**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第883回配信分2021年03月29日発行 新年度に向けて一歩進む 〜勇気をもって前に出る〜 **************************************************** <はじめに> ・もうすぐ新年度がスタートする。4月から新年度、新学期、新しい経営年度 が始まる会社も多い。当社は9月末決算で10月スタートなので、あまり新年度 と言う実感はないが、現在責任者をしている京都府事業引継ぎ支援センターは 新しい年度が始まる。この4月から別の場所にあった部門を統合し、親族承継 を含めあらゆる承継案件を担当することになった。スタッフの入れ替わりもあ り、一気に人数が増え、その準備で大忙しだ。単に人数が増えるだけではな い。デスクの準備も必要で、限られた場所にうまく配置して業務が円滑に進む ようにしないといけない。意外とこの辺の準備段取りにエネルギーが要る。現 状を少し変えるだけでも、結構大変なことが多い。しかし、とにかく一歩前に 出ないといけない。 ・この新しい体制をどのようにうまく効率的に、しかもモチベーション高く維 持するかが最大の課題だ。しかし、メンバーの個性、性格、能力、経験はばら ばらだ。年齢もまちまち、経験もキャリアも不揃いだ。中小企業と同じで、社 員のほとんどが中途採用と言う組織と全く同じだ。特に、過去の職歴によって その人の考え方が全く異なる。金融機関に40年以上所属し働いてきた方と、民 間企業に40年いた方とでは、もともとの氏素性が似て非なるものだ。あるいは 公務員の経験しかない方もある。所属はいろいろ変わったが、一貫して公務員 の立場で働いて来られた方もある。途中で大きなキャリチェンジをされた方も あるし、その経験や体験は様々だ。その各自の個性、能力は一緒に仕事をしな いと分からないことが多い。 ・まず、2か月間を試行期間として5月の末までにいろいろな場面を経験し、 一緒に仕事をしてみて各自の個性と能力の把握に努めることとした。暫定的に 役割をいったん決めて、しばらくそれでやってみて、そこから多くの知見を得 て、6月から正式に守備位置と打順を決めようと思っている。しかし、その2 か月間も現場は動かないといけないので、手探り状態で、まずは一歩踏み出す 予定だ。とにかく、やってみないと分からないことが多いので、まずは考えて 動かないより、考えながら動くことだ。改むるに憚ることなかれの精神で、う まくいかないと思ったらすぐに修正する。PDCAのPの部分でずっと立ち止まっ ていても時間ばかり経過して、新しい知見は得られない。 <少し先を見る> ・中小の民間企業では、4月の新入社員を迎える会社は少ないだろう。数名い らっしゃるかもしれないが、ほとんどの企業が中途採用だと思う。成岡も、過 去に在籍していた企業ではほとんどが中途採用だった。若干名の新卒大卒社員 の入社はあったが、ほんとうに稀だった。そのせいか、成岡が転職した2月中 旬に歓迎会はなく、数名の新卒社員が入社した4月まで歓迎会はお預けだっ た。その年は2名の社員が大卒新卒で入社した。うち1名は女性だったが、そ の方は前年の面接時点の苗字と入社時点の苗字とは姓が異なっていた。つま り、面接から入社までの間に結婚されたということだった。当初、そのことが 分からなくて非常に戸惑った記憶がある。どちらの名前を呼んでいいか分から なかった。 ・その後その企業では数年経過して、ほとんどの採用を新卒採用に切り替え た。受け入れから教育の流れが決まり、組織的には安定したが急な対応には新 卒採用だけでは対応できない。中小企業ではいろいろな新しいことが急に起 こったり、突然起こったりする。その想定外の事態に対応するのは、新卒採用 だけでは難しいことが多い。また、人数が限られているので、退職者が出たと きに対応できない。女子社員の寿退職、中堅社員の介護退職、病気やケガでの 退職など、人数が多い大企業なら穴埋めも簡単だろうが、人数が限られている 中小企業では欠員の補充は中途採用に頼らざるを得ない。また、人事部などと いう洒落た部署もないから、総務の責任者などが対応する。 ・この新戦力の採用、受け入れ、教育、定着をうまくやっている企業と、これ がうまくできない企業とでは、長期戦になると戦力の差が歴然と出てくる。新 しい戦力をうまく活用できる企業は、受け入れに余裕がある。相当以前から準 備をして、会社の幹部が意思統一してその受け入れに全員が協力する。急な採 用ではなく、少々時間もコストもかけて、多くの選択肢の中から最善のチョイ スを行っている。そうではなくて、急に思い立って採用活動をすると、結果は 芳しくないことが多い。なんでもそうだが、思い付きでやると結果はうまくい かないことが多い。少し先をみて、準備を開始し、いろいろとやってみる時間 的な余裕を持つことだ。ビジネスは中長期の戦いが多いから、思い付きでは結 果が出ない。 <コロナと環境問題> ・このコロナの収束は見通しが立たない。おそらく残念だが確実に第四波の感 染拡大は避けられないだろう。この年度末に人の移動と接触の回数は確実に増 加する。転勤、異動、転職、入社、退職、入学など、この4月は落ち着かない ことが多い。先日も、他府県に移動した人の話しではJRの特急が時間によって は満席だった。指定席は不要だろうと指定を取らずに乗車したら、デッキまで 満員で京都の直前まで立ちっぱなしだった。新幹線も次第に乗車率が高くな り、最低でも50%は乗車しているという。地下鉄、バス、阪急電車などもよく 利用するが、時間帯によっては非常に密の状態だ。これで感染防止は、確かに 非常に難しいだろう。しかし移動での感染拡大より、大人数での会食、飲食の 場での感染が多いのだろう。 ・第四波の感染が確実に起こると想定し、次のステップに一歩早く踏み出さな いといけない。もう様子見をしている場合ではない。緩和、規制を繰り返すと いうサイクルが確実にやってくる。ワクチンが普及し、あまねく多くの人に免 疫ができるには相当の年数がかかる。仮に3年としたら、その3年の間に世の 中が大きく変わるだろう。コロナに関連し、その波をうまく利用し、乗り切る 戦略を立てないといけない。自社のビジネスモデルでは対応が難しいなら、今 から変えることを始めないといけない。ホテル、旅館、飲食店、タクシー、交 通機関、金融機関、商店街の店など、ありとあらゆる業種業界に影響は大きく 及ぶ。美容院、介護事業所、製造業なども対象になる。何が、どう起こるか。 ・重ねて考慮するのは、環境対策だ。今回は諸外国も含め、脱炭素社会の実現 に各国が本気で取り組むだろう。中国もアメリカも、EU諸国も今回は本気で取 り組むことを宣言した。特に多くの生産物の製造の過程で出る炭酸ガスに注目 が集まっている。製造業の生産工程が一気に変わる可能性もある。少々コスト が上がっても、温暖化ガスの発生が抑えられるほうが評価される時代になっ た。そういう意味では、この世の中が変わる時代はチャンスなのだ。コロナと 環境問題の二つの相矛盾するテーマを克服することが大きな戦略の指針にな る。人が集まって密にならないビジネスモデルを確立し、同時に環境対策とし て炭酸ガスを発生させない、させない技術開発をしてビジネスモデルを確立し ないといけない。 <まず一歩前に出る> ・もうコロナショックから1年が経過した。昨年の今頃を思い起こせば、世の 中が相当大きく変わったことが実感できる。周囲の環境を見ても、街中のお店 を見ても、商店街の様子を見ても、繁華街の飲食店を見ても、どこを見ても大 きく景色が変わったはずだ。意外と自社だけが変わっていないのかもしれな い。検温と手洗いの習慣は定着したが、仕事のやり方とお客さんの市場は、あ まり変わっていないのではないだろうか。気が付かないうちにお客さん企業の ビジネスモデルが大きく変わりつつあるかもしれない。そんな情報を前倒しで どんどん公開してくれる能天気な企業はない。黙々と、黙って、水面下で大き な変化、変革を意図している企業も多い。特に大手企業はダイナミックに大き く変わる可能性がある。 ・とにかく従来からの常識を疑うことだ。成功してきた時代のことは捨てるこ とだ。コロナウィルスのなかった時代のことを持ち出しても意味がない。温暖 化ガスが問題にならなかった時代の成功例は通用しない。人口が増えていく時 代のビジネスモデルは、もうあり得ない。そう考えると、次の後継者に託す時 代には、大きく経営環境が変わっていくはずだ。特に密を回避するビジネスモ デルを先取りして確立しておかないといけない。修学旅行の旅館では、どうし ても狭い部屋に大人数が寝泊まりする。このビジネスモデルが成り立たない。 それではどうするのか。既に動き出している企業もある。修学旅行は減りはす るけど全くなくなるのではないから、どうすればいいのかを試行錯誤で動き出 した企業もある。 ・自動車業界も大きく様変わりする。最近TVのニュースではトヨタの社長が頻 繁に登場するが、この環境対策に乗り遅れるとあっという間に取り残されると いう危機感が後押ししている。大企業が動けば、必ず中小企業に余波が及ぶ。 確実にこの動きはやってくる。しかも急に動き出す。しかし、予兆はもう見え ている。自社にマイナスの材料を見ようとしない経営者の方は多い。自分の感 性、感覚に合わないものを見ようとしない経営者の方が多い。しかし世の中の 動きは決して自社の思い通りには進行しない。絶対確実と言ってもいいだろ う。これからの経営環境の動きは、このまま放置すると確実にマイナスの影響 を及ぼすと決め込んで、まずは対応するために一歩前に出る。新年度に入るこ の時期を契機にすることだ。