**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第875回配信分2021年02月01日発行 コロナ後の再出発に向けて:その1 〜一皮剥けて脱皮するチャンス〜 **************************************************** <はじめに> ・最近の政府や国会のやりとりを聞いていると、これは政治に期待しても難し いなと感じ始めている。在宅勤務を2日間経験して、ときにNHKTVをつけてみ たら国会中継をやっていた。特に注意して見ていたのではないが、その質問と 答弁を聞いていると、なんと間が抜けていて現場から遠い話しをしているのか を、改めて感じて失望した。選挙のときの候補者の選挙演説を聞いていると、 なるほどと思えることが多いが、国会に行くと途端におかしくなる。議員バッ ジをつけて、給料をもらうと、こうまで人が変わるのかとびっくりする。ま た、答弁も官僚が作ったそつのない、揚げ足を取られない無難で内容のない答 弁に終始する。 ・法治国家だから国会で法案が通過しないと何もできないのはよくわかるが、 それにしてもこの非常事態にかくも能天気な議論をしているのかと思うと、い やになる。正月明けたら、すぐに国会を開いて毎日徹夜してでもいいから、何 とか早く対応策を協議相談して現場の苦境を救おうとしないのか。唖然とし て、呆れてものが言えない。もう、こんな人たちに会社や事業の将来を任せて おくことは無意味だと、改めて感じた。ならば、自衛手段として自分たちで立 ち上がるしかないかと、覚悟を決めた。誰かが、何かをしてくれるだろうとい う甘い考えは捨てたほうがよさそうだ。国会の先生方や、霞が関の官僚諸君 は、もう信用できない。 ・東京五輪も世論とかけ離れた感覚で、やれ無観客だ、やれ入場制限だと、無 理やり開催を前提の議論しか出てこない。果たして現在の状態でできるのか。 誰もがみんな懐疑的だ。最終的にどこが中止の決定をするかが、おそらくたら い回しになるだろう。日本国の政府か、東京か、IOCか、アメリカ大統領か、 WHOか、国連か。莫大な放映権のキャンセル料をどこが負担するかで水面下で 猛烈な綱引きが行われているだろう。庶民はそういう動きとは無関係に、医療 崩壊を目の当たりにして非常に不安な毎日を過ごしている。特に、商売をして いてこのコロナショックの影響をまともに受けている業種、業界の方は、気が 気ではない。オリンピックより、自分のお店、事業、会社が存続できるかの瀬 戸際だ。 <新業態に挑戦する> ・自助、共助、公助の3つのキーワードでこの難局を乗り切れるか。どうも、 公助には頼らないほうがいいようだ。もちろんコロナ関連の補助金で使えるも のは使わせてもらえばいい。成岡の知己の企業では、少額ではあったが補助金 でお店の前にデジタルサイネージの電子看板を出すことができた。先日、その お店に別件で行ったが、結構見栄えはいいしアナウンスもよく見える。当然、 コロナが収束したあとにも、このデジタルサイネージは有効だ。また、自社の ホームページをこのコロナに合わせて大幅にリニューアルした。この費用も補 助金で出してもらった。いいことづくめだが、これらの補助金でやれることは 対症療法の一環にしか過ぎない。ケガをしたから、薬を塗って絆創膏を貼って おく。しばらくして、また絆創膏を取り換える。 ・抜本的な解決にはならないが、一時凌ぎにはなる。少しくらいは効果がある だろうが、所詮抜本的な解決策にはならない。抜本的な解決策は、自分自身で 考えて、自分自身で実行して、自分自身で結果を出さないといけない。決し て、他人が手を貸してくれるものではない。もちろん、仲間が手伝ってくれる ことはある。しかし、それはあくまでも手伝いの域を出ない。根っこから抜本 的に変えるには、トップの堅い決意が必要だ。どこまでも会社を守り抜くため に、不退転の決意で臨まないといけない。途中で障害が山ほどあり、腰砕けに なるようなら、最初からやらないほうがましだ。変えるには勇気が要るが、自 分しかやれる人はいないと覚悟する。もちろん、手伝ってくれる人は多く作ら ないといけない。 ・いまの業態、ビジネスモデルは、このコロナの融資が終われば、そこからさ らに事業を続けることが難しいなら、いま思い切ってかなりの部分を変えよう としないといけない。自分だけが悩んでいるのではないから、多くの人も悩ん でいるはずだ。ならば、悩んでいる者同士で手を組むのもひとつだ。飲食店同 士は競争相手だが、違う飲食店がひとつ屋根の下で商売する業態が出てきた。 広いお店が要らなくなり、3分の1ずつをシェアして異なる飲食店がデリバ リー専門で合体したお店を構成する。お客さんからすれば、同じお店で違う ティストのサービスを提供してもらえる。毎日同じでは飽きるから、違うテイ クアウトメニューがあるほうが嬉しい。選べるから、それだけでも気持ちが楽 しくなる。 <トップがぶれない> ・知恵を出せばまだまだ改善、改革の余地はある。知恵を出すのは、費用は要 らない。また、無限に無尽蔵にある。そう考えると、このコロナショックが与 えてくれたものは大きい。事業が順調なときは、規模の拡大ばかりに目が行っ た。とにかく売上を増やす。そのために工場を拡張したり、従業員を増やした り、設備投資を行って、前を向いて走ることだけを考えていた。大きいことは いいことだった。大きくすることが事業の目的だった。ところが、このコロナ ショックで状況は一変した。とき、あたかもSDGsなどという今まで聞いたこと もない単語まで出現した。また、地球環境に優しいという、これも聞いたこと がないキーワードが世間を席巻している。先代の社長が経営していた環境は様 変わりした。 ・コロナショックは時代が確実に変わったことを、突然知らしめてくれること になった。今まで漫然と考えていたことが、急に現実に目の前に出現した。面 食らった経営者の方も多い。しかし、これを真摯に現実と受け止め、次の世代 に経営を託すなら、これから30年経営が維持できる環境を整えてやることが必 要だろう。そのための経営資源は、何を残せばいいか。答えは自ずとわかるだ ろう。今後、コロナショックが収斂し、一定程度業績が改善したとして、その 規模はピーク時点の70%だ。70%で事業が成り立つには、生産性を50%改善し ないといけない。つまり、従業員一人当たりの労働生産性、1時間もしくは1 日当たりのアウトプットを相当上げないと達成しない金額だ。そうなると、今 までのやり方ではできないだろう。 ・まず、無駄な不要な業務を止めることから始める。過去からの慣習でやって いたことのすべてを洗い出すと、意外に誰も気づかなかった不要な業務が露出 する。これを止める勇気を持つことだ。止める勇気はなかなかでないものだ が、100年に一度のパンデミックだからこそ、止めることができる業務がある はずだ。止めることで、少々の齟齬、軋轢、不備はでるはずだ。しかし、そこ で逡巡してはいけない。トップが迷うと、末端はもっと迷うことになる。時計 の振り子の理屈で、中心に近い部分の少しの振れは、中心からの距離が長くな ればなるほど、ふれ幅は大きくなる。中心がぶれると、末端でのぶれは大きく なる。末端のぶれが大きくなると、そのうちにぶれで設備に異常を来す。その うちに壊れる。 <好況よし、不況なおよし> ・どう変えるかは難しいが、まず変えることを決めることだ。某ラーメン店で はラーメンはテイクアウトに馴染まないという常識を覆した。麺を時間が少々 経過しても伸びない麺を開発した。ラーメンの汁がこぼれるのを防止する特殊 な容器をメーカーと共同開発した。トッピングの具も新しい具材を開発した。 何から何まで手探りだったが、これをやらないとお店が生き残れる可能性がな いと腹を括った瞬間から、開発のドラマは始まった。試行錯誤を繰り返し、お 店が20時に閉まるから、それ以降の時間は開発に使える。奥さんと必死になっ て何とかお客さんからOKが出るまでの品質になった。お店で仕上げてから20分 以内のデリバリーなら、お店で食べるのと同じくらいの味と質が担保できるよ うになった。 ・逆に、市内のお漬物屋さんはそれまでの販売チャネルに固執した。そのチャ ネルの売上が全社の80%を占めていた。1社依存が危ないと分かってはいた が、その甘い誘惑から脱出できないまま、現在に至っていた。そして、このコ ロナショック。80%を占めていた得意先の売上は急激に落ち込んだ。途端に、 そのお漬物屋さんの売上も急降下した。一定の数量以下になると、お漬物の味 が変わってしまう。製造には最低ロットがあり、現在の製造量では同じ味のお 漬物が製造できない。今までも、1社依存は危ないと感じてはいたが。この甘 い呪縛から脱出できないでいた。奥さんは、昔から警鐘を鳴らしていたが、社 長のご主人が甘かった。変わることに躊躇があった。 ・脱皮ができたラーメン屋と、大口の得意先に安住していたお漬物屋さん。規 模は異なるが、このような事例は枚挙にいとまない。どこにでも、似たような 事例はごろごろ転がっている。他人の例は見過ごすことが多い。そんなことは 自分の事業には起こらないと、自分で決めている。苦しいことは見たくない。 いや、見ようとしない。しかし、目前で起こっていることは紛れもない事実 だ。ここで脱皮して一皮剥けないと、未来永劫に変わることはないだろう。コ ロナはいい気づきを与えてくれた。松下幸之助さんの言葉に、「好況よし、不 況なおよし」という名言がある。この意味を今こそかみしめるべきだ。変わる なら、いまがチャンスだ。経営者の覚悟ひとつだ。