**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第878回配信分2021年02月22日発行 ワクチン後の世界は動き出す 〜自社はこの環境でどこへ行くのか〜 **************************************************** <はじめに> ・ご存じコロナ対策の決定的な決め手とされるワクチンの接種が始まった。当 初、医療従事者を中心に接種を行い、4月から65歳以上の高齢者に拡大すると いう。この一般人への接種に際し、どのような方法で行うかで、各自治体で準 備が粛々と進んでいる。毎日、この関係の報道はメディアで掲載されているの で、情報は十分伝わっているが、一言でいうとスケジュールが未定ということ だ。まだ、実際のワクチンの供給スケジュールが固まらないので、会場やス タッフの手配の段取りがつかない。どうしてこうなっているのかは、ご存じの ように国内でワクチンが生産できていないからだ。現在のコロナワクチンはベ ルギーとドイツで生産されている。それをDHLが空輸しているからだ。 ・EU域内での生産拠点から海外に持ち出すには、非常に厳しい制限がかかって いる。当然、EU諸国も早くワクチンの接種を進めたい。メーカーとの約束があ るとはいえ、EU域外に持ち出すのは、制限がかかるのは当然だろう。この課題 を解消するには、日本国内で生産する体制を整えるしかない。しかし、これが なかなか進まない。今回の海外生産のワクチンの承認も、つい先日認可が下り たところだ。認可が下りて、即翌日から接種が始まるという、どたばたもいい ところだ。これも例外扱いにして、ようやくこのスケジュールで進んだ。通常 の手続きならどれくらいの時間がかかるか分からない。日本は法治国家だか ら、手続きに慎重で時間がかかる。以前、国は薬剤やワクチンの認可で大きな トラブルを抱えた経験がある。 ・その経験がトラウマになり、認可に慎重なのはよくわかる。しかし、現状に 鑑み、例外を緊急度に応じて速やかに認める方式に改めないと、現状のスピー ドについていけない。中国などは、難しいことを言わないで、まずやってみれ ばいいというところから始まる。共産党の独裁国家だからできる業だが、これ くらいのスピード感で進めないと、今回のコロナ騒動は収束しないだろう。今 回のコロナショックは、従来の常識を覆すくらいの大トラブルだ。農耕民族で 島国育ちの我々日本人は、まだこういう非常事態に対する感覚が乏しい。多く の戦乱、大戦、経済の大混乱をあまり経験していない、リスク管理の感覚が乏 しい国民性も影響しているだろう。逆に、我慢強いといういい面もある。これ は欧米の人達がびっくりし、感嘆し、賞賛するところだ。 <日本は遅れている> ・ワクチンの供給スケジュールが確定しない、ままならない状態の中で、また ぞろ国会議員の銀座でのはしご酒の事件が明るみに出た。いつもの週刊誌での 暴露記事だが、やはり銀座の灯りを消さないという大義名分の下で、銀座クラ ブの闇営業の実態が明るみに出た。水面下で多くの人がこの時短営業を強いら れている業界のために、アングラで営業を支援しているというが、やはり現状 ではまずいだろう。ここは、我慢している、我慢を強いられている業界の関係 者の方々が多いなかで、本来襟を正さないといけない方々が、自ら掟破りをし ているのは、いかなこと許せない。本当に、苦労を強いられて、何とかお店を 存続さすために必死で奮闘している人も多い。 ・島根県の知事が、東京五輪の開催に異議を唱えた。現状では、非常に勇気の 要る発言で、果してこの発言に同調する知事がどれくらい出るかは、分からな い。地元選出の国会議員が早速いちゃもんを付けた。お叱りを受けること覚悟 での発言には、賛辞を贈りたいと思う。こういうことは、誰かが言い出さない といけない。本来、それは政治家の仕事だが、現状では誰も言い出す勇気がな い。それを、中国地方の知事が発出したというのは、立派だと思う。誰もが疑 問に思い、開催に否定的な意見は抹殺される傾向のある中で、ここまではっき りモノを言う態度は見上げたものだ。もう来月から聖火リレーが福島県からス タートする。準備が間に合わない都道府県があるはずだ。現場は悲鳴を上げて いる。 ・65歳以上の高齢者へのワクチンの接種が4月から予定されているが、ワクチ ン供給のスケジュールが明確にならないので、各市町村が医療従事者の確保な ど、日程の決定に悶絶している。会場の手配段取り、スタッフの確保、お知ら せやクーポン券の印刷など、やることはてんこ盛りに山ほどある。それを一定 期間に手際よくやらないといけない。特に、会場の確保と医療従事者の確保に は、相当神経とエネルギーを使うことになる。それもワクチンの供給スケ ジュールが決まらないと、会場の手配段取りができない。一定面積の広い会場 の確保が、まず第一。当然、小学校や中学校の場所の確保から始まり、公民館 や公共の場所の確保が欠かせない。また、接種のデータをどう管理するのか も、大きな課題だ。 <ワクチン後も厳しい業界がある> ・野党がゼロコロナ戦略なるものをぶち上げた。詳細は見ていないが、徹底的 にまずコロナウィルスを完全に撲滅してからの経済の復興を目指すというもの だ。補償の問題をどう片付けるのかが明確なら、これも大きなグランドデザイ ンになる。だましだまし、対策を小出しにして、少しずつ前に進むか、長い時 間我慢して一気に勝負に出るかの違いだ。太平洋戦争の敗戦の原因は、参謀本 部の戦略の立て間違いだ。途中で間違ったと気づいても、そこから引き返さな い。メンツを重んじて、行けるところまで行ってしまわないと、間違いだった と修正、訂正しない。ほとんどの企業はこのような傾向がある。それに反し て、若い経営者でベンチャー精神旺盛な企業は、修正することをためらわな い。 ・この間違いを素早く修正することが大事だ。周囲の利害関係者に配慮しすぎ て、本来の目標を見失い、小手先のことばかりに注力する。自分自身もそうだ が、どうしても足元の課題に目が行く。目先の片付けないといけない課題ばか りに注力して、少し先を見ない傾向がある。会社経営なら、3年後、5年後く らいの自社のありたい姿だ。この姿が見えていないと、船で言えば羅針盤がな いのと同じだ。地図のない大海原へ勝手に乗り出して、ど真ん中で立ち止まる ようなものだ。まず、どこへ行くのかを明確にしないといけない。このコロナ ショックでどの企業でも、今後の戦略に大きな転換、変更を迫られた。そこ で、素早く動いた企業と、じっと立ち止まった企業とがある。 ・ころころ方針が変わるのはあまり嬉しくないが、現状は不確実な世界なの だ。いつ、コロナが収束するのか分からない。完全に終息するには数年かか る。その間に、毎年多くのところで変異ウィルスが出現する。そして、それに 対する新しいワクチンが開発される。結局、人間とウィルスの戦いはずっと継 続する。現在の密を回避する生活様式、仕事の形がもしかしたらこのまま継続 するかもしれない。そうなると、今の生活様式がニューノーマルになると相当 マイナスの影響を受ける企業が続出するはずだ。特に、お店や企業に利用者が 出向いてサービスを受ける事業形態が厳しい。サービスの不可分性というが、 その場に行かないと付加価値のあるサービスを提供できないビジネスだ。 <次の一手を決める> ・まだ変えるには時間が少しはある。しかし、大きく回り道はできない。ボー ルを打ち出す方向を大きく間違えると、もう戻れないかもしれない。よほど周 囲をよく見て、情報を集めて、決断しないといけない。先日面談した経営トッ プの方は、現在タイでも工場を建て事業を行っている。20年くらい前にこぞっ て多くの企業が中国に進出した際に、敢えてタイを選んで進出した。当時の情 報では、中国のビジネスには大きなリスクがあると言われていた。しかし、10 億人以上の市場は魅力だった。だが、その企業は将来リスクが大きいと判断 し、敢えて少々距離が離れているタイを選んで進出することとした。この判断 が大成功で現在タイの事業が売上の半分を占めるまでになった。 ・ある企業は得意先の分散を図った。それまでは、A社の売上が全体の60%を 占めていた。従業員は常にA社からの受注が切れ目なくあるので、安心してい た。ところが、このA社がコロナの影響をまともに受けて、発注が半分以下に 減少した。当然、全社の売上が30%以上低下し、今でも戻らない。危機感を感 じたトップは、遅まきながら主要な得意先の分散を決意した。地元京都では競 合他社との競争が激しいので、あえて中部から関東方面の企業をターゲットに して、首都圏に営業所を開設した。まだ、2名の体制だがこの時期としての先 行投資費用は馬鹿にならない。しかし、いまここで躊躇すると今後に悔いを残 すと敢えて決断した。後継者である子息を責任者に任命し、首都圏に常駐させ 新たな顧客開拓に乗り出した。 ・逆に旧態依然とした過去の営業に終始し、このコロナ禍で業績をどんどん悪 化させている企業も多い。ホテル、旅館、レストランなどが主要な得意先の企 業では、得意先が休業したり営業を縮小しているので、影響をまともに受けて 非常に厳しい業績になった。しかし、代表者が過去の成功体験しかストックに ないので、どうしたらいいか分からない。分からないまま、新しい取り組みも できないので、当然業績もあっという間の急激な売り上げの低下に見舞われて いる、しかし、何も打つ手が浮かんでこない。このままでは、ワクチンが普及 しサバイバルゲームに突入したときに、取り残される可能性が大だ。このコロ ナ禍で社会は、世間は大きく変わった。コロナの禍だと簡単に済まさず、まず 変わったことを認めて次にどうするかを決めることだ。