいくも のだ。働き方改革は、お題目では進まなかったが、外部から強烈なプレッ シャーがかかると、仕方なく強制的に進む。目に見えない大きな力で、文句を 言わせずに強制的に進めると、結構知恵が出るものだ。まず、自社の働き方、 仕事の仕方改革に成功した企業やお店が生き残る。若い人に託すべきだろう。 <近いうちに9月入学に変わる> ・世界中に蔓延したウィルスの除去に2年かかったとして、この間に起こるこ とは東京五輪の中止はもちろん、世界的に自国主義が拡大していくことにな る。他国の都合など聞いている余裕がないので、誰もが自国の利益の最大化の ために突っ走る。その中で、アメリカと中国の2大強国がしのぎを削り、貿易 戦争がいろいろな場面で火を噴くだろう。この2大強国のはざまで、ドイツ、 フランス、日本、イギリスなどの旧G7諸国が3番手を争うことになる。2強 5弱のような妙なアンバランスの上に成り立つ新しい世界地図ができるだろ う。拠点の分散も以前以上に進むだろう。一極集中はやはり危ない。 ・しかし、以前のような激しいグローバル化にはならず、環境問題に配慮して 大きさの膨張より、中身を重視した成長へとシフトするだろう。会社でいえ ば、売上の規模を争うより、売上の中身と収益を重視することにシフトする。 そして、多様性を重視して、いろいろな国籍、言語、文化を持つ人が入り混 じった組織に次第に変化していく。中国のスタッフもいれば、ベトナムからの 留学生もいる。モンゴルからのインターンもいれば、当然日本人の主婦のパー ト社員もいる。採用も、定期採用以外に中途採用も頻繁に行われ、通年での採 用が本格化する。4月に揃って入って、研修を一緒に受けて、などというシス テムはなくなる。 ・今まで、新卒に偏重した採用を行ってきた金融機関や官公庁、大企業などは この10年間くらいこの採用の変化になかなかついていけない。給与制度、評価 制度、キャリアプランなども大きく多様化する。それに伴い、大学の淘汰が始 まり、公立化、専門化を重視し特徴のある大学が生き残る。より高度の専門性 を重視した人材と、オールラウンドに活躍できる人材の二極化に進むだろう。 大学生のときにアメリカに行って、帰ってこない息子というのも増えるだろ う。もう日本の4年生大学を出ることの意味が次第になくなってくる。特徴の ない大学は淘汰され、卒業時点のイメージが明確な大学のみ生き残る。9月入 学が始まる。 <環境重視のデジタル社会に> ・一層のイノベーションが起こり、環境問題、課題の解決を握る新しいスター トアップ企業が生まれる。これが生まれないと日本国は間違いなく生き残れな い。これからの社会は環境問題が最優先の課題になる。石化燃料をベースにし たビジネスは次第に後ろに追いやられる。化成品製造、自動車、石油化学製品 を取り扱うビジネスは間違いなく窮地に追い込まれる。ガソリン車から電気自 動車への転換がいっそう進むだろう。生分解性のプラスチックが普及する。 少々コストが高くても後始末の費用負担を考えると生分解性樹脂のほうが、 トータルのコストが安い。石炭火力発電などは、当然目の敵になるはずだ。 ・多くのCO2を発生さす、まき散らすビジネスモデルは環境という観点から淘 汰される。レジ袋が有料化になるように、費用がかかると分かった途端に消費 者は行動変容する。10%の人が行動変容し、世の中が変わったと意識した途 端、一気に変化は襲い掛かり、古い文化は打ち壊され新しい技術がデファクト スタンダードになる。こうなってから慌てていたのでは遅い。自社のビジネス が環境問題に、少しでもアゲインストなら早急にビジネスモデルの転換を研究 しておかないといけない。AIやIoTを駆使して解決できる問題ではない。ロ ボットに置き換わる問題でもない。要するに経営者の考え方を変えることがで きるか。 ・この10年で団塊の世代の経営者から、40歳代の昭和の終わり生まれの若手経 営者に多くの中小企業が承継されるはずだ。そうなると、一気にデジタル社会 に突入し、ビジネスのスタイルが大きく変化する。都心でのオフィスが減り、 在宅テレワークが普及し、ターミナルからMaaSの案内に従って最短時間最小コ ストでの移動が提示され、その通りにアクセスが可能になる。タクシーもバス もJRも私鉄も地下鉄も、現行の運航とは異なるシステムでコントロールされ る。トヨタが静岡県で都市をまるごと実験台にしてテストタウンをマネジメン トする。コロナ後の世界は、従来の慣習が一変する可能性を秘めている。