**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第909回配信分2021年09月27日発行 アフターコロナ対策を万全に 〜一番大事なのは資金繰り〜 **************************************************** <はじめに> ・少しずつ普通の日常が戻りつつある。マスク着用は必須だが、先日この9月 に新しくお試しで入会したスポーツクラブに行ってみた。下駄箱に靴を入れ、 ロッカーで着替えると、2階のジムフロアーでマシンランニングをしてみた。 全員真面目にマスク着用で、一定の距離を開けて、黙々と取り組んでいる。そ の後、1階のバスルームを使ってみた。広いお風呂とサウナルームがあり、そ こでも間隔を取っての表示がいたるところに貼ってあった。当初、スポーツジ ムは閉鎖されていたが、この状況を見ると従来の日常とほぼ近い。入場制限は なく、ロッカーや脱衣場では結構な「密」になっている。会話の禁止で、なに やら静寂の中で、少し雰囲気的にはそぐわない。しかし、ほぼ従来の日常と変 わらない。 ・週末には某社の会議のあと、近くの焼鳥屋に出向いた。20時までの営業時間 ではなく、入店したのがもう20時近かったが営業は続けていた。当然、アル コールの提供もしていた。週末だったので、お客さんはほぼ満席。テーブルに はアクリル板が置かれていたが、あまり効果的とは思えない。この店は初めて だったが、休業の保証金より営業継続を選んだのだろう。少しの滞在で引き揚 げたが、次々とお客さんが入ってきた。3名の会食だったが、このような風 景、光景が10月から各所でみられるのだろうか。どの程度の緩和、どの程度の 規制で縛るのかが、非常に線引きが難しいだろう。おそらく国がおおよそのガ イドラインを決めて、あとは各都道府県の首長に任せるだろう。どちらも、マ イナスのカードを出したくない。 ・日本全国各地でこのような光景が繰り広げられるだろう。ワクチン接種のパ スポートの提示をひとつの線引きのツールに使うかで議論が繰り広げられてい る。差別か、区別かの議論はさておき、当方もワクチンを接種したので、多く の制限が外れるのは正直有難い。やはり、行動に多くの制限がかかると、自然 に行動は縛られる。本当なら、こうするのだが、まあこういうご時世だから止 めておこうとなるのが普通だ。20時以降の外出もほとんどない。タクシーにも 乗ることが皆無になった。二次会に花街に行くことも、この1年半の間、全く ない。その分、ランチや夕食に出かけて、ご飯を外で食べる習慣が広まった。 テイクアウトにも慣れて、さっと電話して、ぱっと取りに行くという行動が身 に着いた。 <追加の融資は必要か> ・このように変化した消費者行動が、規制緩和でどう変わるかが注目だ。しば らく抑圧されていた消費者心理が、いかに活性化するかがポイントだ。飲食へ の消費、旅行への消費、イベントへの消費などが、果たしてもとに戻るか。大 方の予想は、来年の春から徐々に戻っても、完全にはコロナ以前には戻らな い。おおよそ70%から80%くらいまで戻れば上等だろう。インバウンドはかっ ての活況は戻らない。京都市内には、民泊と称して多くの宿泊施設が新しくで きたが、ほとんどの民泊施設は閑古鳥が鳴いている。筆者の北区の実家の近く では、民泊施設に改装した建物がさらに改装してもとに戻した例もある。ある いは、喫茶店に改造した民家が、さらに別のお店に改装した。目論見が外れ て、右往左往している。 ・ここは思案のしどころだ。このままいくか、または変化して変えるか。正解 は分からない。どちらも正しいし、どちらも違うだろう。というのは、まだア フターコロナの出口の姿が見えないからだ。おおよそこの通りだろうと分かれ ば、そちらに当然行くのだが、まだはっきりとは見えない。今回解除になって も、また年末前に宣言が発出される可能性が高い。結局、ワクチンの接種が90 %を超えて、治療薬が行きわたり、街の開業医で十分対応できるようになるま では、このパターンが続くだろう。そうなると、まだ相当の時間がかかる。ま ずは、ここ3年くらい先までの資金繰りがどうなるかの見通しを立てないとい けない。いまは緊急融資が手つかずであるかもしれないが、徐々に徐々に手元 資金が枯渇してくるだろう。 ・もし、新たな追加融資が必要なら、今から金融機関と折衝、交渉することが 大事だ。資金調達は、もう異次元の段階になっている。昨年や今年の春の様子 とは異なると認識しておいた方がいい。金融機関も、この1年半で多くの融資 を行い、中小企業の資金繰りには大きく貢献してくれた。保証協会も同じだ。 国民生活金融公庫はじめ、多くの民間金融機関は目をつぶって多額の融資に承 認の印鑑を押してくれた。本来は、出るはずのない企業にまで延命資金が行き わたっている。さて、ここからさらに追加の運転資金が出るだろうか。出して もらえるには、それなりの事業計画が要るだろうが、それがなかなか書きづら い。売上の見通しがいかんともし難いので、収入の数字が書けない。となると 事業計画書にならない。 <費用の見直しを徹底的にやる> ・来年の4月から一昨年の売上の70%で作ってみる。それでとりあえず返済が ないとして、資金ショートが起こるかどうか。補助金や補給金、助成金はない と仮定して雑収入はゼロとする。役員報酬や管理職の給与も最大限削減できる 限り減らして、人件費以外の費用も徹底的に見直して、とことん切り詰めてみ る。しかし、今後に必要な営業開発の費用などはあまり切らない。それらを 切ってしまうと、次の世代の絵を描けない。変動費の大きい企業の場合は、固 定費の僅かの削減で大きな効果を生むはずだ。試算表や決算書を穴のあくほど 眺めてみて、とにかく費用にムダがないかを徹底的に洗い出す。筆者の会社 も、このコロナでほとんど影響はないものの、いい機会なので費用を徹底的に 見直した。 ・止めたものはいくつかある。定期購読の雑誌は、ちょうど年間購読契約が切 れるので、それを機会に定期購読を止めた。複合機のメーカーから勧められて 昨年から使用するつもりで費用を払っているクラウド上のファイルサーバも、 あまり利用頻度が少ないので、10月で打ち切りにした。それ以外も、小さい費 用だが徹底的に見直して、かなり細かいが多くの費用をカットした。通常の企 業なら、売上に対する最終の利益率は、非常に良好で優秀な企業でも10%ある かないか。仮に、経費や費用を100万円節減できたら、売上に換算すると単純 に考えると、100万円の10%だから10倍の1,000万円の売上を作ったのと同じく らいの効果がある。年間100万円は、月次に直すと8万円くらいだ。それくら い、できないか。 ・材料費や製造原価はなかなか削減が難しいだろう。これらの費用を削減する と、製品の品質に直接影響が出る可能性がある。材料の品質が落ちたり、製造 工程のレベルを落とすと、ほとんどと言っていいほど、まともに製品の品質に マイナスの影響が出る。本来、製造技術部門は、このコロナに関係なく常に品 質の向上とコストの削減に取り組んでいないといけない。QCDという、Q=品 質、C=コスト、D=納期の3つは絶対に外してはならない3原則だ。これは、 何も製造業に限らない。サービス業、飲食業などでも同じだ。コスト削減だか ら、粗悪な材料に切り替えて、お客さんから大ブーイングを食らった飲食店も 多い。考えを間違ってはいけない。最も大事なのは、お客さんであって勝手な 自社の都合ではない。合理的に、納得のいく対処で生き残りを図らないといけ ない。 <役員報酬の減額を先行する> ・従業員の退職による人件費の節減は、最後の最後の手段だ。経営者には従業 員の雇用を守る義務がある。安易な退職勧奨や希望退職の募集は、厳に慎むべ きだ。まず、それを行うなら経営陣の、とりわけ役員報酬をまず大幅にカット すべきだ。カット率は上から大きく、下に行くほど小さくする。代表取締役の カット率が最も大きくないといけない。経営責任と言う重たい課題を背負って のことだから、まず経営陣の、特にトップの報酬を大幅に削減する。企業が生 き残るかどうかの瀬戸際だから、そんなきれいごとではない。役員報酬の減額 は、いつでも可能だ。来期からなどと悠長なことを言わずに、思い立ったら吉 日だから、すぐにやればいい。しばらく社会保険料がそれ以前の高額の控除が 3か月続くので、手取りとしては厳しいが。 ・それでも経営に与える影響は大きいはずだ。また、黙ってやらずに社内には きちんと説明をする。できれば、他の役員の方がいれば、その方々もカットの 対象にするべきだ。カット率は代表取締役より小さくてもいい。数名の取締役 がいる企業で、役員報酬の減額は、今日にもすぐにできる速攻の対処方法だ。 3か月続ければ社会保険料の等級を変える。会社負担の社会保険料も節減にな る。一人一人の金額は少額でも、会社全体の人件費に与える影響は大きい。前 段でも書いたが、削減できた金額の10倍以上の売上を達成したのと同じだ。そ して、きちんと記録を残し、業績が回復したら削減した面積を将来必ずカバー すると約束をする。この約束は必ず守ると代表取締役の責任で明確にしてお く。 ・コロナではないが13年前のリーマンショックのときに、京都の某ナショナル ブランドの大企業の経営者は、自らの報酬を大幅にカットし、役員、管理職、 そして社員の給与まで順番に削減を公表した。そして、必ず業績の回復に邁進 すると宣言し、いい機会だとあらゆる費用の見直しを行った。数年後に業績も V字回復し、カットした給与や報酬は金利分まで上乗せして、後日支給した。 大事なことは、宣言する、実行する、結果を出す、そして元に戻すという一連 の作業を迅速に、かつ冷静に行ったことだ。社内にカットの話しが流れても、 誰もが冷静に対応し、組織が揺れ動くことはなかった。これが本当の経営だろ う。中小企業は、逆にもっとやりやすいはずだ。改めるに憚ることなかれ。思 い立ったが吉日だ。まず、自身の足下から手を付けることだ。