**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第932回配信分2022年03月07日発行 コロナにも戦争にも負けない! 〜継続するなら明確に意思を持つ〜 **************************************************** <はじめに> ・大国ロシアがなりふり構わず侵略戦争を続けている。まさかというのが本音 だが、本当にここまでやるかという狂気の沙汰としか思えない。今回のウクラ イナ侵攻でわかったことは、核兵器を持った大国において一度歯車が狂うとか くも悲惨な結末を招くということ。もうひとつは、これが我が国日本だったら どうなるだろうかということだ。ここ数週間ほど平和ボケした日本のことを厳 しく書いたが、本当に今回のウクライナ侵攻を見ていると、とても他人事とは 思えない。第二次世界大戦でも、大国はいとも簡単にそれまでの約束を反故に して侵攻してきた。北方領土を占領したソ連。東南アジアのいくつかの国を占 領した欧米諸国。沖縄を占領し、返還はしたがいまだに居座る米国。しかし、 現在の世界でこれほどまでに厳しい現実を突きつけられるとは想定外だった。 ・アメリカがこの侵攻に対して、早々と派兵をしないと宣言したことも大きく 影響しているだろう。大丈夫と踏んだロシアが一気呵成に侵攻しても、アメリ カが派兵しなければその他のNATO諸国も参戦しないだろう。事前に偵察衛星の 画像を山ほど公開し、牽制したつもりだったがそんな甘い作戦は全く通じな かった。経済制裁も当初から織り込み済みだったはずだ。国内資源でなんとか 当分は凌げるとの目算があったのだろう。最後は、アメリカと対立する中国か らの支援が期待できる。北京での冬季五輪の開会式に主賓で招かれたプーチン に、おそらく習近平は土壇場での支援を密約しただろう。困ったら内緒で言っ てきてほしい。何が足りないかを教えてくれたら、うまく横流しすると。おそ らく、北京の開会式の途中で、そう約束したに違いない。 ・しかし、あまり長引くのも好まない。当初、パラリンピックの開会式までに は決着をつけるつもりだったのが、意外と当初の計画より遅れている。このま ま長引くと、国内世論がただでは済まない。早く決着をつけて、傀儡政権を樹 立し、軍隊の常駐化を図り、完全に支配下におくまでに、あまり残された時間 はない。少し焦りの見えてきたプーチン大統領は、今後何をしでかすか分から ない。わからないので、余計に怖い。核兵器の準備指令も出ている。まさかと は思えるが、最近の動向を見ていると、あながち杞憂に終わるとも思えなく なってきた。どのように落としどころを見つけるのか。当事者同士で話し合い すると、解決に至るまで相応の時間がかかるので、第三国が仲裁に入らないと いけない。殴り合いにはレフェリーが必要だ。 <次は中国の台湾侵攻か> ・日本で考えないといけないのは、台湾問題。中国がアメリカの弱腰を見透か して、いずれ台湾へ侵攻するシナリオが俄然現実味を帯びてきた。いつのこと になるのかわからないが、そう遠くない将来、起こりうる可能性が高くなっ た。東南アジア諸国では、中国の経済的な援助が際立っている。ほとんどの国 で、インフラ基盤の構築に膨大な中国資本が投入されている。道路、橋、鉄 道、水道、電気、ガス、製造業、物流など、おおよそ国の基幹産業には中国企 業が深く、深く関わっている。中国が仮に台湾に侵攻したとして、どれくらい の東南アジア諸国が反対の立場に立つか不透明だ。ウクライナ侵攻で反ロシア 側に多くの国が回ったという図式は当てはまらない。これを見誤ると、非常に 困難な事態に陥るだろう。 ・経済への打撃は想像以上に深刻になるだろう。なにせ、輸出、輸入の双方に おいて大きな規模の貿易相手国だ。中国本土での製品や部品の製造も、極めて 多い。輸出入に支障が出れば、たちまち日本経済に深刻な影響を与えることは 必至だ。日常生活ではほとんど気にならない原材料などが、多くは中国から輸 入されていることに、そのとき初めて気が付くだろう。日本は原材料や食料が 乏しいので、海外から、特に中国から多くのものを輸入して、それを加工して 付加価値を付けてビジネスを成り立たせている。そのおおもとである原材料の 入手が困難になると、影響は非常に大きい。代替品でカバーできればいいが、 そうはいかないものも多い。どんなことになるか想像できない。想定外の事態 が起こり、非常に混乱した状態になるはずだ。 ・中国市場を相手にビジネスをしている企業は多い。自動車、家電、機械など 多くの製造業は日本の10倍以上の人口のある中国市場で商売をしている。その ことは悪いことではないが、ある企業では中国市場での売上が自社のビジネス の50%以上を占めている。そうなると、その売上や収入が極端に減るとなる と、経営上の大問題になる。おそらく、経営は成り立たない。コロナの場合 は、飲食業に休業の補助金や助成金が出たが、仮に中国が台湾に侵攻し、日本 政府が非難声明を出して当面中国とのビジネスを控えるように指示が出た場 合、どのようにするのかは非常に悩ましい。しかし、いつ、どのような形でそ れが起こるか分からない。そのための準備をしろと言われても、何をどうして いいのか分からない。 <BCP計画がイメージできるか> ・いわゆるBCP計画、つまり事業継続計画を考えるということだが、最悪の事 態を想定し、それに備える計画を考えておけと言うことだ。しかし、それに備 えろと言われても、ことが大きすぎるだけに考えようもない。売上の50%以上 を占める中国本土の売上がなくなるという事態は、想像できない。仮に、も し、それが起こるとすれば、今から代替の市場を確保しておかないといけな い。売上の50%近くの市場が簡単に作れるはずがない。中国でのビジネスは10 年以上かけて、こつこつ作り上げてきた。最初のきっかけは、もう引退した先 代の父親の時代からだ。中国人との知り合いができて、それがきっかけで先代 の社長が頻繁に中国に行くようになり、その後中国のある地域で販売を始めた ら、結構うまく行った。 ・その後も順風満帆ではなかったが、多くのトラブルや障害を乗り越えて、現 在では中国本土に一定の販売網ができ、社長を承継した自分自身も頻繁に往来 してきた。2年前に起こったコロナショックは衝撃的な出来事だったが、それ も何とか影響を最小限にとどめる努力をしてきた。万全ではなかったが、一時 的な売り上げの落ち込みはあったが、なんとか昨年の夏くらいから徐々に売上 は戻り、年末にはほぼ以前の水準に戻った。昨年夏の賞与は少し減らしたが、 年末の賞与は例年通りの支給ができた。また、この第6波で影響は出ている が、これは想定の範囲内だ。おそらく夏ごろには徐々に収束するだろうと踏ん でいる。今年の年末には以前の水準にほぼ、戻るのではなかろうか。日本市場 だけを相手に商売していたら危険だと、海外にリスクを分散した。 ・その海外に分散した最大の得意先が中国市場だった。自社が小規模事業者な ので、中国以外の海外市場、とりわけ東南アジアの市場も考えたが、そう簡単 なことではないと、最近では全く手を付けていない。宗教、言葉、習慣、物流 など、東南アジアへの進出も、そう簡単なことではない。一時期、ベトナムへ の商売を考えたが、JETROからの支援だけで現地に拠点を設けることは難し かった。特に、ベトナムは言葉の問題が大きく、英語があまり使えないのが大 きなハンディキャップとなった。やはり、現地にそれなりの人脈がないと商売 のきっかけをうまく作ることが難しい。それが、中国ではうまくいった。先代 からこつこつ作り上げてきた人脈は、一朝一夕にできるものではない。この市 場が一時的にせよ、なくなることなど想像できない。 <負けずに継続する意思を明確に> ・とにかく現実に起こっていることは事実だ。紛れもない事実であり、空想の 世界ではない。コロナにしても、ウクライナにしても、想定外のことが起こ り、それがきっかけで多くのことが変化する。その変化に自社のビジネス、業 績は翻弄され、もて遊ばれるようになり、マイナスの影響が大きく経営にのし かかる。せっかくここまで頑張ってきて、なんとか経営を軌道に乗せつつあっ たのに、どうしてこんな目に会わないといけないのか。なかば、やけくそにな りリカバーしようと思う気力も失せてくる。しかし、ここで消極的になっては いけない。確かに、売上は平均値の3割は減っている。やっても、やっても、 お客さんはなかなかついてきてくれない。仕方なく数名の従業員は輪番で休み にして、雇用調整助成金をもらっている。助成金は非常に有難いが、いつまで 続くか分からない。 ・そこにウクライナショックが襲い掛かった。まさかの戦争がヨーロッパで勃 発した。もうこの世でこんな地上戦が繰り広げられるとは、夢にも思わなかっ た。現在では、多くの一般人がスマホで動画を撮影し投稿し、あっという間に 全世界に配信される。メディアの特派員が命がけで現地からレポートを送るよ り、よほどリアルタイムでリアルな画像を見ることができる。ロシアが特殊作 戦だと強硬に嘘をついても、誤魔化しがきかない。停戦はどうなるのか、落と しどころはどこなのか、まだ一切出口は見えない。国連も総会の特別決議はし たものの、意思は表明したが、実効は伴わない。アメリカも直接派兵はしない から、経済制裁でじわじわ締め上げるしかない。これでは、相当時間がかかる だろう。戦争を止める手立てはないままだ。 ・はっきりしていることは、コロナであれ、ウクライナ戦争であれ、経営は続 けて行かないといけないということだ。負けるものかと気持ちを切り替えて、 どうやって継続するかに集中する。気持ちを切らしてはいけない。気持ちをリ セットして、過去を切り離し、未来に向かって一歩を踏み出す勇気を持つ。そ のために、出来ることはなんでもやる。可能性がありそうなことは、何でも チャレンジする。費用がかかりそうなことは、どうしても後回しになるが、費 用を捻出しないといけないものは、正当な方法での資金調達を考える。決し て、身内や知人友人からの借金はしない。金融機関に融資を頼むきちんと説明 できる資料を作る。一人でできそうになかったら、誰かに手伝ってもらう。ま ず、気持ちを切り替えて、不退転の決意をすることだ。経営者自身の気持ちが 揺れ動くと、周囲に敏感に伝染する。