**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第922回配信分2021年12月27日発行 2021年末最終号 〜来年こそコロナに負けず頑張る!〜 **************************************************** <はじめに> ・2021年のメールマガジンも、本号で最後になった。1年間コロナに翻弄され 続けてきた。この1年まとまって何かができたという実感がない。現状の変 化、対応に追われて、結果が出る、出せるものが残らなかった気がする。京都 府の事業承継・引継ぎ支援センターも6年目になり、それなりに結果は出てい るが、目先の案件に必死に対応しただけで、何かまとまったものが形になった かというと、そういう実感がない。頑張ったと言えばそうだろうが、次世代に 残せる何かができたわけではない。それでいいじゃないかという人もいるが、 なんとなく不完全燃焼で消耗しただけかもしれない。宿題や課題が多く手つか ずのままで残った。感染は一定程度落ち着いたが、またぞろ再燃する可能性も 依然としてある。完全に収束したわけではない。 ・事業承継・引継ぎ支援センターのほうは、コロナで業績が悪化し、廃業を意 識せざるを得なくなった企業の相談が多かった。相談に乗ってみると、想像以 上に中身が傷んでいて、これを案件として俎上に乗せようと思うと、相当時間 とエネルギーをかけて事業の俗にいう「磨き上げ」をしないといけない。それ も、中途半端な磨き上げではなく、相当覚悟を決めて抜本的にやらないといけ ない。表面的に簡単に済ませるようなものではない。それができて、初めて外 部に引継ぎができることになる。あるいは、親族の後継者に円滑に承継できる ようになる。仮に、この磨き上げができなかったとすれば、引継ぎ先が探せな い。売上の2倍からある有利子負債をどのようにして返済するのかが見通しが 立たない。立たないうちにご臨終になる可能性がある。 ・そうならないように、なるべく早めに手を打たないといけないのだが、これ がなかなか始動しない。相当な痛みを伴う改革にもなるので、代表者の覚悟が 要る。その覚悟を決めるには、自分自身では決断できないケースもある。自分 だけのことなら自分で済むが、ことが他の役員や幹部、会社全体に関わるなど の重要事項になると合議制では決まらない。決まらないまま時間ばかり経過 し、そのうちに金融機関がしびれを切らして督促してくる。あるいは、地域の 支援機関から大丈夫かと確認の連絡がある。融資の返済開始時期が迫って来る のに、一向に業績が上向かない。もちろん努力はしているのだが、結果が伴わ ない。なにかやればそれなりの結果は多少ついてはくるが、大幅な業績の向 上、改善は見られない。そのうちに、代表者の気力が萎えてくる。 <原材料の入手に不安> ・現在は、製造業は比較的好調だと思われる。成岡の知己の製造業、または製 造業に関連した業種業界では、比較的業績は悪くない。受注が落ちたとはい え、好調時の20%ダウンくらいで止まっている。何とか、赤字にならない範囲 で踏みとどまっている。むしろ、怖いのは原材料が手に入らないことだ。原材 料や部品関係がひっ迫していて、指定の納期に製品が仕上がらない。おわかり のように、たったひとつの電子部品が手に入らないだけで、大きな装置全体が 組み立てられない。たとえ、完成したとしても駆動部分の電子部品なら、半導 体1個でもなければ動かない。建築関係も部材の調達が厳しいようだ。電気工 事関連の部品や、水回りの製品、部品などは相当ひっ迫している。特に、隣国 中国やベトナム、タイなどが生産拠点の部品や部材の入手時期が非常に不透明 だ。 ・自動車や電気製品の生産計画が大幅に狂ってきた。工場の生産を停止する事 業所も出てきている。新聞紙上でもそのニュースが大きく報道されている。こ れ以上、中国との関係が悪化するとかなりの確率で原材料や部材の輸入に影響 が出るだろう。販売市場としての中国市場という位置づけもあるが、原材料の 日本への輸出国という立場でもある。真正面から喧嘩を売りにくい要因は、実 はここにある。いくらアメリカが外交ボイコットに追随するように圧力をかけ てきても、なかなか煮え切らない返事しかできないのだ。おそらく、足して二 で割ったような曖昧模糊とした結論にして、お茶を濁すことを考えている。玉 虫色の解決策はないかと、水面下では相当熾烈な駆け引きが繰り広げられてい るだろう。中国とは引っ越しができない隣人だから、始末に悪い。 ・ガソリンを筆頭にした原油高の影響や、為替の影響もあり、石油系の原材料 が値上がりしている。メーカーからの仕入れ価格が上昇し、末端の製品、商品 の価格になかなか転嫁できない。転嫁して値上げになると得意先から取引を切 られないかと、非常に不安になっている事業者も多い。正統な理由だが、値上 げは値上げだ。同業でやせ我慢して値上げを見送る事業者があればそちらに注 文が流れる可能性も否定できない。そうなると、強気に値上げを正々堂々と主 張できるかと言われると、非常に不安になる。原材料の値上げが末端価格に転 嫁できないとなると、そのしわ寄せは確実に中間事業者の利益を圧迫する。仕 入が1円上がって、末端価格が据え置きだと間違いなく粗利は1円減る。この 単位重量あたりの1円などと言うのは極めて大きい。 <サービス業は依然として厳しい> ・サービス業は依然として厳しい。年末の忘年会は一回かぎりだった。それ も、18時から始まり20時にはお開き。二次会もなく、地下鉄で悠々と帰ること ができる時間だ。タクシーに乗る選択肢などありえない。団体の忘年会は一回 限りだったが、2〜3名の飲み会は数回あったが、それでも以前に比較すると 本当に夜の街で飲む機会が激減した。かと言って、その分おカネが溜まるかと いえば、そうではない。そのおカネが何に流れているのかよく分からないが、 とにかく忘年会と言うイベントが消失したことは間違いない。飲食店の関係者 には申し訳ないが、これがアフターコロナの生活スタイルに定着した。いった ん定着すると、このパターンを変えるのは難しい。ちなみに、新年会もほとん どない。さびしいと言えばさびしいが。 ・仮にこれが常態化すると飲食店、ホテル、料理屋などの業種業態には非常に 恐怖だ。しかし、世の中の流れと言うのはそういうものだ。成岡が経験したな かでは、平成の10年代くらいか、テレホンカードと言う商品が一世を風靡し た。当時、携帯電話などがなかった時代だったので、営業や出先から会社に電 話するのはほとんどが公衆電話だった。ホテル、会館、病院、駅など人が多く 通過する場所には間違いなく公衆電話という設備があった。その公衆電話を利 用するには、小銭かテレホンカードが必要だった。テレホンカードは1枚500 円か1000円。薄くて、軽くて、かさばらず、贈答品には格好の商品だった。成 岡が所属していた印刷会社でも、このテレホンカードの受注は多くあった。し かし、自社ではこの印刷はできなかった。 ・当時、この受注を一手に受けていた印刷会社があった。下京区の某社がほと んどの受注を迂回受注していた。成岡が在籍していた会社でもテレホンカード の受注は受けたが、すべてこの企業に発注していた。外注になるので、自社の 利益はほとんどないが、断ることができない得意先もある。とにかく得意先の ニーズを一手に引き受けるには、すべてのオーダーをカバーしないといけな い。従って利益が薄かろうが、何であろうが、自社で全部の受注をカバーす る。それが顧客にとって一番いい選択肢だと信じて疑うことはなかった。日本 ではこのような受注構造の業界は多い。建設業界もそうだ。元請けの企業が受 注して、そこからレベル1の下請け企業に発注がかかる。そして、順番にレベ ル2、レベル3というようにオーダーが下に降りる。 <答えのない課題はない> ・そういう構造がアフターコロナの時代に通用するとは思えない。このコロナ 後の社会ではマッチングというシステムが大きな意味、意義を持つだろう。 ニーズのある人とそれをアイドルタイムに提供できる人とのマッチングだ。タ イムスのカーシェア、駐車場のスキッパなどはその典型だ。つまり、車と言う 価値観、概念が変わってきた。車は持っていること自体がステータスだった が、いまや車は価値が乏しい遊休資産になった。所有していること自体がコス トであり、所有より使用の価値観になった。使用となると空いている資産を空 いている時間に使用するビジネスが台頭するのは必定だ。当然そうなる社会の 変化が、コロナで先のことが早く起こった。10年から20年くらい先の社会が突 然やってきた。 ・この流れは止まらない。止まらないどころか加速する。10年くらいかかって いた変化が3年くらいで起こってしまう。あっという間の変化で先端を走って いる事業でも、あっという間に陳腐化する。常に先取りして、設備投資を伴 い、かつ立派な収益事業に育てるには、相当の時間と資金が要る。これからは 経営者の覚悟が要る。覚悟を決めるには、今後の方針をはっきりしないといけ ない。年齢が高くなり、過去の成功体験が強い経営者ほど過去を捨てられな い。思い切って、ばっさりというようなことは、まずない。いつまでも過去の いい時代を懐かしみ、夢よもう一度といつも思ってしまう。実は、心の中では もうそんな時代は絶対に来ないとわかっていても、ついそう考えてしまう。頭 から否定はできないが、そのような懐古主義は早く捨てることだ。 ・年末にあたり1年を振り返ってみたが、多忙を理由に成長が止まっていると 実感している。何歳になっても、その気になれば成長するはずだ。体力的な面 や、フィジカルではさすがに後退は否めないが、メンタル面ではまだ高みを目 指せるはずだ。経営も同じだ。このコロナで大きく傷んだ業績を立て直そうと 意思がある限り、答えがない課題はないはずだ。課題があるから成長するの だ。神様は、努力する人にはいい課題を与え続ける。努力を放棄した人には課 題は降ってこない。目先の、1年先の、3年先の課題があるから努力してその ハードルを越えようとする。コロナは確かに想定外で前代未聞だった。誰もが 経験したことのない厳しい環境だった。しかし、これで企業は強くなるはず だ。乗り越えられない課題はない。答えが見つからない課題はない。そう信じ て、また来年頑張ることだ。