**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第983回配信分2023年02月27日発行 いよいよ始まるコロナ第5類への移行 〜徐々に取り戻す日常でも悩み深い中小企業事業者〜 **************************************************** <はじめに> ・やっと新型コロナウィルスの扱いが、感染症第5類に移行することになっ た。ただ、厳密に全く第5類と同じ扱いではなく、一部は特例扱いが残ること になる。以前からこのコラムで唱えていた第5類と第2類の中間的な扱いにな るはずだ。つまり、足して2で割った3.5類のような過渡的な扱いになる。例 外的な扱いにはなるが、過渡期としては止むを得ない。そして、時間の経過と ともに、現状を分析しながら徐々に完全な第5類に移行すればいい。日本人は 几帳面で、生真面目な人が多いから、かなりものごとをきちんと決めて行わな いといけないという感覚が強い。新幹線の時刻表通りの運転、東京駅での短時 間での車内清掃など、手際よく作業をすることは得手な国民だ。しかし、今回 のように流動的な状況に臨機応変に対応することは不得手だ。 ・未経験の状況に遭遇した時に、人はほとんどと言っていいほど、過去の自分 の経験に照らして判断する。未経験、未体験のことは、是非の判断もつかない し、どのように対処すればいいか、ものごとを決める物差しがない。よって、 戸惑い、判断は迷走し、結論はぶれて、試行錯誤に陥る。いったん決めたこと を朝令暮改で変えたりするのは、はしたない、恥という気持ちが優先する。し かし、未経験で未知なものに対しては、時々刻々変化する状況に対し、臨機応 変に対応することが大事だ。リスクが100%事前にわかっていることは当然避 けるが、それ以外の与件はほとんどない。つまり、やってみないとわからない ことが多い。そこでそれぞれの性格が出て、やってみようという人と、もう少 しデータが揃うまで待とうという人に分かれる。前者が積極的で、後者が消極 的でもないが、この2パターンに分かれる。 ・科学的な根拠に基づいて集めたデータを判断する。そして、科学的な見地に より決定がなされる。これが本来のやり方だ。しかし、数字に拘泥すると、逆 に真実が見えない場合もある。タイミングを逸する場合もある。科学的にはそ うだけど、逆の決定があとになれば正しかったという場合もある。すべて、科 学的な根拠に基づけばいいというものではない。大事なことは、決定したプロ セス、経過、理由を明らかにすることだ。つまびらかにすることだ。日本で は、往々にして発言者の立場を斟酌して、事実をそのまま出さない場合があ る。隠ぺいではないが、忖度になる。特に官僚組織、大企業では、そのような 判断根拠になる場合が多い。社長案件だから止められない、前会長のお声がか りの事業だから止められない。そういうケースが多い。 <まだ続く混乱> ・今回の第5類への移行に関しては、政治的な色彩が強い。5月中旬に広島で 開催があるG7サミットより前に第5類に移行する必要がある。世界の先進国の 首脳が一堂に会する日本において、その時点でまだ多くの感染者が出て医療体 制が戦時体制で、国民全員がマスクを着用しているのは、いかなことまずい。 多くの先進国では、ほぼ以前に近い日常を取り戻しつつある。しかし、日本で は依然として多くの感染者が確認され、70歳以上の高齢者の死亡者数も多い。 検査体制や報告のシステムが変わったので、単純に過去との比較は難しいが、 実際には報告数より多くの感染者が潜在的にいると言われている。現在の数倍 の無症状、無自覚の感染者がいて、それがベースだと考えると、現在の死亡者 数は妥当だとの意見もある。 ・ワクチンの接種も、筆者は5回終わったが、3回で終わっている人が多い。 最低3回接種するとほとんどの制限はなくなる。以前の旅行の割引などは3回 の接種証明でOKだった。また、最近の研究ではワクチンの接種回数と感染との 相関関係は、逆ではないかという研究結果も報告されている。接種回数が増え るに従い、感染割合が逆に増加するという傾向があるらしい。どこまで信憑性 があるのかわからないが、ワクチンは重症化を防ぐ効果はあるが、感染を防ぐ 効果は小さいということか。確かに、周囲に感染した知人は多くいるが、ワク チンを接種した人が大半だ。また、変異株もどんどん出現するので、それに対 応するワクチンの開発は追いつかない。結局、人間とウイルスとの騙しあい、 バカ仕合で、永遠のバトルになる。 ・マスクの問題も悩ましい。屋外では外しても問題ないと以前からPRされてい るが、日本人は真面目なのか用心深いのか、ほとんどの人がマスクを着用して いる。四条烏丸で歩いている人も、ほとんどが着けている。外国人旅行者か、 一部の人が外しているくらいで、大半の人がマスクを着用している。屋内な ら、なおさらだ。混雑するお店などは、まだ入り口にマスクの着用を強制する 張り紙を掲示している。大型のショッピングセンターでも、まだ店内では着用 を促している。学校では、ぼちぼち外してもいいのではという意見が出だした が、まだ少数のようだ。せめて卒業の時点ではマスクなしでの卒業式をしたい というささやかな願望もある。気持ちとしては正しいだろう。学校で友人の顔 をまともに見ることもなく、3年間の中学、高校生活を終えるというのは、 少々可哀そうな気がする。政府の見解が出たが、果たしてどうか。 <徐々に戻る日常> ・医療機関の体制整備と、医療費の負担が課題だ。5類になったので、どこの 医療機関でもコロナの診療が受けられるかといえば、それは違う。従来から医 療機関も、発熱外来とそうでないところがあった。物理的に導線が分けられな いという理由で、発熱外来をやらなかったクリニック、診療所は多い。では、 インフルエンザと同じで、単なる発熱と思って普通の診療所に受診に行って、 待合室で熱を測ったら38度あったという患者さんと同席する可能性はある。待 合室の隣に座った知らない人が、あとでコロナだったというケースは起こり得 る。現在でも、無症状無自覚の患者が多くいるはずだから、特に気にすること はないと言っても、やはり敬遠する人はあるはずだ。高齢者施設でも同じだろ う。まだまだ正常な日常にはほど遠い。 ・現在は、まだ病院や高齢者施設では外部からの来訪者は建物の中には入れな いところがほとんどだ。家内の90歳のお母さんも、福井県のサービス付き高齢 者住宅(俗に言うサ高住)で暮らしているが、我々が訪問しても外出は可能だ が、建物内へ入ることはできない。届け物があったら受付で渡して終わり。面 会も、面談も不可だ。これが5類になったらどうなるのだろうか。大幅に緩和 して、その後クラスターが発生したなどという事態を招いたら、元も子もな い。特に高齢者の死亡する割合が高いので、その辺りは非常に機微な問題だ。 感染して亡くなった人の葬式も満足に行えなかったという恨み言はよく聞く。 病院で亡くなり、お別れも言えなくて、そのまま火葬場に直行し、骨壺で戻っ てきたというケースだ。永年連れ添った伴侶と、最後に立ち会えなかったのは 痛恨の極みだろう。 ・多くの社会的な場面で、このコロナがもたらした非日常がマイナスの影響を 与え、残していることは事実だ。それを少しずつ日常に戻す努力をしないとい けない。急に戻してもいいものと、徐々に様子を見ながら戻さざるを得ないも とがあるだろう。そこの仕分けは非常に難しい。都道府県でも異なるかもしれ ないし、全国一律というものでもない。政府が決めればいいのかという課題も 残る。こういう正解のない事態に対処するのは、日本人はどちらかというと不 得手だ。決まったことを、きちんと守り、徹底し、継続するのは慣れている。 不確実なものに、適当にうまく対処するというのは、あまり得手ではない。結 果を見てから対処の方法を考えるのではなく、やる前にいろいろと考える。な ので、決定に時間がかかり、逆にあいまいな決定になりがちだ。 <悩み深い事業者> ・当分、この5類移行の過渡期の混乱は止むを得ない。なるべく科学的な根拠 に基づいて対処するのだろうが、ときには科学的な根拠を飛ばして、政治的な 決定もあるだろう。幸いにも、日本ではこれらの議論はオープンになされてい る。どこかの近隣大国のように、ある日突然理由もなくどんでん返しの決定が なされるというような乱暴なことは滅多にない。多少の時間の余裕を考え、数 か月前に決定が公表される。医療体制の崩壊を防ぎつつ、経済活動のポテン シャルも維持しつつ、従来の日常を取り戻す。考えてみれば、以前のわが日本 国の現状は、いろいろな不都合はあるものの、それなりのレベルで回っていっ たのだと、つくづく感じることが多い。余計に、今までの日常を取り戻すこと がいかに大変かよくわかる。 ・補助金や助成金なども大盤振る舞いだった。ゼロゼロ融資という、耳慣れな い初めての造語も誕生した。10年後に振り返り、あのパンデミックのときは大 変だったねと、懐かしく語れるようになっていないといけない。この4月から 返済が始まる事業者が多いが、果たしてまともに返済ができるか。最近相談が あった事業者も、この4月からの返済が難しいので、金融機関に元金返済猶予 のお願いに一緒に行ってくれと頼まれた。支店長や担当者と話したが、総じて 新しい返済猶予制度ができて、それに乗っかれば元金返済停止の延長はできそ うだ。ただし、当然のことながら今後の見通しを明確にしないといけない。売 上、原価、経費、利益などの見通しだが、原価は高止まりし、経費は賃上げの 影響で増加になる。売上の見通しは立ちづらい。 ・エクセルで表を作ることはできるが、果たしてこれが実現可能かと言われる と、正直なところやってみないとわからないというのが本音だ。特に売上、収 入の増加の見通しが不透明だ。電気代や燃料代、原材料の価格アップを末端価 格に転嫁するのも、そう簡単なことではない。一生懸命説明して、ようやく半 分くらいの得意先には了解してもらったが、残りの半分はまだ交渉中だ。決着 の見通しも立たない。これで、4月に賃上げを世間並みにするのは難しい。し かし、ある程度の賃上げをしないと従業員の生活が厳しくなる。役員報酬も、 もうこれ以上切り詰めるのは難しい。妙案が浮かばないまま、悶々とした日が 過ぎる。コロナが蔓延したときに、収束しても3割ダウンを覚悟と思ったが、 それがいよいよ現実になった。ここからが正念場だ。