**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第869回配信分2020年12月21日発行 特別シリーズ:新型コロナウィルス感染パンデミック対策その41 コロナ後世界と社会の課題その12 〜三次感染に負けない経営体質を作る:その1事業の見直し〜 **************************************************** <はじめに> ・地元京都でも今まで比較的感染者が少なかったのが、ここにきて俄然毎日の 報道での感染者数が急増している。大阪、兵庫があのような感染者数なので、 京都が少ないのが非常に不思議だった。一説によると、感染者数を隠している のではないかといった疑心暗鬼な話しも流れたくらいだ。もちろんこれはブ ラックジョークだったが、それくらい不思議な現象だった。それが、ここにき てなるほどそうかと言うくらい、感染者数がうなぎ上りに増えてきた。土曜日 の京都新聞の朝刊にも地元の大手病院が連名で、このままでは医療崩壊を招く と大きな声で警鐘を鳴らしている。それくらい次第に医療現場の状況は逼迫し ている。医療が崩壊すると、コロナ以外の通常医療ができなくなる。救える命 も救えない。 ・企業経営も次第に厳しさを増してきた。営業時間短縮の要請が発せられ、夜 の飲食店の営業時間は21時までに制限された。この数日間、何回か少人数の会 食があったが、お店に行っても本当にお客さんが少ない。ガラガラという店も あった。店長さんと話しをしたが、例年この12月のこの時期は忘年会などでほ とんど満席に近い。それが、この閑古鳥が鳴く状況では、もうこれが続くと店 がもたない。高い家賃を払い、アルバイトに給料を払い、年末の材料の仕込み 手配も済ませたこの時期に、突然の要請は非常に厳しい。もちろん行政サイド もそのことは百も承知だが、ここで抑え込まないと感染拡大に歯止めがかから ない。本来なら経済が活性化する年末年始だが、今年は本当に暗い巣ごもりの お正月になりそうだ。 ・とうとう我が家でもニンテンドーのSWITCHを買ってしまった。カラオケマイ クも一緒だ。自宅での時間の過ごし方を考えると、少々高い投資だが、外で飲 食会食するよりはましかと思って、投資をすることにした。本来外に落ちるは ずのキャッシュが、ゲーム機を製造するメーカーに入る。おカネが循環するこ とに変わりがないが、循環の範囲が狭くなる。企業に入ると内部留保にも回る ので、小規模店舗に入った方が経済の循環という観点では好ましい。このよう なキャッシュの循環が停滞し、減ったボーナスも先行き不安だから貯金に回そ うということになりかねない。デフレは進行するし、経済成長は停滞する。当 たり前の生活を取り戻すには、相応の時間がかかるだろう。 <変わる方向を間違えない> ・自社のビジネスモデルは今後どうなるだろうか。3年先のことを考えても、 なかなか想像がつかない。つかないが、現在と同じ業態で、そのままで進行す るとは思えない。自社が見を置く市場の伸びは大きくは期待できないが、それ でも大きく縮小するとは思えない。それなら、付加価値を高めて生産性を上げ れば生き残る芽はあるだろう。同業者で後継者がいない企業はいずれ廃業する 可能性が高い。そうなるとその分の市場を幾分かでもとれる可能性があるはず だ。何も劇的に革新する必要はない。徐々に徐々に、ゆっくりではあるが確実 に生産性を上げられればいい。だから、この方向を間違えないことだ。方向を 間違えると、ティーショットの打ち直しになり、OBと同じで2打罰になる。取 り返しがつかない。 ・飲食店は相当厳しい経営が迫られるだろう。家賃負担と人件費に耐えられな い企業やお店は、早晩撤退しないといけない状況に追い込まれる可能性が高 い。店舗来店者数は50〜70%くらいと踏んでおいたほうがいい。客単価が簡単 に上げられないなら、この落ち込んだ30%を何で埋めるか。テイクアウトも、 お弁当の配達でもいいが、出合い頭の店頭販売は数字のアップダウンが大きく 経営的な安定性に欠ける。そこで、某飲食店では近隣の老人施設と提携し、月 に1回だが出前キッチンという新業態を編み出し、提供している。施設の厨房 を借りてプロの料理人が直接出かけてその場で料理を仕上げて提供する。材料 も一部は持ち込んで、その場で調理してその場で提供する。そのようなサービ スで業容を拡大している。 ・ある印刷会社はチラシやカタログの印刷部数の落ち込みを、他の事業で挽回 することに決め、広告代理店のようなトータルのプロモーションの提案を事業 の主体に位置付けた。企画が採用されたら付随的に印刷の仕事がついてくる。 そのために異業種から営業の人材を中途採用した。印刷の業務はその後覚えて くれればいいと割り切った。今までの中途採用は欠員の補充だからどうしても 以前に同じ業界にいた人を採用していた。そうなると、なかなか変わった人材 が採用できない。発想が同じだから新しいアイデアが出てこない。印刷業は衰 退産業だから、このままじっとしていたのでは淘汰の波に飲み込まれるだろ う。今回は緊急融資を受けたので、手元の資金はそれなりに潤沢にある。 <緊急融資は未来への投資に使う> ・今回の緊急融資を売上減少の穴埋めに使ってしまいたくなかった。何か新し い分野へ挑戦、進出する原資に使いたかった。先代の社長も、創業者もどうし ても祖業へのこだわりがあった。先代は5年前に亡くなり相続も終わったの で、自分の責任で自分が決めることができた。承継して10年になり、年齢も50 歳になった。コロナショックからの出口はまだ見えないが、少なくとも今回の 意思決定は間違いではないと思っている。後継者は未定だが自分が責任もって 経営しているうちに、次のレールを敷くことが大事だと、今回つくづく痛感し た。徐々に変化を起こしながら、勝負を賭けるときは一気呵成に勝負する。そ ういう経営の勘所は、やった人でないと分からない。 ・ある企業は異業種の小規模事業者を買収した。直接の投資効果は見込めない が、それでもじっとしているのは耐えられなかった。異業種なので、リスクが 高いが小規模であること、投資は会社ではなくて個人で行ったこと、異業種に 詳しい友人が来てくれたこと、など意思決定できる条件と環境が揃っていた。 このどれひとつが欠けても難しい意思決定だった。現場は一度見に行っただけ だが、現在運営している人から話しを聞いて、その場で決断できた。何か、閃 くものがありぴんと来た。この感覚が大事だと常日頃から思っていたので、こ れは縁だと決断できた。やっと経営者らしい決断ができるようになったと、こ の事業は小規模だが成功の予感がする。 ・ある企業は関連業界の事業に進出しようと、大型の補助金の採択に向けて準 備中だ。従来からこの分野に進出をうかがっていたが、なかなかチャンスがな かったので決心がつかなかった。ところが、最近訪問した得意先の社長からこ の分野の仕事があり、発注したいとの意向を聞いた。さっそく機械を調べたら 相当な金額だが、現在手持ちの資金と借入をすれば資金調達は何とかなるだろ うとの見通しはある。しかも分野が環境対策の分野であり、今後この分野は間 違いなく伸びる確信がある。成長分野へ化ける可能性が高い。他社が進出する 前に、一足先んじて出るべきだと心を決めた。そこからの動きは早かった。補 助金の申請に向けて、数名のチームを組んで休日返上で申請書の作成を続けて いる。 <付加価値を高める努力を> ・縮小する和菓子のお店でも、廃業が続いている。しかし、どの小さなお店で も名物の和菓子はあるはずだ。あまり変哲もない和菓子でも、生き残っている からには何かその店の秘訣があるはずだ。市内の某和菓子の卸売りが主体の企 業では、この地域で廃業していく小さな和菓子店の名物商品を後世に残す事業 を始めた。廃業すると決めた和菓子屋のご主人に指導を仰ぎ、小豆の処理から 餡子の作り方までノウハウを教えてもらう。そのための指導料はきちんと払 い、商品化できたあとは自社以外でも販売し普及に全力を挙げる。地域でしか 知らなかった知る人ぞ知る商品が、意外と全国区になる可能性もある。ポイン トは店売りしかできないのではなく、通販でも買えるようにすることだ。 ・製造業も従来と全く同じチャネルの会社からの受注だけで生き残るのは難し い。新しい地域の新しい市場に入るか、その市場のチャネルを持っている他社 と提携するか。とにかく、何か新しいアクションを起こすことだ。そのための 時間と資金があれば、あとは経営トップと後継者が動かないといけない。異業 種の集まりに参加するのもいい。若手の勉強会に参加するのもいい。しかし、 参加するだけでは何も起こらない。自らボールを投げたり、発信したり、冒険 をしたり、無駄な動きを敢えて承知でしたり。何回ゴルフに行っても、それは 難しい。やはり、真剣に向き合うことが大事だ。これからは、大袈裟に言えば 生きるか死ぬかのサバイバルゲームになる。生産性が低く付加価値が低いビジ ネスは生き残れない。 ・付加価値は売上から変動費、つまり外部に払っている原材料や外注費を引い たものだ。限界利益とも言う。まずは、これがどれくらいあるか。小売業、卸 売業は小さい。20〜30%くらいが限界だ。製造業は50%くらいあるはずだ。 サービス業は業種によってピンキリだ。ほぼ100%近い美容院のような業態も あれば、20%くらいしかない業種もある。まずは、自社の付加価値額、付加価 値率を正確に知ることだ。次に人数当りの付加価値額を出してみる。人数は パート社員もいるだろうから、フルタイムの社員数に換算して出してみる。そ の数字を過去10年間くらいずっと並べてみる。どういうイメージが浮かぶだろ うか。いかに自社が何もしなかったかが歴然とわかるはずだ。このコロナ ショックが踏み絵をつきつけている。ここで変われないと生き残れない。それ くらいの覚悟が必要だ。