**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第950回配信分2022年07月11日発行 2023年4月問題がクローズアップ 〜早く対策を講じないと間に合わない〜 **************************************************** <はじめに> ・徐々に日常が戻ってきたかと思っていたら、想定内の話しだろうか、またぞ ろ感染者が急激に増加してきた。全国的に同じ傾向なので、おそらく地元京都 市、京都府だけの現象ではない。この現象を証明するかのように、成岡の知己 の企業でも現場の課長職の方やそれ以外の従業員の方も感染したという情報が あった。また、別の方はお子さんが学校で感染し、家族なので濃厚接触者とな り、数日間の自宅待機を余儀なくされた。このような現象は多くの企業や事業 所で見られるようで、経済活動が徐々に回復しつつある中で、どうもブレーキ がかかりそうな状況だ。そのため、予定していたイベントをキャンセルした り、旅行を延期したりした人もある。昨今の感染者の状況を見ると、あまりい い状況ではない。第7波という表現も出てきた。 ・つい先日も3年ぶりに母校野球部のOB会の総会と激励会を行った。この3年 間、一堂に顔を合わす機会もなく、恒例の行事もできず、OB諸兄の連絡もなか なかできない中で、やはり実際に顔をあわせて旧交を温めるという場を持つこ とは、非常に大事なことだ。オンラインでは、やはり画面上でしかイメージが つかめない。実際に顔を合わせ、ビールをついで、歓談するのは、全く異な る。ホテルでは、アクリル板も丸いテーブルには設置されず、会話するのに支 障はなかった。演壇にはさすがにアクリル板が置かれ、周辺に対する配慮はさ れていたが、それでも以前とは異なる環境、雰囲気で、これならリアルで会合 してもほとんど支障はない。料理は、ビュッフェ形式はどうもNGのようで、各 自ごとにホテルのスタッフが運んでくる形式だった。それでも3年ぶりの会合 には満足感があった。 ・毎日のTVのニュースで報道される感染者数の推移は、確かに急増しているが 重症者の数はそれに比例して急増していない。また、病床の使用率も低位で推 移している。医療体制、保健所の体制も、それなりには正常に運営されている ようだ。確かに、以前の相当少ない状況からすると、この感染者数の急増は脅 威だが、ワクチンの接種も行き渡りつつあり、それほど心配する状況ではない のかもしれない。筆者にはもうすぐ4回目の接種の案内が来ると思われるが、 今のところやはり接種を受けるつもりだ。接種したあとの発熱、倦怠感も心配 だが、やはり感染したあとの後遺症も気になる。接種後、一日くらい安静にし ていればそう心配することもなさそうだ。時間が経過すると、ワクチンの効果 も低減するという。 <経済は徐々に回復している> ・スポーツ観戦も、音楽のイベントも、ほぼ正常な形で行われるようになりつ つある。先週の土曜日から始まった夏の高校野球の予選も、有観客で開催され る。大相撲の名古屋場所も入場者制限なしで開催される。先日、大阪の大きな ホールで開催された有名女性歌手の3年ぶりのコンサートは、満員の大盛況 だったと聞いた。入り口でフェースガードが配られたのだが、誰一人それを付 けずに立ったまま大熱唱していたという。参加した人から聞いた話だ。これを 緩んでいるといえばそうだろうが、人の気持ちと言うのはそういうものだろ う。閉じ込められていた、鬱積したイライラが一挙に爆発した感じがあり、確 かにこれは感染拡大に間接的にはつながるだろう。しかし、それ以上に経済を 回復させ、軌道に乗せることが大事だ。 ・ただし、会食しても二次会への足はなかなか向かない。今回の野球部のOB会 の総会のあとは、親しい同級生が4年ぶりに京都に来てくれたので、積もる話 も多くあり会場近くの居酒屋にて二人で一杯盃を傾けた。しかし、その二次会 で終わり。それ以上の続きはなく、そこで解散。まだ、地下鉄のある時間だ し、特にタクシーにわざわざ乗るほど酩酊していない。以前なら、二次会のあ と、さらに花街に出向くこともあったのだが、昨今はそういうことが一切な い。全体で見れば、以前の経済規模の70から80%くらいの消費に留まっている のだろう。決して100%に戻ると思わないことだ。確かに、少しずつ経済は回 復軌道に乗りつつある。それは実感としてよくわかるが、同じ水準に戻ると楽 観視しないほうがいい。 ・となると以前と同じビジネスモデルでは事業は成り立たない。消極的に考え れば、いったん事業規模の縮小を余儀なくされるので、固定費を下げてキャッ シュアウトを防がないといけない。赤字の垂れ流しに甘んじていると、どんど ん手元資金が減る。大事なことは、現在の状態がどうなっているかということ を、正確に事業者がつかんでいないということだ。損益、つまり売上と原価、 経費と利益をきちんとつかんでいるか。顧問税理士さんから出てくる試算表の タイミングも相当遅い。1か月遅れくらいで出てくるので、もう終わったこと だしあまり事業主の関心がない。損益と資金収支の関連も、あまり理解してい ない。売上が増えてきて、それに伴い利益も出ているのだが、なぜか手元のお カネが減っていく。それも、半端な金額ではないおカネが減っていく。 <2023年4月から返済が始まる> ・この状態で、来年4月から借入の返済が始まる企業が多い。2023年4月問題 というネーミングがついているが、多くの中小企業、小規模事業者で4月から 始まる返済が滞りなくできる企業はどれくらいあるのか。いろいろな機関の調 査結果があり、それが正しいかよく分からないが、とにかく相当数あることは 事実だろう。現に、今でも毎月資金収支が赤字でゼロゼロ融資の資金が流出し ている。これでは年末までどれくらい資金が減るのか想像がつかない。まし て、来年4月から返済が始まるなど、とんでもない。その時に、また開き直っ て返済開始の延長を申請すれば、金融機関は何とかしてくれるだろう。まさ か、自社をお取りつぶしにするはずがない。貸しはがしなどを強行すれば社会 問題になる。そう甘く考えている事業者は多いはずだ。 ・リーマンショックのときもそうだったが、要するに結論の先延ばしに過ぎな い。少なくとも現時点でゼロゼロ融資を受けても、毎月キャッシュアウトして 手元の運転資金が減少している企業は、何らかの有効な手を打たないともう経 営が維持できない。維持できないのだが、なぜかゼロゼロ融資の資金があるの で、意外と能天気な経営者が多い。まだ、手元は大丈夫と安心しているのか、 あまり切羽詰まった雰囲気がない。何とかなるだろうとあまり危機感を抱いて いない。このままで、来年の4月からどうやって返済するのですかと聞いて も、あまり確実な答えが返ってこない。経営上の大事な数字も、意外ときちん と掴んでいない。当方から質問しても、すぐにその数字が答えられない。我が ことと思っているのか、非常に不安になる。 ・京都市内の小売店。立地はいいが、放漫経営のつけがたたって、売上の2倍 の金融機関からの借入金がある。表のお店と裏の自宅がほぼ一体になってお り、土地、建物が保証協会の担保に入っている。金融機関からの借入金は、ほ ぼ100%保証協会の保証が付いており、金融機関からの借入とはいえ、実態は 保証協会の借入のようなものだ。この小売店の業歴は40年以上と長く、20年前 に中京区の旧店舗から現在の地に新しく店舗兼自宅を建てて移転した。この地 では20年以上商売をしているが、代表者が80歳を超えて、後継者たる次男は大 手企業の部長職にあり、事業承継は以前からできないと父親には伝えている。 長男は海外に在住し、アメリカ人の妻をもらって日本国に帰る気はない。この 個人事業者にも、2年前の4月に多額のゼロゼロ融資が行われている。 <今の状態で返済ができるか> ・当時のゼロゼロ融資を批判する気は毛頭ないが、その時点では今後の絵が描 けないとほぼ共通の認識がありながら、融資は実行された。高齢で、事業価値 が年々棄損し、改善する兆候もないまま、後継者不在で廃業もできない。そし て、返済は随分以前からほとんどできていない。この事業者が4月からゼロゼ ロ融資の返済ができる可能性は皆無に近い。では、来年の4月からどのように するのだろうか。誰が絵を描いて、誰がそれを実行するのか。旧再生支援協議 会に案件として持ち込んで、それで改善計画ができたとして、それが現実的な 回答になるのだろうか。このような困窮している事業者が多く存在するに違い ない。病気で言えば、一命はとりとめたが植物人間になり、いつ回復して退院 し、社会復帰できるか全く見通しが立たない。治療する費用も捻出できない。 ・事業を停止すれば、廃業ができないので破産という選択肢になる可能性が高 い。自宅が担保に入っているので、仮に破産となれば住むところがなくなる。 80歳を超えた老夫婦が、路頭に迷うことになるのは忍びない。長男、次男で、 次善の策を検討中だが、そこまでの借入金を肩代わりする経済的な余裕はな い。どうしようもない状況の中で、毎日は商売を営み、食い扶持は稼がないと いけない。それなりに顧客もついており、いきなり店を閉める選択肢もあり得 ない。事業主も、金融機関も、保証協会も、長男次男も、誰もが困っている。 仮に、この事業者が来年の4月に半年の返済開始期日を先延ばしできても、何 の解決策にもならない。こういう事業者が、企業が一定の割合で必ず存在する はずだ。これをどうするかが大きな問題だ。 ・一定割合の企業や事業者は、事業再構築補助金などの支援策を活用し、前向 きに事業の入れ替えを考えている。あるいは、異業種同士提携して新しい販売 チャネルを模索している。また、別の事業者は金融機関の紹介で、海外への販 路開拓に注力している。また、南区の事業者はそれまでのメインの事業がコロ ナで不振になり、その周辺の市場に活路を見出すべく、新しい事業に補助金の 採択を受けて着手した。いずれも、代表者が40歳代から50歳前後で、若い。ほ とんどが二代目、三代目の経営者で、中には直系でなくて遠縁の親戚という ケースもある。いずれにしても、じっとしていては何も変わらないし、ますま すじり貧になるだけだ。2023年4月のゼロゼロ融資の返済開始まで、あと10か 月あまり。あっという間にその日はやってくる。ぼちぼち、どうするか、腹を 括るときが来た。