**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第858回配信分2020年10月05日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その30 コロナ後世界と社会の課題 〜地球環境の動きがビジネスに与える影響は大きい〜 **************************************************** <はじめに> ・今週からコロナ後の世界の大きな課題をいくつか考えてみることにする。ま ず、今週は地球環境問題。特に最近衝撃的だったのは、大規模な森林火災が続 発したことだ。夏場に山火事がこんなに頻繁に起こることなど、少しぴんとこ なかった。日本ではあまりこの大規模な森林火災は話題にならないが、特にア メリカや南米では大きな社会問題になっている。ご存じのように、アメリカの カリフォルニアでは今年夏の大規模な森林火災で多くの面積が消失し、家を 失った人も多く、死者も相当数に上った。消防士の数が足りなくなり、刑務所 に服役中の一部の良好な囚人が訓練を受け、臨時の消防士で駆り出されたとい う。 ・11月の大統領選挙にも大きな影響を与えるこの問題の根源には、地球環境問 題がある。毎年徐々に地球温暖化が進み、夏に落雷が多数発生し、その結果森 林火災が増えているという。つまり、大規模森林火災は地球温暖化が原因であ り、地球温暖化の原因は炭酸ガスを発生さすことが最大の原因なのだ。となる と、つまるところ炭酸ガス=二酸化炭素を発生ささない、させない社会構造に 変えることが重要であり、まず真っ先にやり玉に挙がるのは石油でありクリー ンエネルギーへの転換を加速することになる。この「脱石油」という世界的な 傾向に、自社のビジネスがどのように影響を受けるだろうかと、真剣に考えて おかないといけない。待ったなしの動きになるだろう。 ・マイクロプラスチック対策もこの流れだ。レジ袋の有料化も同じトレンド だ。石油化学製品を少しでも減らすことが地球温暖化の防止になる。太陽光発 電の普及、風力発電所の増加、地熱発電や波動発電も同じ。つまり、電気を作 るのに石油や石炭を使わない方式に切り替える動きは、今後一層加速するだろ う。電気自動車、燃料電池車の普及も同じ流れだ。まだまだゆっくりしている ようだが、こういうトレンドはある時点から一気に加速する。アメリカの某地 域では今後ガソリン車の使用を認めないという法律ができた。まだまだ随分先 の話しだが、この動きに同調し多くの地域や国でこのような流れが加速するだ ろう。 <加速する脱プラスチック> ・脱石油への動きは短絡的に考えてはいけない。今週号の日経ビジネスの記事 にもあるように、原油の産出輸出国では完全に国自体の存立基盤が大きくゆら ぐことになる。特に中東のアラブ諸国への影響は甚大だ。収入の大多数を原油 の輸出に依存している国では、国自体の存立の危機に陥る。ただでさえ、中東 地域は政情不安定地域だが、一層この政情不安定が加速し、多くの国で民主化 が一層進み、政情が流動化する可能性がある。そうなると、わが日本国にどう いう影響が出るか。1970年代のオイルショックのようなことにはならないが、 それでも原油価格がアップダウンすると、まだまだ影響は大きい。為替への影 響もある。 ・逆にクリーンエネルギーが普及するとなると、その技術的な背景には多くの レアメタルの使用が欠かせない。その大半は中国で産出されて輸出されてい る。現在の米中摩擦が一層深刻化すると、今度は半導体分野以外にもこのレア メタルの輸出制限が始まる可能性がある。そうなると、さらに話しは進んで脱 レアメタルの技術開発が欠かせない。時間はかかるだろうが、この脱レアメタ ルを研究開発する大学や企業の付加価値が圧倒的に上がるだろう。どの化学 メーカーが先鞭をつけるか。そこに投資する企業はどこか。中国に覇権を握ら れるのを嫌う国は依然として多いから、この動きは無視できない。 ・脱プラスチックの動きは、もっと加速するだろう。次号のオフィスレターで もご紹介するが、知らないところで多くの脱プラスチックの研究開発が行われ ている。もちろん日本以外でも全世界的な動きだが、日本の大学、研究機関、 メーカーも先行している企業がある。また利用される原料がケイ素など日本に 多くある天然資源だと、さらに有利なポジションになる。まだまだコストが高 く、多くの場所での利用は制限されているが、こういう動きも普及の割合が10 %以上になると一気に変曲点に到達する可能性があり、爆発的に普及する場合 がある。特に、し好品ではなく地球環境対策という大義名分がある製品なの で、動きが止められない。 <自動車メーカーの淘汰が始まる> ・自動車を中心とする「移動体」での石油使用の割合は加速度的に減っていく だろう。一気に電気自動車が普及するとは思えないが、自動運転車の研究開発 と相まってハイブリッドとも同調しながら電気自動車の割合が50%を超えるの も、そう遠くないのではないだろうか。ただし、それまでにもっと多くの省エ ネ技術の開発が行われるだろう。アイドリングストップも、当初は大きな影響 はないと思っていたが意外と早く普及した。車の生産台数は今後どんどん減少 するだろう。トヨタ自動車の危機感は半端ではなく、今回流れた日産とホンダ の合併も早晩実現するだろう。日本には自動車メーカーが多すぎるというのも 当たっている。 ・とにかく、今回のコロナショックで分かったことは、人が移動して行われる ビジネスの見直しがあったことだ。リモートの普及で、人の移動がなくなり、 交通ビジネスの業績が一気に悪化した。飛行機、バス、車、電車、新幹線な ど、どれをとっても大きく業績が悪化した。一部の企業では希望退職を募集す るまで追い込まれた。終電の30分繰り上げというだけで、大騒動になるのだか ら、今後輸送ビジネスに関わる企業には大きな変化が起こることを覚悟する必 要がある。唯一今回のコロナで活況を呈した移動体業界は、自転車だ。筆者も 自転車通勤しているが、この季節は快適だが、真夏、真冬は結構厳しい。雨も 大敵であり、そう簡単なことではない。 ・自転車もこの10年で大きく進化した。電動自転車もそうだが、変速機など細 かい技術的な進化、進歩は目覚ましい。ロードバイクの電動自転車まで売られ ている。これもコロナの影響もあるが、クリーンエネルギーという意味では全 くの無公害移動体なのだ。2週間ごとにこまめに掃除をし、空気を入れ、 チェーンを磨いて油をさすと、結構長く乗れるものだ。2年に一度、チューブ を替えたりチェーンを新品にしたり、ギアを点検したりというメンテナンスは 必要だが、車の車検ほどの費用はかからない。何より健康にいいし、排気ガス はまき散らさないし、駐車場代は要らない。いいことづくめで、今後この分野 はさらに伸びるだろう。 <今後伸びる分野に注目する> ・ガソリン自動車に関わっている産業は、今後要注意だ。石油製品を扱ってい る業種業界も、同様に要注意だ。石油製品は我々の生活の末端まで食い込んで いる。一気に脱石油にはならないが、徐々に徐々に脱石油の動きは加速する。 食品トレーも次第に他の方式に切り替わるだろう。フィルムもトレーも、新し い脱石油製品に次第に衣替えするだろう。レジ袋は石油製品のうち占める割合 は本当に僅かなのだが、有料化に踏み切った途端、使用量が激減した。影響は 軽微だが、利用者の意識を変えるには効果は十分だった。ユニクロもビニール の持ち帰り袋を廃止した。スターバックスはプラスチックのストローの使用を 中止した。影響は軽微だが、そこまでやるかという意識を植え付けるには効果 はあった。 ・原子力発電所の新設に規制がかかり、40年以上の原発の廃炉が進む。石炭火 力発電所の新設にも待ったがかかる世の中だ。電気の使用量を節減する技術や 蓄電製品の普及も進むだろう。京都にはこの分野で期待の持てるベンチャー企 業が多くある。太陽光発電のパネル、モジュールの開発もさらに加速するだろ う。これらに使用される材料分野は有望だ。パネルの素材の開発も、さらに激 化するだろう。世界的に開発競争は激しいが、京大をはじめこの分野で先を 走っている研究機関や企業は多い。その周辺では、今後大きなビジネスチャン スがあるはずだ。いま、自社がやっている分野を一度ゼロベースで点検するこ とだ。 ・今後10年間で、この脱石油の動きは一層加速する。生活への影響は軽微だろ うが、10年経つと大きな変化が生まれている。あまり時代を先取りするのは中 小企業には難しいが、他社の動向、異業種の動き、政府の発表など、意外と情 報はオープンに公開されている。興味がないか、気が付かないか、関心がない か。とかく足元しか見ていない経営者の方が多いが、会社の中で10年先のこと を考えるのは経営者しかいない。それで役員報酬をもらっているのだと思えば いい。そうしたら、毎日毎日会社の中で空気を吸っていては難しい。新しい動 き、新しい情報がありそうな場所に、どんどん出かけていかないといけない。 それが出来る時間とおカネを用意することが大事だ。