**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第908回配信分2021年09月20日発行 アフターコロナには戦時のリーダーシップが必要 〜方針、行動、結果〜 **************************************************** <はじめに> ・自民党の総裁選挙が正式にスタートした。各候補者個人への評価はここでは しないが、今回は以前とは相当様相が異なるようだ。新型コロナウィルスと言 う未曽有佑の危機に瀕し、今後の日本国の行く末を担う人材を選ぶ選挙だ。残 念ながら国民の直接選挙ではなく、間接のまたまた間接の選挙なので、あまり 実感が湧かない。それでも、今回は世間の注目を大いに浴びている。現職の首 相が評判倒れで辞任した。しからば、自ら手を挙げた人が4名。そして、いろ いろな利害関係者が錯綜する派閥の親分の主導権争いが絡まって、興味津々の 展開になっている。懸念すべきは、以前のように1年ごとにトップが猫の目の ように変わり、世界から馬鹿にされた、あの時代に戻らないことだ。あれで日 本の評判は地に落ちた。 ・今回はそうはならないだろうが、それでも多くの領袖の都合で支持がコロコ ロ変わる展開になっている。業を煮やした若手議員が立ち上がり、自主投票を することを決めた。至極当然と言えば当然なのだが、永田町の理屈でいくと派 閥の親分の意向に逆らうことは許されない。誰のおかげで選挙に勝てるんだと 言わんばかりの、恩着せがましいもの言いで、派閥の締め付けを当然のごとく 行う。政治の世界ではそれが当り前なのかもしれないが、世間の常識とはおお よそかけ離れた世界だ。そういう意味では民間企業のトップの選び方には、感 心させられる場合が多い。末席の取締役が30人抜きでトップになったりするこ ともある。昨日までは部下だった人が、ある日突然上司になる。文句もあるだ ろうが、しかしそれが会社にとって最善の選択だとの判断なのだ。 ・いまの日本には戦時を大胆に切り回すリーダーシップと行動力があるリー ダーが求められている。決して平時ではないので、平時に向いたトップは要ら ない。いまは、まさに経済は疲弊し、中小企業の廃業倒産が増加し、民間消費 は停滞している。なぜだか、株価だけが高騰し、3万円台を超えた。海外投資 家からのだぶついたマネーが流入しているのだが、今後の日本株をじゃんじゃ ん買うほどの期待が持てるだろうか。ここは、大胆に打って出るリーダーシッ プが必要だ。平時なら、過去を踏襲しておけばよかったが、戦時だと経験のな い新しい局面が連続する。誰にも分からないから、どうしてもやることが及び 腰になる。こういう過去に例がないというのが、霞が関の官僚の一番苦手なと ころだ。前例踏襲ができないからだ。 <まずゴールを示す> ・では、戦時のリーダーシップとはどのようなものだろうか。まず大事なこと は、出口の絵を描いて見せることだろう。ゴールを示すと言ってもいい。今回 の新型コロナで言えば、どのようになったら、どうなるのか。逆に、このよう な状態が継続していれば、出口にははるかに到達しないと明言することだ。つ まり、何をすればいいかという判断の基準が明確かどうかだ。それは方向性を 示すことに他ならない。平時なら今まで通りやっていればいいのだろうが、戦 時は明確にどこに行くのかをはっきりと示さないといけない。それも、あまり 曖昧ではなく数字と時期を示して、みんなでそこへ頑張っていくのだと全員を 鼓舞しないといけない。ぶちあげるときに、ひ弱な態度を見せたり、自信がな い様子をしないことだ。 ・方向を示しゴールを明示する。ゴールはわかりやすくないといけない。いろ いろな解釈ができて、人によって受け止め方に大きな相違があるような物言い はいけない。簡単で、シンプルで、明確で、すっきりしていないといけない。 もって回った言い回しや、複雑な解説が必要な表現は避けるべきだ。組織には いろいろな人が所属しているから、同じような受け止め方をしてくれるとは限 らない。まして、グローバルな企業では従業員が多国籍だ。言語、宗教、風 習、習慣などがまるで異なる人たちが集まって、ひとつの企業体を構成してい る。そんな多くの人たちには、シンプルで分かりやすい表現で伝えないといけ ない。そこで、よく言われるのがスローガンだ。一言で、いいたいことが伝わ る凝縮された言葉だ。これが、なかなか思いつかない。 ・戦時のリーダーには、まず明確なゴールを示す必要がある。そのゴールな ら、このリーダーと一緒に向かって行けるという気持ちを全員が持てるように することだ。そして、ことあるごとに繰り返し、繰り返し、同じことでいいか ら熱い言葉で語りかけないといけない。言葉は少々稚拙でもいいから、気持ち に訴えるような言葉を選んで、何度も何度も繰り返し語りかける。この語りか けるという態度が大事だ。官僚的な物言い、他人事のようなそぶり、無関心の ような態度は厳にご法度だ。リーダーは常に全員と共にあるという意識を持た せるようにしないといけない。都合の悪い状況でも、逃げることなく自分自身 のことばを選んで、わかりやすく語りかける。その態度、行動を全員が見てい る。 <行動に移す> ・ゴールを分かりやすく示した次には、自ら先頭に立って態度行動で表さない といけない。言葉だけではことは動かない。自分自身が自ら行動を示し、困難 な状況でもこうすればできるという手本や見本を示す必要がある。その際に私 利私欲があってはいけない。自分のためでもない。組織に属する全員のため に、自ら行動を起こすことが大事だ。特に、戦時は普通の状態ではなく、異常 事態だ。先例があるわけでもなく、見本も手本もない時が多い。そんなとき に、リーダーがひるんでいては結果が出るわけがない。想定された状況でもな ければ、予想された状態でもない。誰もが分からない、未経験の未体験の状態 だ。不安もあるし、自信もない。経験がないことには、人間誰もが足が出な い。その足が出ない状態を打開するのはリーダーしかいない。 ・当然行動を起こすには、リスクがある。時には、致命傷を被る可能性がある かもしれない。失敗すれば会社が潰れるようなリスクは流石に取れないが、そ れ以外であればチャレンジする場面が多くなるはずだ。経験がないからパスす ることはできない。組織の全員が見ているから、うまく行くか行かないか分か らないが、最大限準備をしてチャレンジしてみる。リーダーのチャレンジする 姿、態度を見れば、例え戦時でも後に続く人は出るはずだ。最初は少人数でも 継続しているなら、必ずついてきてくれる人はいる。いるはずだと信じて、自 ら道を切り拓かないといけない。能力の問題も多少は関係するだろうが、能力 を問題と言うより、その障害に向かう心持ちだろう。意思の持ちようだ。浪花 節的だが、必ずやり遂げると強い意志を持たないといけない。 ・チャレンジするときには、リーダーは自分の得意な形に持ち込む必要があ る。不得意な方法でチャレンジしても、リーダーシップは発揮できない。自分 自身の強みを十分意識して、その強みが発揮できるフィールド、土俵で戦わな いといけない。知識で勝負できる人、運動量や汗をかく量で勝負する人、性格 の強さで勝負する人、経験値を活用して勝負する人、それぞれが強みを発揮し てその強みを最大限活かせる領域で課題にチャレンジする。戦時だから、不得 意なジャンルでは勝負しない。日常の平時の状態で、自身の強みを十分認識し ておくことが大事だ。戦時になってから慌てて自身の強みを探すというような もたもたした状態では間に合わない。戦時では、最小限の時間で最大限のパ フォーマンスを出さないといけない。日頃からの備えが必要だ。 <最後に結果を出す> ・最後に戦時のリーダーには結果を出すことが求められる。ゴールを示して、 行動を起こしても、結果が伴わないと全員がついてこない。この結果を出すこ とが難しく、いくら努力しても結果が出ないことがあるものだ。しかし、そこ で諦めてはいけない。平時は同じことをしていたらいいが、戦時は想定外の事 態だ。先例も、見本もない状態で結果を出すことは、確かに難しい。難しい が、それなりに結果には価値がある。リスクを伴うが、逆にリスクを伴わない ことには価値がない。平時なら特に問題にならないことも、戦時なら大きな問 題になる場合がある。結果が出るには、確かに運も左右するかもしれないが、 運があるということは行動を起こさないと運は巡ってこない。 ・ゴールを明確に示し、行動を起こし、結果を出す。これが戦時におけるリー ダーシップのパターンだ。この一連のプロセスを自分自身ならどうすればいい かを、常に頭の中でシュミレーションしておくことだ。平時に戦時の準備をし ておく。戦時になってから慌てて準備をしていたのでは遅い。平時は日常同じ ことを繰り返していればいい。前例と同じように、同じことを繰り返しやって いればいい。しかし、戦時には別の方法、やり方を考えないといけない。前例 がなく、手本も見本もない中でどうやって方法を考え出せばいいか。そのため には平時に自身のストックをたくさん作っておくことだ。引き出しに多くの情 報を詰めておく。戦時になるとその詰めていた引き出しから、さっと対応でき るカードを引き抜く。 ・つまり、戦時のリーダーシップは日ごろから醸成されていないといけない。 そのためには、平時に備えをしておかないといけない。戦時はいつ来るか分か らないが、いつ来てもいいように日ごろから備えを怠らない。何を、どのよう に備えるかは、業種、業態、規模、業歴などで異なる。一概に同じではないか ら、決まったパターンはない。それとリーダーの強みにもよる。知識で勝負で きる人、行動量で勝負できる人、腕力で勝負できる人、人間性で勝負できる人 など、それぞれの特徴と強みがある。日頃から自分自身の強みを認識し、一層 その強みを磨くことだ。不得意な科目を勉強するより、得手な科目を究めるこ とだ。多くのエネルギーをひとつことに継続して集中すれば、確実にレベル アップする。まず、リーダーはそれを探しておくことだ。